4話 そろった幼馴染みたち
ようやく5人の幼馴染みが集合です。にしてもここまでに4話かかるって、序章が終わるまでに30話くらいいく・・・のかなぁ?
前のあらすじかも書きましたけど、私の書き方ってくどいんですかね?
若干悩み中な八重桜でした。
「春くん、お疲れ様」
「なかなか大変そうだったわね」
翠が泣き出してしまったあと、より一層微妙な雰囲気となってしまった状況を、なんとか直哉が持ち前のおちゃらけさで打開し、それなりに春樹もクラスに溶け込むことができた。そして、1人が春樹に質問をすると、連鎖的にどんどん春樹に質問する人が増えていき、その応対をしていただけで春樹は疲れてしまっていた。
そして、1限開始5分前になり少しでも教科書を見るために、質問の応答を打ち切って自分の席に戻ってきた春樹を、すでに泣き止んでいた翠と麗華がねぎらった。
「まあ、翠が泣き出したときはどうなると思ったけど、今回は直哉に感謝しなきゃな」
「ちょ、ちょっと春くん、さっきのは忘れて!」
自分でも無意識のうちに泣き出してしまった失態を忘れたいのか、翠は顔を少し赤くして抗議した。
「まあ、いいじゃないか。再会早々いいものがみられたし」
「う~」
翠は少しうなったが、春樹はそれを無視して、鞄の中から日本史の教科書をとりだした。
それを見た麗華は少し不思議そうな顔をした。
「あれ?春樹、今日フランスから帰ってきたばかりなのに、もう教科書買ってあるんだ?」
「違う、違う、これは借り物だよ」
春樹の今持っている日本史の教科書は、2時間ほど前に優衣から車の中で貸してもらったものだった。
「あ、もしかして、優衣さんから?」
先ほどの生徒会室の会話を翠は思い出して、なんとなく予想をすることができた。
「あれ?よく分かったな」
さすがに、生徒会室の内容まで春樹が知っているはずもなく、驚いた様子をしている。
「私と翠は生徒会役員でね、始業前に生徒会室で会長と話していたのよ」
優衣が会長だと言うことは本人から聞いたことがあったため、春樹は『なるほど』と思った。
「てか、春樹、外国いたのに日本史なんてできるのか?」
どこからかわいてきた直哉が唐突に質問する。
「ぶっちゃけ、無理だな。一応パラパラとすべてのページに目を通したけど、日本史なんてやるのは人生初めてだ」
世界史とかぶっている範囲をのぞいて、春樹は章7歳から海外にいたため、日本史を学ぶ機会は一切なかったのだ。
「そりゃつらいかもな。1限から日本史と世界史だし」
今日のテストは1限世界史&日本史、2限地理&公民、3限国語、4限英語となっていた。
「世界史は何とかなりそうなんだけどな、日本史ばかりは何ともいえない」
「まあ、先生もさすがに分かってるだろうし大丈夫だよ」
「そうだといいんだけどな・・・」
そう春樹がつぶやいたとき、教室の前の方の扉が開き、山上という日本史担当の教師が入ってきた。それを見て、直哉は急いで自分の席に戻っていく。
こうして、春樹の桜嵐学園生活が始まったのであった。
☆☆☆
「春くん、大丈夫だった??」
2限のテストが終わると、隣の席の翠が春樹に話しかけてきた。2限と3限の間には25分の休みがあり、通称中休みと呼ばれている。ちなみに1限と2限、3限と4限、5限と6限の休み時間は10分だけで、4限と5限の間には50分の昼休みがある。
「まあ、全部埋めたし、後は返ってくるのを待つだけだな」
「このテストの結果は明後日には張り出されるわよ」
翠の前の席の麗華も話に加わってきた。
「ずいぶんと早いんだな」
「まあね、このテストも個室の割り振りに考慮されるからね」
その発言を聞いて、春樹はあることを疑問に思った。
「そういえば、個室ってどういう仕組みになってるんだ?」
個室をくれると言うことは春樹も、優衣の父親から聞いてはいたが、詳しいことは何も聞かされていなかった。
「そんなことも知らずにSランクの個室を・・・、春、1回殴っていいか?」
再びどこからかわいてきた直哉の目は少しマジだった。
そんな直哉を麗華は無視して説明を始める。
「えっと、個室って言うのは、その名の通り個人で練習する部屋のことね。一応共用の練習場所もあるんだけど、いろいろと他の人との兼ね合いが難しいのよ。だけど、個室を持っていればそんなことを気にせずのびのびと練習できるわけ。
で、その個室にはB、A、Sという3段階のランクがあって、S>A>Bという順にランクが高いの。そのランクによって個室の内装や性能などが異なるから、みんな上のランクの個室を目指すわ。
Bランクの個室は、基本的に学年の上位5パーセントに与えられるわ。で、Aランクの個室は、学校内の上位5パーセントにね。もちろんかぶる人もいるから、その人はいいランクの方の個室を手に入れて、惜しくも個室を逃した人が、そのあいた分の個室を手に入れられるわ。でも、Sランクの個室だけは、学校側が賞賛するような成果を残さないと手に入れられないのよ。まあ、生徒会長とかなら学校での貢献度も考慮されるから多少に楽になるけどね。
いったい、春樹はどんな成果を出したのよ?」
麗華の長い説明の7割ほどしか春樹は理解できなかったが、要するにSランクの個室を持っていると言うことが目立つと言うことを理解できた。
そのときだった。
「失礼します」
教室の後ろの扉を軽く挨拶しながら通り抜けて、里奈が春樹の席のところまで歩いてきた。
「春先輩、お久しぶりです。麗華さんと翠さんもお疲れ様です」
「ちょ、俺だけ何も無しかよ」
里奈に華麗にスルーをされている直哉を見て、春樹は、そのとき直哉のこの4人でいるときの立ち位置を悟った。
「久しぶりだな、里奈。しばらく見ないうちに大きくなったな」
「春先輩、それ、どこを見て言ってます?私の予想通りの場所ならばセクハラですし、身長のことを言ってるなら嫌みですよ」
再会早々、春樹は里奈にジト目でにらまれてしまったが、春樹の自業自得だった。
「いや、単なる社交辞令だから気にしないでくれ」
春樹は苦しい言い訳で逃げようとした。だが、そのとき春と利なのか岩の違和感に麗華が気づいた。
「ねえ、里奈と春樹ってもしかして、ここ数年の間に1回は会ってるの?」
「「え?」」
不意の麗華の問いに、2人の声がかぶってしまっていた。
「だって、7歳の時に別れて以来会ってないなら、春樹の『大きくなったな』っていう発言に対して『私の予想通りの場所ならばセクハラですし、身長のことを言ってるなら嫌みですよ』っていうのはおかしくない?」
「たしかにそうかも。7歳から比べたら確実に身長が伸びてるし、里奈ちゃんが少し小さいと言っても、私たちとそこまで変わらないし」
麗華の発見に翠も便乗した。そんな様子を見て、里奈は自分の失言に気づき、春樹に助けを求めるような視線を送った。
「1度、墓参りに日本に帰ってきてるときに里奈と偶然会ったんだよ。てっきり里奈は麗華たちに伝えてるんだと思ったけど・・・」
だが、残念ながら、春樹はその視線には答えずに、責任をすべて里奈に押しつけようとした。
「ちょ、ちょっと、春先輩、あなたは鬼ですか!?」
裏切られたことに気づき、里奈は少しわめいた。
「ふ~ん、そうなの。里奈、あとでゆっくりお話ししたいことがあるんだけどいいわよね?」
「私も里奈ちゃんとゆっくりお話ししたいなぁ」
しかし、麗華と翠の黒さがにじみ出ている雰囲気に、いつのまにかガクガク震えることしかできなかった。
そして、さすがに春樹も里奈をかわいそうに思い、少し助け船を出すことにした。
「そういえば、里奈、放課後に学校内を案内してもらってもいいか?」
高校進学してから2日目の人間に頼むというのも変な話ではあるが、中高で校舎の造りは同じであるために全く持って問題はない。
「言ってくれれば、私たちがするわよ?」
麗華の言葉に翠も首を縦に振っている。
「いや、さっき2人が生徒会役員だと言うことを聞いてな、たぶんこの時期は忙しいだろうから、暇そうな里奈に頼もうと思ったんだ」
麗華はその言葉を聞いて、実際、放課後に話し合いがあったことを思い出した。
「たしかに、私たちは放課後少し用事があるわね。里奈、春樹のこと頼んでもいい?」
「は、はい」
なんとか2人から黒さが抜けてようやく里奈の震えが止まっていた。
ただ、そんなに2人も甘くはなかった。
「でも、春樹の案内が終わったら、私たちとゆっくりお話ししましょうね」
先ほどの続いて、麗華は黒さがにじみ出ている笑顔を浮かべた。
中休みの終わりを告げる予鈴がなると里奈が猛スピードで自分の教室に戻っていったのは、いうまでもなかった。