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乙女が奏でる恋の協奏曲  作者: 八重桜
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1話 帰国

はじめましてのかたははじめまして、作者の八重桜と申します。

なんかあらすじが長くなってしまいましたが、要するに魔法も何もない純愛の物語となっております。


おもしろいかどうかはわかりませんが楽しんでいただけたらうれしいです。




PS 1話はキャラ紹介が多いですw。

駅の改札を抜けると、さわやかな風が吹き抜けていった。フランスから日本まで約11時間、そして空港からこの桜ヶ岡駅まで約1時間、飛行機の中で少し寝たといえども、疲れ切った体には、4月の早朝の風は少し冷たく感じられた。

しかし、その風に乗って視界で舞っている桜の花びらを見ると、故郷に帰ってきたとしみじみと実感し、すこし疲れがとれるような気持ちがした。

「駅からみればわかるって言ってたけど・・・本当にわかるくらいに大きいんだな」

独り言を漏らす春樹の視線の先には、2つの大きな建物があった。1つは国立桜嵐学園高等部の校舎、そしてもう1つは国立桜嵐学園中等部の校舎だった。国立桜嵐学園は、国が優秀な音楽家を養成するために作った学園であり、すでに何人もの有名な音楽家が輩出されている、日本では名門の学園である。ちなみに、春樹の視線の先にある2つの建物は外見的にも、内装的にも同じものであるらしい。なので、中学から高校に上がっても全く変わった気がしないとか。

春樹が駅のターミナルから坂の上にある桜嵐学園の校舎を見上げていると、突然後ろから声をかけられた。

「春樹さん、お久しぶりです」

その声につられて振り返ると、そこには待ち合わせをしていた人物である、桜小路優衣の姿があった。いつもと同じベージュ色のショートカットの髪型は、その美しい外見をさらに引き立てていた。

「お久しぶりです、優衣さん。でも3日前に会いませんでしたか?」

久しぶりと言われたので同じように返したものの、春樹にとってはあまり【久しい】という感じがしなかった。。というのも、この2人は3日前にフランスで会ったばかりである。

「私にとっては、春樹さんと1日会えないだけで、その1日はとても長い時間に感じられるのです」

(3日前に会う前は、3ヶ月くらい会ってなかったんだけど・・・)

春樹は内心そう思っていたが、女の子にそこまでいわれてしまっては春樹が何かを言い返すことはできなかった。

「それにしても、長旅お疲れ様です。お体は大丈夫ですか?」

優衣は心配そうに春樹に尋ねた。

「大丈夫ですよ、慣れっこですから」

そんな優衣の心配を吹き飛ばすかのような笑顔で春樹は答える。

「私としては、今日はお休みしてほしいのですが、春樹さんがそうおっしゃるのでしたらしょうがありませんね」

「ただでさえ1日遅れてしまっていますから、これ以上遅れるわけには行きませんし」

春樹はスケジュール上、昨日の始業式&入学式に出ることができなかった。今年度から編入するにもかかわらず、その初日を欠席してしまったため、春樹としてはもう1日休んでいる暇などなかったのだ。

「でも、編入初日がテストとは春樹さんも災難ですね・・・」

「え?」

春樹の耳に、初めて聞いた単語が聞こえてきてしまったため、思わず気の抜けた声を出してしまった。

「あれ?ご存じではないのですか?桜嵐学園の中1以外の学年は、入学式の次の日とその次の日はテストがあるんです。要するに、春休みの間にサボらずに勉強をして、去年やったことがきちんと身についているかをチェックするテストですね」

「初耳でした」

(音楽の学校という割りには普通の勉強に関しても厳しいのか・・・)

春樹は昨年度まで通っていた学校を思い出してつい苦笑してしまった。昨年度まで春樹が通っていた学校にもたしかにテストというものがあったが、そこまで厳しいものではなかった。

「まあ、春樹さんなら大丈夫だと思いますよ。今日の科目はおそらく文系科目でしょうから、英語などが中心でしょうし」

桜嵐学園の新学期早々のテストは高2までは理系、文系分けずに行われ、1日目が英語や国語、歴史などで、2日目が数学、物理、生物などだった。

「文系科目ですか・・・。英語や外国語なら大丈夫ですけど、日本史などは厳しいですね」

外国暮らしだった春樹は、日本語、英語、ドイツ語、フランス語は完璧にマスターしているため、言語系には不安はなかったが、外国暮らしゆえに、日本の歴史などほとんど学ぶ機会がなかった。

「そうです!鞄の中に日本史の教科書が入っていると思いますのでお貸ししますよ」

優衣は名案を思いついたかのようにしゃべった。その姿を見て、優衣が鞄を持っていないことに気づき、春樹はあることを思い出した。

「そういえば、こんなに駅前で立ち話をしていていいのですか?」

腕時計を見てみると時計は7時15分を指していた。春樹と優衣が出会ったのが7時ちょうどであったから、すでに15分話していることになる。

「あ・・・、春樹さんと会えたことがうれしくてすっかり忘れてました。このままではお父様に怒られてしまいます。春樹さん、こちらへどうぞ」

そういって、優衣は急いで春樹を車の元まで案内した。そもそも優衣は、春樹を優衣の父親、桜嵐学園の理事長のもとへ案内するためにきたのだが、すっかり忘れてしまっていた。


2人は待たせていた車に急いで乗り込み、桜嵐学園へと向かったのであった。




☆☆☆☆

7時50分になると駅から桜嵐学園への通学路は、たくさんの学生で覆われていた。昨日初めてこの道を歩いたもの、はたまたこの道を歩き始めて6年目になるものまで多くの学生が談笑しながら、校舎までの上り坂を上っていく。

そんな学生たちの中に、男子1人、女子3人のグループの姿があった。

「俺たちのクラスに編入生ねぇ。美少女ならいいけど・・・」

女の子3人に囲まれている、端から見たらうらやましい男子が言うべきではない言葉をはいているのは、菅山直也。桜嵐学園高等部2年A組に所属する生徒だった。

「これだから男子は・・・、別に男の子だろうが、女の子だろうがどっちでもいいわ。一番気になるのは実力よ。こんな時期に編入してくるのよ。たたでさえ普通の入学試験が難しいのに、編入試験に受かって編入してくるなんて、ものすごい人かもしれないわよ。もしかしたら私たちの力になってくれるかもしれないし」

長い赤髪を揺らしながら、葉山麗華は興奮したように言った。

「直くんは本当に欲望に忠実だよね・・・」

直也の発言に苦笑しているのは、松永翠。つやのある長い黒髪、そしてその清楚な振る舞いは、誰が見ても大和撫子を連想するだろう。

「どうせ美少女でも、直先輩になんか目もくれないと思いますけどね」

そして、身長は少し小柄なものの、大きな胸と薄い水色のポニーテールを揺らしながら、緑山里奈は平然と毒舌をはいた。

「はぁ・・・、なんで周りの女の子は俺にこんなに厳しいんだろう」

3人の反応はそれぞれ異なっていたものの、直也への厳しい言葉であったこと変わらなかった。

「それは、直先輩が変態だからです」

里奈はきっぱりと言い切った。

「俺がいつ変態チックなことしたよ?」

さすがに変態とまで言われてしまい、直也は思わず反論した。

「あら?言ってほしい?なんならここで大声で言ってあげてもいいけど」

待っていましたといわんばかりに麗華がうれしそうに発言した。その瞬間、直也の顔は見ればすぐにわかるように青くなっていき、

「すいません。俺が悪かったです」

と、折れざるを得なかった。

「変わらないな~、この空気」

翠は里奈と麗華の直也いじりを見てふとつぶやいた。小さい頃から、成長しても変わらない、この距離、この空気。この空気はとても居心地がよくて楽しかった。

(だけど、春くんがあっちに行ってなければ、こうやって一緒に登校できてたんだろうな)

とある事情で海の向こう側に行ってしまった幼なじみのことを思い、小さくため息をついた。

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