出会い
文章の改行が上手くいかなくて読みづらくてすみません。
第一章
一
西日が和宮国の城邑を淡い朱色に染めていた。
川沿いの菫が、風がなびくたびに揺れ、春の匂いを運んでいる。夕餉前なのか、あちこちで子供の笑い声や叱りつけるような女の声なども聞こえてくる。
日々の暮らしは平穏で、町は活気に満ち溢れていた。ここまで平安な国はないと人々は感じていた。
かつてここは戦乱の世であった。互いに勢力を争う和宮国・淋城国、これらの国々の、血で血を洗うような戦 は、長きに渡り人々から自由を奪っていた。人々の願いは、太平の世になることだった。
古代の国「和宮」の女王は乱世に太平の御世をもたらしたことで名君と称えられた。その女王が残したと言われる歌がある。いつしか、人々は平安が続くようにと歌を崇めるようになった。
歌は後世まで受け継がれたが、女王が籠めた歌の意味はなんだったのか今は知る者はいない。
白い雪よ かすみは 花よ
川のように ながる 傍に花よ
白い雪よ かすみは 花よ
花は 雪と寄り添い 命限り
白い雪よ かすみは 花よ
雪を見上げれば 花は咲く
春のさわやかな風が髪をなびかせ、李梗をそっと、つつみこんだ。ゆっくり眼を開けると目の前に、城邑が淡い朱色に染まっていた。ここから見ると乱世が嘘のように平安に見える。本当は、人も物も入れ替わり、失われていく。
か
城邑を眺めていると後ろから水蓮がやってきた。
「姉上様」
水連が来たので李梗は花のような笑みをした。
「ここで何をしていたのだ?」
水蓮が訊くと、李梗は城邑を眺めていたと答えた。
「そうか。でも、ここは冷えるから中へ入ろう」
水蓮の言うとおり、春とはいえ、夕方になると肌寒かった。
水蓮は十八歳、生まれながらの王族で姫君である。李梗とは腹違いの姉であった。李梗と一緒に菓子を食べようと誘いに来たのだ。
李梗は八歳。和宮国には、王子がおらず、正妃の娘である李梗は次代の王に選ばれていた。初の女王が誕生しようとしていた。愛くるしい顔が王妃に似ていると評判だった。