表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前に進むために。  作者: 薄桜
本編
4/12

ランチタイム

4話目です。

ではどうぞ。

水族館を一通り見て回ると、そろそろお腹が空いてきた。

芳彰の腕を捕まえて時計を見ると、そろそろお昼になりそうな時間だった。

「普通に時間聞けばいいだろ?」

「だって、ここに時計があるんだもん。」

しっかり口答えをして見上げると、口の割りに満更でもなさそうな顔してて、どっちなんだって思う。

「・・・そうですか。昼にするか?」

「うん、お腹空いた。」

って答えたら、すぐ傍のお店に連れて行かれた。店構えとしてはイタリアンレストラン・・・だと思う、だって緑・白・赤のトリコローレの国旗がはためいてるし。

だから、多分イタリア語で書かれてる看板は私には読めない。無理やり英語読みしてみるのも違うだろうし、ここは何て名前なんだろう?


案内された席は海が見える場所で、手書きのランチのメニューから、それぞれトマトとクリームのパスタを頼んだ。私がトマトソースで、芳彰がクリームだ。

最初に来たサラダは芳彰が取り分けてくれた。

が、この野菜の種類の配分に偏りがあるのは、気のせいではないはずだ。

パプリカは全部私の皿にある。

「パプリカも嫌いなのか?」

「だって、甘いピーマンって変じゃないか?」

「じゃぁ普通のピーマンは?」

「・・・存在しなくていい。」

そう言って目を逸らす。

・・・どっちにしろ食べないんだ。子供の言い訳みたいでまったくもって面白い。


スープとパンが置かれ、私は早速パンに手を伸ばした。

でもトーストされたそれは熱くて、驚いて引っ込めたら笑われた。

スープも熱くて、猫舌には残念ながらまだ手が出せない。

それでいじけそうな気分でいると、お皿に乗ったパンが前に置かれた。

「ありがと。」

と一言添えて、今度は用心して手に取った。

千切るとトマトが練りこまれているのか、少し赤くてハーブの良い匂いがした。


メインのパスタが来た。

私のエビと三種のチーズのトマトソースも美味しそうだけど、

キノコとベーコンのクリームソースのフェットチーネも美味しそうだったので、

一口分貰って食べたら、私の皿から3倍くらい持っていかれた。

しかもそれは一口で消えてしまった。

「あっ!」

と、思わず抗議の声を上げたら、

「もう食べた。」

とだけ返ってきた。


食後のデザートにはブルーベリーソースのかかったチーズケーキを選んでいた。

芳彰はリンゴとカスタードのタルトだったんだけど、甘過ぎたのか、パスタのお詫びなのか、そこはよく分からないけど半分くれた。

コーヒーをブラックで飲む彼に、

「じゃぁ、遠慮なくいただきます。」

と、内心笑いながら感謝し、フォークを刺した。


とても楽しかったし、美味しかった。

でも、本当の所の一番の感想は、

ランチセットでもこんなにするんだ・・・という事だった。


 *-*--*--*--*-*


「お昼どうする?」

美晴さん達はこの店に入って行ったが、僕はチョークで書かれたメニューを見て、より正確にはメニューの値段を見て躊躇した。

払えない事はないが、そうすると後々苦しい。

葵姉も微妙な表情をしているから、きっと似たような事を考えているのだろう。

他に何か無いものかと見回すと、洒落た外装の手作りのパン屋が見えた。

「あそこで何か買って、そこのベンチに座って食べようか?」

彼女は振り返って店を見て、どことなくホッとしたような顔をした。


「美晴の彼氏、美晴に関連する人物・・・・・・あー、そうだ。冬頃に見たんだ。」

木陰になったベンチで、クリームチーズの入ったパンに齧り付きながらも、未だ美晴さんの彼氏について考えていた葵姉は、やっと何かを思い出したらしい。

「冬?」

ようやく見る事ができたすっきりした表情で、彼女は言葉を続ける。

「うん、寒い中いつも立ってる妙な人がいてね、美晴が面白いもの見つけたって喜んでたんだけど・・・まさかその人と付き合ってるとは。」

「・・・どうしたらそうなるの?」

『妙な人』は付き合う対象には成り得ないだろう? 僕にはとても腑に落ちない。

さすが美晴さんだけある。考える事がさっぱり分からない。

「さあ、美晴の事だから分からないけど。でもあの時と今は別人みたいな印象よ。だからなかなか繋がらなかったのよね。」

葵姉は少し拗ねた様子で言葉を切ると、ペットボトルのミルクティーを流し込んだ。

「じゃぁどんな感じだったの?」

何がどう妙な人なのか気にはなる。確かに寒空の下で黙って突っ立っているだけでも十分に怪しいが、それには事情もあるんだろう。

しかし、それくらいではあの美晴さんが『面白い』なんて言う訳が無い。他に何かきっと理由があるはずだ。

「冬に見かけた時は、いつも仏頂面だったかな。寒いから仕方ないのかもしれないけど、美晴と違って、ずっと見ていた訳じゃないし・・・でも全然、あんな楽しそうな雰囲気じゃ無かったわね。」

・・・残念、謎は謎のままか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ