梅雨の中休み
SF作品書いてて、予定より一ヶ月遅れてしまいましたが、やーっと投稿出来ます。
本編10話、舞台裏的外伝2話の全12話となっております。
2話以降は、いつものように毎朝10時の更新です。
ではどうぞ。
梅雨の只中なのだけれど、今日は幸いにも晴れている。
だから・・・という訳ではないのだけれど、今日は聡太とデートに出かける予定で、いつもの朝のように家まで迎えに来てくれた彼と一緒に、駅まで歩いた。
久しぶりの青い空は見事に晴れて、まだ朝だというのに肌に当たる光はチリチリと痛む。日傘でもあれば良いのかなと思わないでもないけれど、荷物になるなと思って止めてしまった。
駅に着き、何となくオープンカフェで一息つこうと、グリーンのパラソルの下でアイスのカフェラテを飲みながらしていた・・・のだけれど、不意に彼は私の後方を険しい顔して凝視し始めたので、私は不思議に思って声をかけた。
「どしたの?」
「あぁ、葵姉、あれ・・・美晴さんだよね?」
「美晴?」
彼が指差す方を振り返って見ると、きれいな女の人と背の高い男の人に引きずられている女の子の姿があった。
グレーの生地に、一見目を引くけれどよく分からないゴチャゴチャした黒いプリントのTシャツに、ジーンズとエンジ色のキャンバス地のスニーカー・・・うん、確かにあれは美晴だ。さすがに長年の友は見間違えようが無い。
あの嫌々ながらの様子は、抵抗を止めた後の態度みたいで・・・一体何なんだろう?
そして、引きずられた彼女は、そのまま一件の店に連れ込まれてしまった。
「あそこって、色んなブランド品扱ってるセレクトショップよね?」
「そうらしいね、」
もちろん、一介の学生がそんな敷居の高い場所に入った事も無く、せいぜいショーウインドウに飾られている品を何となく目にするのが精一杯だ。
店から聡太に視線を戻すと、彼も私を見ていた。
・・・どうやら私達は、同じ事を考えてるらしい。
「今日はカメラ持ってきてるよ」
彼はカバンからデジカメを取り出すと、これ以上無いほど晴れやかに笑った。
・・・そうよね、今まで私達に色々やってくれたんだもの。
あの先月渡された、私達がキスしてる写真だって・・・貰って嬉しくないってわけじゃなかったけど・・・やっぱり私、ああいうのは反則だと思うのよね。
だから、少しくらい仕返ししたって文句無いわよね?
*-*--*--*--*-*
朝、玄関のチャイムが鳴った。
すぐに廊下を歩いてる音がして、母さんが出たから良いやと思っていたのだが・・・まったく良くなんか無かった。
扉が開く音と同時に、よーく知ってる声が聞こえる。
「おはようございます、弘美さん。」
はぁ!? 何で芳彰の声がするんだ? しかも、弘美さんってどういう事だ?
「芳彰くんおはよ。あら、あれ今日だったかしら?」
ねぇ、母さん・・・何で? どうして芳彰と知り合いなんだ?
気になった私は、気付かれないように、そーっとドアの傍まで移動して耳をじっとそばだてた。
「はい。美晴を借りに来ました。」
借りるって何だよ、借りるって!?
「ですって。美晴、どうせ聞いてるんでしょ? いつまでも隠れて無いで出てらっしゃい。」
そりゃ、玄関の隣の部屋なんだからもちろん聞こえてるさ。おまけに、傍まで来て聞き耳立ててたしさ・・・
行動が見透かされている事が面白く無くて、この二人がグルなのが理解できなくて、しぶしぶながらに扉を開けると、即座に母に腕を引っ張られた。
「ほらほら早く来る、はい行ってらっしゃーい。」
引きずり出されて、玄関口まで背中を押され・・・
「えっ、何? ちょっと待って、私何も準備してないよ!?」
本当によく分からないんだけど、どっかに連れ出そうとするならするで、準備くらいはさせて欲しい。かろうじてパジャマではないが、着古したTシャツに、いつものジーンズっていうのは、出かけるような格好では無い。
「いいわよ、どうせ美晴の服は可愛げが無いんだから。」
「なっ、なにそれ、私は私の着たい服選んでるよ!?」
「それが、可愛げがないのよ。」
母に自分のファッションセンスをバッサリ切られ、受けたショックが癒える間もなく・・・いや、
「後はこっちでやるから心配すんな。」
と、何でもない事のように笑う芳彰の態度に、傷に塩を塗りたくられでもしたような心地になった。
「何が心配? こっちって何? 私、何が何だかさっぱり分かんないんだけど!?」
「暴れてないで、さっさと出かけたらどう?」
だから、どうして母さんは状況の整理をさせてくれないの?
説明したくないのは何となく分かるけどさ・・・。逆の立場なら、私も絶対同じ事をする。が、それとこれとは話が別だ。
「・・・じゃぁ、持ち物くらい準備させてよ?」
「仕方ないわねぇ、待たせちゃ悪いから早くしなさいよ?」
「別に財布いらないから、携帯くらいでいいぞ。」
「そうよね、デートなんだから女の子は財布要らないわよ。」
もうこの時点で疲労困憊である。
・・・なのに、これから一日連れ回されるのかと思うと、溜息しか出て来ない。
おかしい。今日はいつものように、フラっと芳彰のとこに行ったり、写真の整理をしたりで一日を終えるはずだったのに・・・。
何で向こうから誘いに来るんだ? そもそも何で二人が知り合いで、一体何を企んでるんだ?
私は母さんに付き合ってる人がいる事・・・はバレたが、芳彰の名を出した事も無いし、会わせた事も無い。
・・・という事は、怪しいのは妹の和歌奈の線しかないが、母さんとつるんでいるとなると、下手に動くの禁物だ。逆にもっと追い込まれるような状況になりかねない・・・。
「美晴、早くなさい。芳彰くん待たせちゃ駄目でしょ。」
今、どうにか状況の整理をしようとしてるっていうのに、母さんが急き立ててくれる。
・・・今まで芳彰と楽しそうに話してたくせにっ! あーもうっ、なるようになれ!!
携帯を乱暴にポケットに押し込み、覚悟を決めて部屋を出た。
何故か笑顔の母を苦々しく思いながらスニーカーを履くと、同様に笑顔の芳彰に腕を掴まれた。
・・・そんな事しなくても、逃げやしないよ。
「ありがとうございます。じゃあ、お借りしますね。」
そんな馬鹿丁寧な挨拶をする芳彰も芳彰だが、
「じゃぁ、二人とも明日まで楽しんでらっしゃい。」
はぁ? 明日ってどういう事だ!? ねぇ夜はどうなるの???
「ちょっと母さん!?」
「はい、いってきます。」
「ねぇ芳彰!?」
母さんそれで良いの? 二人とも何て話してんの!?
「いってらっしゃい。」
えー、バタバタ?




