屋上掃討戦、その後―
意外と長くなったので、後書きにではなく次話としました。
「無事か?」
音を聞きつけた二人がやってくる。
「おーおー、金属バットが曲がってらぁ。何をやらかしたんや?お前」
「ナックルで受けただけだ」
「よくやるよ。それはいいとして、お前この後妹ちゃんに会うんだろ?」
その予定だ。帰るときもできるだけ一緒に帰るというのが俺たちのルールで、用事等で一緒に帰れない時は必ず連絡をすることになっている。俺は屋上の相当で遅くなると伝えたところ、マナミも学内に残る用事があったので、ならば一緒に帰ろうということになったのだ。
「何か不満でもあるのか?」
「不満はあれへん。せやけど、お前いっぺん自分の頭さわってみ?」
言われたとおりにしてみると、手に何かどろっとしたものを感じた。血だ、最初の一撃によるものだろう。
「とりあえず顔洗っとけ。そんな血まみれの面じゃあ妹ちゃん泣くぞ?」
というわけで洗い流してきたのだが、怪我をしたと認識してしまったからか少々痛む。気にするほどではないが。
「だいぶマシになったな。傷もそう深いものじゃなかったから何日かすりゃ治るだろ。」
「破れ学帽被ってみんか?今なら似合うと思うで」
そんなもの、一体どこにしまっていたんだ?しかも形を崩さずに…
「俺は伝説の番長かよ、そんなのいらねえって」
「そら残念やな。まぁエエわ、ほな、ワシらは帰るで」
「あぁ、ありがとな」
彼らが帰った後は屋上にある不用品や私物の始末とちょとした片付けをしたところ、掘り出し物がざくざくと出てきた。まずはソファー、多少破れているが使用には問題ない。それからダーツセット一式・麻雀の牌も雀卓もある、今度あいつらと一勝負やるか。そしてなぜかエアコンがある、しかもそんなに古い型ではない。大方暑さ対策でどっかから入手してきたが電源がなくてそのまま放置ってとこだろう、ビーチパラソルもあるし。
その最中――
「うわぁ、こんな時間にこんなところに人がいるなんてびっくりだなー」
誰だ!?さっきの奴らの残党か!?
「おや、そこにいるのは守君じゃあないか」
聞きなれない声と見慣れない容姿から声の主が何者であるかはすぐにわかった。編入生だ。
「あぁ…真人っていったか?お前」
「転校初日だけど名前くらいはちゃんと覚えておいて欲しいね、この名前結構気に入ってるんだから」
「そいつは悪かったな。で、何の用だ?」
「何の用って…僕は校内を探検してたらたまたまここにたどり着いたんだ。だからここに用は――」
「ならさっさと帰れ。ここには――」
「ここになにもなくても、君がいたならそれで十分だよ」
互いに相手の言葉をさえぎって言う。それにしても、俺がいたなら十分?ということは俺を探して校内を散策していたというのか?
「聞きたいことがあるんだ」
「なんだ?手短に頼むぞ」
「これも可愛い可愛い妹のためかい?」
――!?
「その話、誰から聞いた!?」
「新聞部の人。さっき階段近くでばったり会ってね」
律か!アイツめ…少々お仕置きが必要なようだ。
「そんなに怖い顔しないで、彼女は悪くない。君のことは有名なんだから、いつかは僕の耳に入ることになる。それかたまたま転校初日だっただけのことだよ」
確かにコイツの言うことももっともだ。俺はその言葉で平静を取り戻した。
「確かにこれは妹のためだ。だが他人に、ましてや転校してきたばっかりのやつにとやかく言われる筋合いはない。」
「僕も君のすることにあぁだこうだ言うつもりはないよ。ただどうしても聞きたいことがあるんだ、『君はどうしてここまでできるんだい?』」
『どうして』だと?愚問だ、そんな質問の答えなど決まっている。
「そりゃ可愛い妹のためだからだろうが」
「じゃあ君はその可愛い妹のためだったら命も投げ出すというのかい?」
「その通りだ。俺は皆とは鍛え方が違うから多少のことではくたばらないだろうがな」
それにお前も普通の人とはちょっと違うようだが、と続けようとしたがやめた。時期外れの転校生なんだから相応の事情があるのだろう、うかつに地雷原を歩くようなことは得策ではない。
「彼女が悪に堕ちるとしてもそれに従順なのかい?」
「止めはするだろうが、最終的にはそうだろうな。だがそれはないと思うぜ」
俺の勘が正しければマナミは悪ではないものの、世間的には良しとされないことを経験しているからな。そういえば、マナミが義妹になるちょっと前から正義さんと会ってないけど元気にしてるかな?
「それじゃ……」
「…!、質問受けは終わりだ。俺は帰る」
まだ聞きたいことはあったようだが途中で打ち切った。校門へと歩くマナミの姿が見えたからだ。
「じゃあな」
階段を駆け下りてマナミの元へ急いだ。
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――しばらくの後
「・・・・もしもし。僕です。黒武者守と接触しました。・・・・・確かに『龍』さんの仰るだけのことはありました。ただ、彼が僕たちの脅威になるかどうかは、やっぱり直接拳を交えてみないとわかりかねます。・・・・・・わかってますよ。大丈夫です、まだバレてません、僕もプロですからね。・・・・・・はい。それでは、失礼します」
時を同じくして――
校門に着くと、マナミが辺りを見回しながら落ち着かない様子で待っていた。
「待ったか?」
「全然!マナミも今来たところ」
「それじゃ、帰るとするか」
「うん!」
手をつなぎ、接近した状態で帰る。傍からみれば恋人同士に見えるだろうな。行きは寄り道したが、帰りはどこにも寄り道せず家に直帰する。道中、出血がバレないように定期的にタオルで汗を拭くフリをして血を拭う。今日持ってきてたタオルの色が濃い眼で助かった。
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【お知らせ】
・主要キャラがもう少し出てきたら一度キャラ紹介のようなものをやりたいと思っています。
・8・9月はPC環境のない実家に帰るのでおそらく更新できないです。