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義妹記  作者: 白鳳
義妹編
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南高夏の陣④~悲願の対決!?守VS綾~




――――ブルブルッ!!


「っ!?」


「何なの…この息の詰まるような感じは」


「優希ちゃん…、急いで委員の子達を自教室の警護に当たらせて」


「え…?は、はい。わかりました」


優希ちゃんが指示を伝えに教室を出ていった。この状況下でも機敏に動ける優希ちゃんはとても心強い。


みんなもこの圧迫感を感じていて、意識を失って倒れた人もいた。でもその方が楽なのかもしれない。


――パリン!ガシャン!!


「おおっ!?」


何の前触れもなく突然窓ガラスが割れ、破片が床に散乱する。


危ないのでみんなは近寄らないように指示を出したが、その後もガラスは次々に割れ、最終的に校舎側の窓ガラスはすべて割れてしまった。


「はいどいてどいてー、掃除班が通りますよ」


陸君はこの圧迫感の中でも平気らしく、率先してガラス片を集めて新聞紙にくるんでいた。


「陸君は強いんだね」


「強いっていうか、慣れてるだけだよ。クロムやケイハギと長いからね」


「そっか。この感じって、前にもあったよね…?」


陸君が覚えていると期待し、問いかけてみる。


「あぁー…あったあった。あの頃はまだクロムも現役だったね」


私の期待通り覚えてくれていたおかげで可能性は事実へと変わる。この空気を醸し出しているのはマモル君だ、と。


「でもあの頃よりもずっと強大になってない?」


「クロムも成長したってことだよ」












「あれが守君の本気なのかい?」


「えぇ、おそらくは」


僕も守君と何度か一緒に仕事をしたことがあるけど、あんな姿は一度も見たことがない。


(あんなのに白兵戦を仕掛けても勝てる気がしない。銃が専門でよかったよ…。)


「心配せずともその時は僕が相手して時間を稼ぎますよ」


「なんともうれしい言葉だね。読心術は感心しないけど」


照準を守君に合わせて動きを追い、いつでも引き金が引ける状態を維持する。


「殺すんですか?」


「その方がいいんだろうけど、損害が大きいから眠ってもらうよ」


「効きますかね」


「ゾウでもすぐにぶっ倒れる位強力な麻酔なんだ。効くよ」










軟弱物は泡を吹いて倒れる。根性なしはその場に立ち尽くす。愚か者は俺に襲いかかる。


愚か者たちの拳や蹴りが全身の至る所に命中するが、痛みもなければ触れた感じもしない。


俺は生意気に伸ばされた手足をへし折り、あるいは握り潰し、遊び飽きた玩具と同様に投げ捨てる。


鉄棒の一撃も、角材の薙ぎ払いも、バットのフルスイングも受け付けない。


そいつらには顔面に鉄拳、もしくは頭突きをかます。相手の鼻や額の骨が砕ける音がしても意に介さない。


妨害を受けつつも警護の者のところまで歩き、ようやく目の前に着く。


なぜだかわからないが、コイツを見ていると無性に殺意が湧いてくる。俺はその欲望に従いコイツを滅多打ちにする。


両手両足を使用不能にし、顔面に拳の雨を降らせる。両の平手で両耳を打ち鼓膜に損害を与える。結果顔はボコボコに腫れ上がり、味覚以外の五感はほとんど機能しなくなったように見える。


最早直立すらできなくなっており、手を離すとくねくねと崩れ落ちていった。


「こ、このっ!!」


次は自分の番と思ったもう一人の警護は元々携えていたナイフを2本構え、俺に向かって投げつける。ナイフは俺の腕と腹のあたりに突き刺さる。


手の届くところまで距離を詰めた俺はそいつの首根っこを掴み、意識は失はない程度に加減して締め上げる。


じたばたと抵抗するが、その甲斐もなくみるみるうちに顔は青ざめていき、さらに絞め続けると痙攣し始めた。


大人しくなったところでこの木偶を地面に投げ捨て、第三位ターシャルに向かって歩き出す。


「ぼ、僕が悪かったです。ですから…その…」


第三位は後ずさりしながら俺と距離を取ろうとする。しかし俺も距離を詰めるため、間はさして広がらない。


「そ、そんな怖い顔しないでくださいよ…」


一進一退の展開が続くが、三位は足がもつれその場に尻餅をつく。


なおも後方へずり下がろうとするが、速度が違うためあっという間に目の前にまで来る。


三位を見下ろし、手を伸ばしたその時、今まで怯えていた顔が一転してニヤけた表情を見せる。


「バカめ、これでも喰らえ!!」


地面をついていた手に砂を握り締め、俺に投げつける。砂は俺の目に入り、俺をひるませる。


「あの二人といい大甘なんですよ!」


三位はどこからかバールを持ち出し、滅茶苦茶に振り回す。ロクに見えない状態では深手を負いかねないので一度大きく後退する。


「これで形勢逆転ですね、守さん!!」


勢い付いた三位は、さっきとは逆に後退する俺を追撃する。それに対して俺はさらに後ろに下がる。












「お兄ちゃん…」


マナミは怒り荒れ狂うお兄ちゃんをただ見ていることしかできなかった。


近くまで来たときに声をかけようとしたけど、怖すぎて何も言葉が出てこなかった。


体を張ってでもお兄ちゃんを止めてあげたいけど、縛られていて動けない。


「ジッとしときや」


突然後ろから声がする。その一瞬は恐怖がよぎったけど、その声が誰の声かがわかってからは安心感が湧いてきた。


ブチブチを縄を切る音が聞こえる。結構手こずっているみたいだけど、それはとても心強かった。


しばらくすると両手を縛っていた縄が千切れ、両手が自由になる。


「ありがとうございます、ハギ先輩」


「当然のことや。それより足の方は自分でやってくれんか?この手じゃやりにくくてな」


ハギ先輩はマナミに小型ナイフを手渡す。その手は真っ赤に腫れ上がり、とても痛々しかった。


マナミは言われた通り自分の足を縛る縄を切り、椅子から離れることができた。


「ッしゃ、逃げるで」


「どこへですか?」


「秘密基地や。守も知らん、ワシとケイだけの場所があるんや」


ハギ先輩はマナミを抱っこする。抱くときにすごく痛そうな顔をしたけど、それを噛み殺して


「このことは守にはナイショやで?」


と言った。それから先輩は壁の方へ走っていった。










しばらくのイタチごっこの末、異物の除去が完了し目がまともに開くようになる。


俺は後退をやめ、真っ向から三位に立ち向かう。


「観念しましたか、守さん!」


三位は両手でバールを握り締め、天高く振りげてから振り下ろす。俺は振りかざされるバールを右手で掴み、競り合いになる。


俺は空いている左手で三位の左頬に裏拳を放つ。三位はバールを握る手を緩め、バールは俺に奪われてしまう。


三位を地面に叩き付け、腹を足で踏みつけて固定する。


俺はバールをまっすぐな棒に直し、およそ4等分のところでねじ切る。


その棒を両手両足に一本ずつそれぞれ突き刺し、足を離しても動けないようにする。


「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


三位の断末魔の声を上げる。棒を外すためか、少しでも痛みを和らげるためか、動けないなりにゴゾゴゾと動く。


全ての棒を突き刺した後、俺は刀を取りだし鞘から抜く。不思議とこの刀を持っても殺意が強まる。


抜くまでは軽く当てるか外すつもりでいたが、抜いてからは顔か首のあたりを一突きにしてやろうと思いだした。


俺は人には真似できないような笑みを浮かべ、切っ先を下にして頭上まで掲げ、眉間のあたりを狙って刀を振り下ろす。


その時、首のあたりに違和感を覚えた。そのせいで狙いが外れ、刀身は三位の顔面をとらえられなかった。


俺は後ろを振り向き原因を探した。しかし、それを見つけることはできなかった。


気を取り直して刀を掲げるが、さっきよりは低い位置までしか上げない。


突き刺そうとしたその時、何かがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。


俺はそれを切り払い、何が飛んできたのかを確認する。


飛んできたのは大幣おおぬさだった。こんな物を持っているのは一人しかいない。


「その辺にしておきなさい、後戻りできなくなるわよ」




真人「鬼巫女と守君の一戦…夜叉と龍さんに見せたかったなぁ」ボソッ


遠野「何か言ったかい?」


真人「いえ、なにも」


遠野「そっか。…にしてもおかしいなぁ、確かに命中したのに」


真人「麻酔に抵抗でもあるんじゃないですか?」



――――――――――――――――――――――――――――――――


オニさん「お遊びなしの真剣勝負、実力は全くの五分と五分!」


綾「手を抜いてたらこっちが殺られる!あの子こんなに強かったの!?」


オニさん「私が憑依した時よりも確実に強くなっている、若さとはいいものだ!」


綾「何よ、私は若くないっていうの!!」


オニさん「まぁ、一回り近く違うわけだし…」


綾「キッ!」


オニさん「おぉこわい」


    「次回義妹記、『南高夏の陣⑤~マナミ、決死の行動~』」


オニさん「ちなみに私の時代では二十歳を過ぎたら年増と言ってたぞ」


綾「うるさい!」



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