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義妹記  作者: 白鳳
義妹編
47/59

南高夏の陣(1)裏切りのケイとハギ

金曜日、土日の予定を伺ったり翌週の行事に思いを馳せたりと忙しい日である。


俺もマナから勉強会の誘いを受けた。もちろん二つ返事で承諾した。


2学期からは一部を除きほぼすべての授業は受験対策がメインとなるため、テストらしいテストは今回の期末試験で最後である。


従って3年生の成績はこのテストで決められるといっても過言ではない。だからいつも以上に生徒達が勉強している。


俺はそんな受験生たちをよそに窓の外を眺める。


今日もよく晴れた日で空には雲一つない、絶好の洗濯日和だ。


――――――ドドドドドド………


遠くの方から複数のエンジン音がする。その音はだんだんと大きくなっていく。


しかしある瞬間にその音がぴたりと止む。不思議に思い目線を校門の方にやると、バイク乗りたちの集団が門の前に集結していた。


皆もそれに気付き、窓際は人でごった返していた。



「俺に覚えのある奴出てこいや!!!!!」


ざわつきを振り払い、校舎中に声が響き渡る。その後ろでは取り巻きがエンジンを空ぶかしさせて挑発している。


「呼ばれたことだし、行くかな」


席を立って一階に下りようとすると、ハギとケイが俺の前に立ちはだかる。


「お前らも行くんだろ?」


「せやけど…」


「なんだ、怖じ気づいたとかいうなよ?」


「スマン、守!」


その直後、ずどんと重い衝撃が2発分腹部に叩き込まれる。寸分の狂いもない正確な打撃は、俺へのダメージを何倍にもしていた。


「っは…!!」


俺は殴られたところを押さえ、2人の間へ前かがみに倒れた。


「この決着は俺達でつける、それまで寝ててくれ」


「堪忍な」


俺を黙らせた2人は教室を後にし、ターシャル達の待つグラウンドへ走って行った。






「ま、マモル君…」


「ん?」


マナに呼ばれたのでうつぶせの状態から起き上がる。もちろんあの程度の拳で俺の意識を飛ばせるはずがない。


「え!?さっき2人に殴られて気絶してたんじゃ…」


「まさか、演技だよ演技。アイツ等が自分たちで決着つけたいっていうのは薄々わかってたからな」


勝負の様子を見届けようと観戦席を作っていると、けたたましい足音が聞こえてきた。


「外へ出て行く生徒の目撃情報があったけど、アンタ達なの!?」


大方の予想通り、足音は優希達風紀委員会のものだった。


「たぶんハギとケイだな。俺は行くなって言われたからここで待機してる」


「アンタもいくの?」


「アイツらが負けたらな」


「わざわざ喧嘩しに行くとか馬鹿げてる!野蛮だ!」


「そうだそうだ!大人しくしていればユキさんのお父さんが何とかしてくれるというのに!」


「これだから脳筋は!」


平委員たちに好き放題言われるが、特に気にすることもなく優希の方を見続ける。


「やめなさい」


「は、はい…!」


優希の一言で外野も黙り、あたかも一触即発の空気が流れる。その時マナは、いざという時に割って入る覚悟を決めて黙って見ていた。


「その時になったら行きなさい、守」


「ッ!?」


「「「な…何を言ってるんですか優希さん!!」」」


マナや平委員はもちろんのこと、話に耳を傾けていたクラスメイト達も驚き、こちらに目線を向ける。


「守は治安維持局の局長。そして治安維持局は『こういう時のための組織』、でしょ?」


「その通り。それに俺達の上司も出撃許可出してるからな」


「そうそう。だから私達を責める前に、みんなを安心させに行った方がいいんじゃないかな?」


俺が目配せする前にマナが進んで言葉を続ける。平委員は優希の方に目線を移し、肯いたのを確認して各教室へと散らばっていった。









―グラウンド―


「…おや、守さんがいないようですが」


「ワシらに花持たせてもらうよう頼んだんや」


「申し訳ないですけどお二人に興味はありません。守さんを呼んできてもらえますか?」


「あぁ!?」


「んなことはワシらを倒してから言えや、ボケが!!」


2人とも沸点は意外と低く、言葉遣いが荒々しくなる。しかしその程度では何の影響もない。


「面倒くさいなぁ…、じゃあ相手してあげますよ」


取り巻きには手を出さないように指示をだし、気怠そうに前に出る。


体をほぐし終わると、3人ともさっきまでとは打って変わって目つきが鋭くなる。ハギとケイの目には喜びに似たものも感じたが、ターシャルの目にはそんな物は全く感じなかった。



先 に動いたのはこちらで、2人がかりというのもありターシャルは防戦を強いられる。しかしターシャルは息の合った2人の攻撃をひらりひらりとかわす。


「っだらぁ!」


「おっと」


「死ねっ!」


「危ない危ない」


╲当たってないぞ!╱ ╲ちゃんと見えてんのか!?╱ ╲俺らでも勝てるんじゃねぇか?╱


取り巻き達のヤジがこっちにまで聞こえてくる。2人はそれに触発されて一撃がだんだんと大振りになっていく。


その結果隙が大きくなるものの、ターシャルが攻勢に移ることはない。その事に納得がいかないらしく、苛立ちを見せる観衆が出始めた。


「シッ!!」


ハギが下段の足払いを放つが、ターシャルはそれを上に跳んでかわす。


「もらった!!」


跳んで体勢を変えにくくなったところにケイが渾身の右をねじりこむ。ターシャルはその右を両の手でしっかり掴み、自分の落下に合わせてケイを引き落とす。


―――バギィッ!!


着地の際にターシャルは自分の肘をケイの右腕に押し当てていた。その結果腕には耐えられる限界以上の負荷がかかり、音を立ててへし折れる。


「っああぁぁぁぁ!!!!」


ケイは腕を押さえ、うずくまって悲痛の叫びをあげる。ベキッという音と、目の前で骨がおられる様を見てしまったことが痛みを増幅させている。


「おんどれぁ!!」


ケイがやられ、怒りが最高潮に達したハギが獅子の如く襲い掛かる。その一撃一撃はとても重いらしく、ターシャルの防御をその都度崩している。


しばらくの間はハギが攻める展開が続く。が、体力の消耗も通常よりも激しく、キレの悪さや雑な立ち回りが目立つようになってきた。


「ハァ…ッハァ……」


「ずいぶんと息が荒いみたいですけど大丈夫ですか?先輩」


「やかましい…わ…」


「うお―!!もう我慢できねぇ!!!」


「!手を出すなと言ったはずだ!!」


「しめた、今や!」


ターシャルが防戦一方の展開に納得のいかない観衆が暴徒化し、指示を無視して加勢しようとする。ターシャルはそっちの方に気を取られるが、ハギはその瞬間を逃さなかった。


肉薄し、ターシャルの背中に手をやり狙いを定める。限界まで右腕を引き、全身全霊を込めた拳を穿つ!!







守「起死回生の一撃を放ったハギ、果たしてターシャルを沈められるのか?」


マナ「それも心配だけどケイ君は大丈夫なの!?」


守「心配ないだろ、あいつら丈夫だから」


マナ「確かにそうだけど…骨折しちゃってるっぽいんでしょ?」


守「俺の見立てではな。まぁ入院で学校を公欠できるって喜びそうだが」


マナ「私もそんな姿が目に浮かんだよ…」


守「だから大丈夫だろ。

  というわけで次回『義妹記』!、『南高夏の陣②~局長、出撃~』」


マナミ「やっぱり登場するときは専用BGM+腕組み仁王立ちなの?」


守「やってみたいけどやらないだろうな…」





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