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義妹記  作者: 白鳳
義妹編
45/59

家出少女の外泊






「晩飯は食ったのか?」


「一応、コンビニでおにぎりとかを買って…」


「腹減ったらマナミに言いな、きっと何か作ってくれるから」


「あ、はい。わかりました」


「で、着替えはあるのか?」


「はい。一応下着と制服は持ってきました」


リュックの中からそれらを取りだし、俺に見せる。もちろん制服だけである。


「じゃあ寝間着は適当にマナミから借りてくれ」


「いや、このままで寝るんで大丈夫です」


「ん、そうか。じゃあ俺からは以上だ」


テレビの近くに移動しようと席を立とうとすると――


「あの、守先輩」


「ん?」


向こうから聞きたいことがあるらしい。俺は席に座り直し、耳を傾ける。


「さっきからずっと守先輩が応待してますけど…ご両親は出張かなんかですか?」


「出張もなにも…俺達の親は死んでいないからな」


「えっ・・・?」


しばらくの間は俺の言葉が理解できず微動だにしなかったが、触れてはいけない部分に触れてしまったと思った理沙はただひたすらに頭を下げた。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」


「そう気にするなって、だいぶ昔の事でもう完全に吹っ切れてるし」


「そうそう。だから気にしないで、ね?」


「は、はい…」












「ご両親がいないと、こうも開放的なんですね」


理沙はさっきまで頭をへこへこ下げていた時とは一変していつもの調子に戻っていた。


切り替えが早いのはいいことだが、ここまで早いとさっきの事もそんなに反省してないんじゃないかと思えてしまう。


「まぁな。夜遅くまでテレビ見てても怒られないし、勉強やれとせがまれることもないし」


「いいなぁ~」


羨望の目で俺達を見る。いいことばかりじゃないとも言ったが、聞こえていないようだった。


「あれ?年頃の兄妹が住んでて、両親がいないってことは…///」


「はわわ…///」


みるみるうちに女子2人の顔が赤く染まっていく。


「近親相姦があってもバレにくいよな」


さっきまで赤く染まっていた顔がさらに赤くなり、小刻みに震えだす。


「そういうことは思ってても言わないもんですよ!!」


「お兄ちゃんのえっち!!」



ふたり の クロス・ストレート が さくれつ !!



かいしん の いちげき ! マモル は 65535 の ダメージ を うけた !!



マモル は きぜつ して しまった !




――バタッ


「あちゃぁ…ちょっとやりすぎたかな」


「とりあえずソファに寝かせよっか?」


「そだね」


マナミが頭の方に、理沙が足の方に立ち俺を持ち上げて運ぼうとする。


「んッ…!!」


「お、重い…」


かろうじて俺を持ち上げ、ふらつきながらも俺をソファの前まで運搬する。


「「せぇ……のっ!!」」


反動をつけて乱暴に放り投げ、ソファの上に俺を置く。その後で仰向けになるように体を回し、額に冷たいタオルを添えてくれた。


「とりあえず、これで大丈夫かな」


「だね。それよりリサリサ、来るなら前もって言ってくれたらいいのに」


「ごめんごめん、すっかり忘れてた」


「もぉ~」


「それより、マナミちゃん…」


「なに?」


「先輩と一緒に暮らしててどう?」


「楽しいよ?お兄ちゃんと一緒にいると落ち着くし」


「不満とかないの?」


「ん~・・・・・・、ないね」


「そっか…」


「どうしたの?」


「あのね、ウチ……あの家を出て行ってここに住まわせてもらおうかなって思ってるの」


「それって…!」


「うん、今までの家出とは違って親と縁を切ることになると思う」


「ダメだよ…そんなこと」


「どうして?ウチがいると迷惑?」


「迷惑じゃないけど…お兄ちゃんがダメって言うと思うし」


「先輩だってマナミちゃんが何度もお願いすれば折れてくれるって!」


「そ、そうかもしれないけど…やっぱり、親は悲しむと思うよ?」


「――――――。」


言葉数多くマナミを説得しようとしてきた理沙が沈黙する。だが痛いところを突かれたのではない、地雷を踏んでしまったのだ。


親が嫌で家を出てきた奴に親を理由に意見を主張しても無駄ということだ。


「は?何言ってんの?アンタ親いないじゃん。なのにそんなこと言うわけ?」


「それは…」


「アンタにウチの悩みがわかるの!?わかってるつもりなの?」


「……グズッ」


マナミは嗚咽を漏らしだした。あまり責められる事がないからこういうことに慣れていないのだろう。


「それにあんなクズ親、ウチの事なんかどうでもいいと思ってるよ」


「それはどうかな」


「お兄ちゃん…」/「先輩!」


狸寝入りをやめて理沙の目の前に立ちふさがる。その後ろではマナミがすすり泣くのが聞こえる。


「どういうことですか」


「ご両親がお前に厳しく当たるのは何もお前が嫌いだからじゃないんだよ」


「嘘だ!そんなのありえない!」


「嘘なわけあるか。本当に嫌いなら、どうしてノコノコと帰ってきたお前に飯を出すんだ?どうして面倒を見てくれるんだ?」


「それは…」


再び沈黙する。今度は地雷を踏んだからではなく、痛いところを突かれたからである。


「なんだかんだで最後には子供には甘い、それが親心ってやつだ」


「………。」


「そういうわけだから、帰ってきて迎えてくれるうちは縁を切るなんてことはやめときな」


「…はい」


「ただ、あくまでも俺達は他人だから最後は自分で決めるんだな。だが・・・」


「だが?」


「その時は、覚悟しておいた方がいいぞ?」


理沙に微笑む。特に深い意味はなかったのだが、向こうには脅迫に近い意味で伝わったらしく、『絶対にしない』と俺に強く誓った。


しかし家に戻るのだけは頑なに拒み、何があっても今日はここに泊まる心づもりのようだ。









「お風呂沸いたよ、お兄ちゃん」


「ん、了解」


「リサリサ、お風呂入る?」


「入る入る!」


「んじゃ一番風呂だな、客人だし」


「はーい。マナミちゃん、一緒に入らない?」


「えっ?そ、それは…」


「ダメだ。俺が認めないぞ」


すかさず助け舟を出す。背中のアレを他人に見られるとまたマナミが意識を失いかねないからだ。


「え?なんで先輩が?」


「俺とマナミは一緒に風呂入ってるんだ」


「お兄ちゃん!?」


「あ、そうだったんですか!これは失礼しました」


「リサリサ!?」


日頃からシスコンを前面に出しておいたおかげで理沙もあっさり納得する。勿論一緒に入ってるなんてのは俺の願望だが。


「じゃ、ウチは邪魔なようなんで失礼しますねー」


理沙は着替えを持ってそそくさと部屋を出る。風呂場から水音がするようになりだすと、マナミが俺に詰め寄ってきた。


「……お兄ちゃん」


「いいってことよ。嫌がってるみたいだったからな」


「なに誤解されるようなこと言ってるの!!」


しまった!調子に乗って言い過ぎたようだ。


「スマン!ついあんなありもしないことを!」


「お兄ちゃん…本当に一緒に入りたいの?」


「ま、まぁ…入れるのなら入りたいな」


「ふ、ふ~ん…そうなんだぁ」


俺は嘘をついてそのままお咎め無しになるよりも、本音を言ってデレる方に賭けた。


マナミは俯いてもじもじとしている。この様から賭けには買ったとみてよい、残るは配当だ。


「お兄ちゃんがどうしてもって言うなら…ちょっとだけならいいよ///」


「っしゃぁ!!」


思わず大声をだし、ガッツポーズをとる。


「あ、で、でも一緒にお風呂に入るのはアレだから…、せ、背中流してあげるだけだよ?」


なんと、つまりはマナミが俺専属の三助さんになってくれるというのか!これほど嬉しいことはそうないぞ。


「十分すぎる!もうそれだけでしばらく風呂入らなくてもいけそうだ!」


「お兄ちゃん、それは不潔だよ!」


「もののたとえだって」


「あそっか。そうだよね」


「お待たせしました!お風呂空いたので二人でごゆっくりどうぞ」


話を盗み聞きしていたかのような抜群の間の良さで理沙が浴場から戻ってくる。


「じゃあマナミ、先に入ってきな」


「は~い」


「あれ?一緒に入らないんですか?」


「さすがに今日は客人がいるからな」


「そんな!ウチは置物か何かだと思ってくれて結構なのに」


「たまには休まないと持たないだろ?」


意味深に自分の腰を叩く。理沙はすぐにその意図を理解し、


「毎晩お楽しみのようですね」


「はて、なんのことだか」
















「先輩、先輩」


理沙が周囲を憚るようにして俺に話しかけてくる。


「どうした?トイレなら2カ所あるから遠慮しなくていいぞ」


「違いますよ!」


「じゃあなんだ?」


(覗きにいかないんですか?)


と俺に耳打ちして言う。確かに少し前の俺なら迷わず覗きに行ってただろうが、今になってはできない。


「行かない。そしてお前も行くな」


「先輩が行かないならウチも行かないですけど…興味ないんですか?」


「今度マナミに聞いてみな。きっと納得のいく答えが返ってくると思うから」


「はーい。…チェッ」


「冷蔵庫にアイスがあるからそれで我慢しろ」


「そんなんで誤魔化されてると思ってるんですか!?」


口ではそう言いつつも、アイスを袋から出ししゃぶりついている。


「その様で言われてもなぁ…」









「ふー、さっぱりした」


マナミが出た後すぐに風呂に入った俺は、特に浴槽で考えを巡らすこともなく一日の汚れを落とした。


「遅いんだからそろそろ寝ろよ」


時計の針はもうすぐ0時を指そうとしていたので、2人に寝るよう促す。


「ん~、あとちょっと」


「これが終わったら寝ますよ」


いつもなら素直に二階に上がるのだが、今日は理沙がいるせいか粘ろうとする。


「じゃあ程々にな。俺は先に部屋行くから」


「は~い。おやすみなさい」


「おやすみ、お兄ちゃん」



俺は2階に上がったが、寝たのは言うまでもなくマナミ達が寝静まった後である。












マナミ「お疲れ様でした。今回の本編更新は以上です」


守「この後はおまけと次回予告です。そちらもお楽しみください」





―――――――――――――――――――――――――――――――


守「家出少女を一人抱えこんでも生活リズムは変わらない!」


理沙「7時台に起きるとか早すぎですよぉ」


守「『郷に入っては郷に従え』だ。文句言うな」


理沙「はーい…」


守「ついでに『働かざる者食うべからず』も適応するか?」


理沙「マジでやめてく…れなくてもいいですよ」


守「ほぅ?」


理沙「こんなのでどうです?」


守「これは…教室で居眠りしてるマナミの写真(接写)!」


理沙「そういうので良ければ提供しますけど」


守「…1枚につき1泊でどうだ?」


理沙「いいですよ、それでいきましょう」


守「今度もよい関係でありたいな。次回、『スウィートシュガー作戦』」


理沙「読んでくれないと朝遅刻しちゃうぞ!」








作者「はいオッケー!」


理沙「おつかれさまでしたー」


守「お疲れー」


ザー(大雨)


マナミ「しっかり梅雨だね」


守「だな。外出するのが嫌になる時期が来たな…」


マナミ「マナミ達は歩いて学校に行くからいいけど、自転車の人は大変だね」


作者「学校までなら地下通路が通ってるんですよ、実は」


マナミ「そうなの!?」


守「あぁ。今までで一度も使ったことないが」


理沙「せっかくあるのに使ってないんですか!?」


マナミ「おじさん、使う予定ないの?」


作者「今のところないですね…。だからあくまで設定上です」


理沙「でも地下鉄とかとぶつかったりしないんですか?」


作者「大丈夫です。黒武者家ですから」


マナミ・理沙「???」





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