表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義妹記  作者: 白鳳
義妹編
43/59

フラッシュバック






「一番乗り、か…」


門に着いたが誰もまだ来ていない。辺りは部活帰りの生徒達がちらほら見えるが、マナミ達の姿はない。


「守先輩、さよなら~」


「ほぃさよならー、明日も来いよ」


「は~い」


その場でずっと立っているせいか、俺を立ち番か何かと勘違いして挨拶をしてくる生徒もいた。


「………………。」


それにしても一向に来ない。5分ほど待っているが誰ひとり来ない。何かドッキリでも仕掛けてるのか?それとも俺が集合場所を間違えたか?









「あれ、マモル君だけなの?」


初めに到着したのはマナだった。生徒会室にも寄るから遅い方だと思っていたがその予想は外れた。


「他の奴らには会わなかったか?」


「会ってないよ。みんなで楽しくおしゃべりしながら移動してるんだろうね、きっと」


「てことは、まだ待たないといけないってことか?」


「そうなるね。………マモル君?」


「ん?」


「待つのが嫌だったら…私達だけで先に帰っちゃわない?」


魅力的な提案だ。マナミがいなければ二つ返事で快諾しただろう。


「悪くないんだが、後が怖いからなぁ」


「マナミちゃんのこと気にしてるの?」


「まぁな、アイツ焼き餅焼きだし。ここで帰ったらきっと飯抜きだな」


「じゃ、じゃあウチで食べていかない?」


「俺んちを修羅場にする気か?」


「そっか…じゃあダメかぁ」


「まぁそう凹むなって。今回はダメだけど、マナミには適当に誤魔化しておけば一緒に帰るくらいはできるからな」


「ホント!?」


「あぁ。それに俺達は『受験生』だし、補習とか特講があるっていっても通じるしな」


「勉強してないのにね」


「痛いとこをつくな。ま、俺はお前とは違って上の大学に行こうとは思ってないからな」


そもそも俺は稼ぐ当てがあるから大学進学するつもりはなかった。しかしその辺のことを知らない教員達やマナミから進学をしつこく迫られたんで根負けしていくことになった。


「あれはお父さんとお母さんが勝手に…」


マナの第一志望は誰もが知るような有名大学。この高校から通った人はいないが、マナは期待できるのだそうだ。


ちなみに俺だとD判定くらい。行こうと思っても今からじゃ間に合わない、裏口からなら入れそうだが。


「じゃあ他に行きたいとこがあるのか?」


「勿論あるよ」


「どこ?」


「マモル君と同じ大学がいい」


「やめとけやめとけ。勝ち組ルートから外れるぞ」


「そんなの関係ない!!」


マナは声を大にしてそう言い放った。突如として雰囲気が一変したため校門の前では玉突き事故が続発した。


「……ごめん、言いすぎたね」


「いや、俺も無神経すぎた。すまない」


殺伐とした雰囲気もほんの一瞬で収束し、観衆たちはいつも通りの生活に戻っていった。


「そこまで真剣なら俺は何も言わないが…両親は認めてくれないだろうな」


「お父さんは特にね…」


「なんだったら駆け落ちするか?しばらく食べていけるだけの蓄えはあるし」


「駆け落ち…。わ、悪くないかも///」


「本気にすんなよ。少なくともマナミが高校卒業するまでこの町を離れる予定はないから」


「あ……。そ、そう…だよね」


落胆した様子のマナに近寄り、耳元でそっと囁いた。


「俺の両親も駆け落ちみたいなことしてできた夫婦だから希望はあるかもな」


「そうなんだ………えええっ!?!?」


「おっと、つい口が滑ってしまった。今のは内緒な」


ウンと頷き今度はマナが俺に耳打ちする。


「その事マナミちゃんは知ってるの?」


「知らないはずだ。アイツに俺の親のことは一切知らせてないからな」


「そ、そうなんだ……」


「さて、それじゃあネズミを炙り出すか」


「えっ?」


「門の裏にマナミ達がいる、気付かなかったか?」


俺はポケットから発煙筒を取りだし、キャップを外して点火させ門の向こう側に投げる。


╲何コレ!?╱


╲な、なんかケムリでてるよ!╱


╲ゴホッゴホッ…、ここにいるとマズイわね、移動しましょ!╱


もうもうと煙が立ち上がり、それを吸い込みむせぶネズミたちが燻り出される。


「「「あ…」」」


待ち伏せしていた俺と鉢合わせし、硬直する。俺はその隙に三人の額にチョップをお見舞いする。


「あうっ」/「あたっ」


マナミには押し当てる程度の強さでやったため痛そうにはしてなかったが、後の2人は痛そうにしていた。


「盗み聞きとは感心しませんな」


「聞いてたんじゃないですよ、見てたんです!」


「何を?」


「やだなぁ、先輩さっきマナ先輩の耳をはむはむしてたじゃないですかぁ」


残りの2人がうんうんと頷く。聞かれていたと思っていたが、どうも取り越し苦労だったようだ。


「残念だが俺は耳フェチじゃないから耳をはむはむしてたわけじゃないぞ。密談だ、密談」


「違うの!?」


「違うぞ。マナミにだったら、はむはむしてもいいかもな」


マナミの横髪を掻き上げ、覆われていた耳を露出させる。


「こ、こんな人前でダメだよお兄ちゃん!」


耳はあっという間に赤く染まり、髪を押しのけていた手は乱暴に払われてしまった。


「冗談だって、そんなに赤くなるなよ」


「むむむむ……」


「密談って、何の話をしてたんですか?」


「それを言ったら密談にならないだろ、秘密だ」


「あはは…。ですよねー」


「み、みんな揃ったことだし帰ろっか?」


「そうだな。帰るとすっか」


「あ、ずるいですよ先輩!!」










「じゃあ先輩、私たちはコッチなんで」


「ん、そうか。じゃあな」


「ばいば~い」


校門から歩いて300mくらい行った交差点でリサリサとみ~ちゃんはマナミたちと別れた。




「そういえば、お兄ちゃんとマナ先輩って幼馴染なんだよね?」


「あぁ。コイツが幼稚園入る前に知り合ったらしいから、幼馴染歴10数年になるな」


「同じ幼稚園だったの?」


「いいや。2人とも通ってない」


「え?じゃあどうして?」


「幼稚園がどういう所か下見に行ったときにマナの親父さんと意気投合したらしくてな」


「え?え?同じ幼稚園で出会ったのに同じ幼稚園に通ってなかったの?」


「まぁな。自宅教育ってやつだ」


「ふぇ~。なんか英才教育っぽいね!」


「そんなところだ。さすがに小学校には通ったがな」


「……えっ?……」


マナ先輩が一瞬驚いた様子を見せたけどすぐに普通の時の顔に戻ったのをマナミは見逃さなかった。


「そうそう、それに私達の他にみか「おい」


マナ先輩の話にお兄ちゃんが割って入る。その声はいつもよりも低くて怖かった。


「な、なに?」


「その話はするな」


「でも…」


「口答えするな。星影の話は禁止だ、いいな?」


「う、うん…わかった」


マナ先輩はお兄ちゃんに完全に抑え込まれていた。足がガクガク震えていたから、マナ先輩も今のお兄ちゃんに恐怖しているみたいだった。


これがずっと尾を引き、それからは誰も一言もしゃべらなかった。



(こんな気まずい空気を作ってしまったのは無神経にお兄ちゃんの過去を話題にしたマナミのせい?)



(お兄ちゃんはマナミに気を使ってるけど、それはお兄ちゃんにとってただの枷でしかない?)



(さっきの『ホシカゲ』って人は誰?どうして詳しく教えてくれないの?)



いろんなことを考える。最終的にマナミはある結論に辿り着いた。



(もしかして、『マナミはいらない子?』)



そう思った瞬間、脳裏に一つの景色が浮かび上がる。


顔はよく見えないけど、ものすごく怖くて悪い人が2人がかりで誰かを滅多打ちにしている。助けてあげないと!!


でも一歩も動けない、まるで接着剤で固定されてるみたいに動けない。すると片方の人がマナミの方を向いて…


『お前は失敗ばっかりしてアタシ達の役に立ちやしない』


『それでいてその責任を兄に押し付けるなんてヒドイねぇ』


『アタシ達もアンタの兄も思ってるよ【マナミ、お 前 な ん て い ら な い 】って』




「――――――ッ!!!!」


今のは一体…?何…?嫌だ…、いやだ…、イヤダ…。








「―――ハァっ、ハァっ、ハァっ」


「!、マモル君、マナミちゃんが!」


「わかってる!おいマナミ、しっかりしろ!!」


背中のあたりを叩き、正気に戻させようとする。


「ハァっ、ハァっ、ハァっ―――」


呼吸が大人しくなる様子はなく、それどころか立つことすらままならなくなりだした。


「マナ、家から何か袋持って来い!」


「うん、わかった!」


マナは荷物を地面に置いて近くの民家へと走った。




マナの姿が見えなくなったことを確認し、俺は胸ポケットから注射器を取り出した。


「チクッとするが我慢しろよ…」


注射器の針をマナミの腕に刺し、中の溶液を注入する。


「ハァっ、ハァっ…ハァっ……ハァっ……」


先ほどまで乱れていた呼吸も落ち着いたものになり、なんとかなったようだ。


「マモル君、もらってきたよ!」


事態が収束したころ、マナが戻ってきた。


「あぁ、それなんだが…マナミの容体がお前がいないうちに落ち着いてな」


「そうなんだ。でも大事にならなくてよかった」


「だな。それじゃマナミを連れて帰るから、手伝って貰っていいか?」


「うん」


マナミは今、薬の副作用で眠っている。目を覚ました時にまた症状が再発しても大丈夫なよう家に移動する。


マナも両親に連絡を取り、一時家に留まることになった。


俺はマナに協力してもらいながらマナミをおんぶし、家までの道のりを歩きだした。




マナ「お疲れ様でした。来週の更新にもご期待ください

   それでは、本編に続き次回予告とおまけもお楽しみください」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


守「部屋に連れ帰ったはいいが、マナミはすぐには目を覚まさなかった」


マナ「やっぱり白雪姫的な要素が必要なのかな?」


守「さぁな。だが俺とマナミが口づけする事になるがいいのか?」


マナ「言ったって兄妹間じゃない。そんなのノーカンだよ!」


守「そうか?じゃあ遠慮なく!」ズキュゥゥゥゥゥゥン


マナ「ちょっとマモル君!来週まで我慢して!」


守「っと、そうだった。次回『義妹記』、『眠り姫と家出少女』!」


マナ「読まないとマナミちゃん目を覚まさないよ!」




――――――――――――――――――――――――――――――――



マナミ「もうすぐ一周年らしいね!」


守「そういえばそんなこといってたな。何か特別なことするのか?」


作者「更新の宣伝をするくらいですかねー」


守「なんだ、何もしないのか」


マナミ「え~、何かしようよ~」


作者「私に絵心があれば記念コスのイラストとか描くんですけどねぇ…」


マナミ「絵心ないの?」


作者「ないです。微塵も」


守「…役立たずが」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ