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義妹記  作者: 白鳳
義妹編
37/59

二輪通学




―――翌朝―――


「…ちゃん、お兄ちゃん…」


誰かが俺を呼ぶ声がする、それに体が波打つような感じがする。これは夢か?


「お兄ちゃん!!早く起きて!!!」


布団を引き剥がされ、少しずつ脳が覚醒し始める。


「おーマナミ、おはようさん…」


「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないよ!時間時間!!」


目の前に目覚まし時計が出現する。長針は4の少し手前、短針は8と9の間を指していた。


「まだ8時20分じゃん、余裕余裕…」


もう少し寝ようとした瞬間、十分に脳が覚醒し事の重大さに気づく。


「――――じゃないっ!!!!」


ウチの学校は8時30にはHRホームルームが始まるからそれまでに教室にいなければならない、歩いたんじゃ正直間に合わない!!


こうなったら『アレ』を使うしかない!


「今すぐ準備するからその辺にある下のジャージ穿いて外で待ってろ!」


「朝ご飯は?」


「食えそうにない、お前は食べたんだろ?」


首を横に振って否定するマナミ。


「お兄ちゃん起きるの待ってたから…」


なんと愛おしくてデキた妹なことか…!っと、感動してる場合じゃない。俺は冷蔵庫の中から10秒メシ(ゼリー状)とエネルギーメイトのチョコ味を取り出し、マナミに渡す。


「悪いがそれで我慢してくれ!」


俺はその場で服を脱ぎ、着替え始める。マナミもスカートの下から穿くだけだったためその場でジャージを穿いた。


着替え終わったマナミは俺のカバンを持って部屋を出る。


「お弁当とカバン持って外にいるから!」


マナミが部屋を出た後、俺はまた地下へと隠し通路を進んでいく。その途中でマナに電話を掛ける。






ヴーーーッ、ヴーーーッ、ヴーーーッ…




「もしもし。どうしたの、マモル君?」


風紀委員会アイツら、今日活動してるか?」


「ううん。やってないよ」


「OK、わかった。ありがとう」




ツーーーー、ツーーー、ツーーー……




昨日とは違い、向かって左側の部屋に入る。シャッターを開けるスイッチを押し、ヘルメットを2つ取り、キーをさしてエンジンを噴かす。


アクセルを回し地上への上り坂を駆け上がる!


「乗れ、マナミ!」


「こんなのどこにあったの!?」


「いいからメット被れ、遅刻するぞ!」


マナミをヘルメットをかぶり、俺の後ろに座ってしっかりしがみつく。荷物はシート下のスペースにすべて詰め込んだ。


「飛ばすからしっかり掴まってろよ」


「う、うん!」


さっき携帯で見た時刻は24分、何とか間に合いそうだ。バイクを急発進させ、弾丸のように家を飛び出す。


それからはレーサーの如く学校までの道のりを爆走する。家から学校まではほぼ一直線なので減速は一切せず加速を続け、最終的には100km/hくらいは出ていたと思う。


遅刻ギリギリの時間だというのに、俺達と同じような状況の生徒はあまり見受けられない。なぜなら風紀委員会がランダムで問を5分早く閉めてしまうことがあるからだ。


校門を突っ切り、校舎入口の真正面で停止する。


「ありがと、お兄ちゃん!」


マナミはシート下から自分の荷物だけを取り出し、中に入って階段を駆け上がる。


俺はバイクを教職員用の駐車場にこっそり停めてから教室に急ぐ。階段を使っていては間に合わないので壁を走って上がり窓から侵入する。


席に着いて一息ついたその時、HRの開始を告げるチャイムが鳴る。


「ふぅ…ギリギリセーフってとこだな」


「やってることは完全にアウトだけどね…」


担任が入ってきて様式化したHRが始まる。連絡事項も特別ないため、2~3分でHRは終了し、担任は職員室へ戻る。


1限目が始まるまで10分もないのに律とサキが取材にやってくる。


「守サン、今朝の通学方法についてなんですけど」


「ちゃんと免許持ってるから問題ない」


「バイクを買うお金はどこにあったんでしょうか?」


「秘密」


「なぜ今日実行したんでしょうか?」


「朝起きたのが20分手前だったから」


「では最後に、マナミちゃんと二人乗りした感想をお願いします!」


「最高だな。あんないい思いができるなら毎日遅刻しかけるのも悪くないな」


クラスが笑いに包まれる。もちろん冗談だ、と付け加えておいた。


「黒武者守!!」


扉が開け放たれるのと同時に大声が教室中に鳴り響き、一気に静まり返る。風紀委員長、ユキが乱入してきたのだ。


ユキは俺の目の前まで歩いてきて、一枚の書類を見せる。


「二輪車での通学には届出が必要なんだけど、出してないわね」


「あぁ、突発的な出来事だからな」


「よって黒武者守、あなたを逮捕します!」


「……仕方ないな」


両腕を差し出し、手錠をかけるのを認める。


「…えらく素直ね」


俺の手首に手錠をかけ、現在時刻と罪状を宣言すると、不透明なメガネをかけた助手らしき生徒が何かを書類に書き込む。


「今回ばかりはな」


「露店やってる時もこうやって大人しく捕まってくれればいいのに」


「そいつはできない、皆に人気だからな」


「……売っている商品がまともなものなら私だって目を瞑ってたわよ」


「何を言う、すべて真面だぞ」


「生徒の写真やマンガ雑誌を売っておいてどこがまともなのよ」


「なんだ、知ってたのか」


「甘く見ないでちょうだい、そのくらい把握してるわよ」


厳しい目つきで律とサキの方を見る。2人は首を横に振って自分たちが内部告発者ではないと訴えかけてきた。


「でも役立つこともしてるんだぜ?トンボを溶接し直したりネットの破れを直したり…」


「トンボ…!」


ユキが何かを閃き、勝ち誇ったような顔をする。


「黒武者守、あなたには今回の一件のペナルティとして、『グラウンドのトンボかけ』を命じます!」


「…そういうことか。わかった、受けよう」


「執行は放課後、部活動の方には私が通達しておくから」


言うだけのことを言い終えると風紀委員の2人は意気揚々と自分たちの教室へと帰って行った。


一瞬にして教室中がざわつく。皆の関心はただ一つ、「なぜおれが処罰を大人しく受けたのか」だ。


クラスの総意を代表して律が尋ねる。俺は「断ったらマナミに火の粉が降りかかるから」と答えた。


その場にいた全員が納得する。納得したところで1限目開始のチャイムが鳴り、各人席に戻る。


「ところでマモル君、ユキちゃんに手錠かけられたままじゃない!?」


「この程度、問題ない」


腕に力を込め、手錠を引きちぎる。その後いつもの道具で手錠のロックを外す。


「な?」


見ていたマナは口をぽかんとあけていた。





マナ「お疲れ様でした、更新分は以上です。次回投稿はGWもあるので5/3を予定し   ています。それでは、引き続きおまけをお楽しみください」







守「やれやれ…優希に捕まるとは。今日は厄日だな」


マナ「災難だったね。届け出すの?」


守「いや、出さない。出しても俺の家の距離じゃ許可は下りないだろうよ」


マナ「そっか…」


守「仮に許可が下りても寝坊した時しか乗るつもりないしな。燃料代高いから」


マナ「意外と経済的なんだね」


守「一応帳簿俺がつけてるからな。ざっくりとしかやってないが」


マナ「ふ~ん…。マナミちゃんがつけてるんじゃないんだね」


守「マナミがつけると不都合だからな。用途不明金とか許さなさそうだし」


マナ「ふふっ。たしかにそうだね」


守「お前も帳簿みたいなのつけてんだろ?」


マナ「うん、私の場合はお小遣いの収支だけどね」


守「しっかりしてるなぁ。何か買いたいものでもあるのか?」


マナ「ううん、特にはないよ」


守「なんだ、ないのか。言えば誕生日にプレゼントしてやってもよかったんだが」


マナ「えへへ。いいのいいの、守君から貰いたいものは決まってるから」



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