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義妹記  作者: 白鳳
義妹編
36/59

色気と考察



事務所から帰り家の前に着く。外灯の明かりが俺を出迎えていた。家の中に入った俺は何も考えずに風呂場へと直行する。


ガララララ――


脱衣所の引き戸を開ける。視線の先には湯気をもうもうと立ち昇らせている湯上がりのマナミが……ん、湯上がり?


眼前の光景に注目する。マナミはすっぽんぽんだったが湯気と手で大事な部分をガードしている。そして小刻みに震えている。


(マナの時以上に死亡フラグじゃないのか?)


そう思った瞬間、時が動き出す――


「あ…あ…あ……」


「…////」


「お兄ちゃんのえっち―!!!!!!!!!!」


手当たり次第にそこら辺にあるものを投げつける。時が止まっているときに投げられていたら回避することはできなかっただろう。


洗濯カゴ・歯ブラシ・洗面器等々…投げても大丈夫そうなものはそのまま避けるが、ドライヤーや石鹸など壊れる可能性があるものはキャッチして地面に置く。


「このっ、このっ!!!」


地面に置くためにしゃがんだ状態から立ち上がった俺の頬を何かがかすめ、裂傷を負う。こいつはカミソリだ!


マナミは狙いをつけず、手当たり次第に投げているので、目に向かって飛んでくるものもあり非常に危険なので脱衣所を脱出する。


さすがに外まで追ってくることはなかったが、中にはまだ殺気めいたものがたちこめている。


間接キスは気にしなくてもさすがにそれ以上のことは気にする。そこも気にしなくなったらそれはもはや夫婦の域だ。この作品も18禁になってしまう。


俺はとりあえずリビングに移動し、マナミの機嫌が収まるのをテレビでも見るフリをしながら待つ。


テレビをつけてはいるが、内容は一切頭に入っていない。俺の頭はさっきの光景がフラッシュバックしているからだ。


あまり大きいとは言えない胸、しっかりとくびれのあるボディ、キュッと引き締まったお尻…違う違う、こっちじゃない。


(マナミの背中には確かに大きな傷跡があった…。本人は俺に見られたことに気付いてないようだが)


俺が本人や正義さんから聞いた話ではそれと直接関係しそうな出来事は聞いていない。…いや、正確には一つだけある。


(虐待、か…)


直接は言及されてないものの、当時の2人の様子から想像は難くない。そうだとすると、正義さんが務所にいることも納得できる。あの人は俺以上にマナミを大切にしていた、実際の兄妹なんだから当然だが。


「お兄ちゃん、お風呂、空いたから……」


マナミの傷が虐待によるものだとすると、正義さんが咆哮搏撃の沙汰を起こすことは必然。間違いなく警察も動いたはず、だったらユキの親父さんは何かを知っているに違いない。


しかし事件は6年ほど昔の話、なぜ今さらと勘繰られるのも面倒だ。ならばおやっさんを通じて聞いてみようか、あの人は俺達のことをいつも気にかけてくれているし、少しくらい協力してもらってもバチは当たらないだろう。


もしくは遠野先生から聞き出すか。正義さん務所にいることを俺に知らせたのはあの人だ、まだ何か知っている様子だったし叩けば多少の埃は出るかもしれない。


だが下手をすれば俺は教師に暴力をふるった不良生徒になってしまう。それはマナミにも悪影響を与えてしまうから遠野先生には手を出さない方が無難か…。


「お兄ちゃん…聞いてる?」


やはりユキの親父とおやっさんを利用するのが現実的だ、この前からおやっさんはこのことに関して動いてくれているし。


それでいくなら不安要素は2人の仲、仮にもこのあたりを取り仕切る光と影のトップだ、知らないなんてことはないだろうがお互いよくは思っていないだろうな。


それにユキの親父さんのことを俺はほとんど知らない。出来れば一度会って話をしてみたい、話してみて初めて分かるものもあるだろうし。


とはいえ、表向きは善良な一般市民が何もないのにお偉方に会うことは罷り通らない。どうすれば…


「おにーーちゃん!!」


「っ!?!?」


思考は中断され、現実に戻る。隣にはパジャマを着たマナミがいた。


「マナミの話、聞いてた?」


「す、すまん、聞いてなかった…」


「お風呂空いたから冷めないうちに入ってねって言ったの」


「そうか…わかった」


「大丈夫?お兄ちゃん、疲れてない?」


マナミは俺の返事に今一つ覇気がないのが心配らしい。


「大丈夫大丈夫、大したことない。心配してくれてありがとな」


マナミの頭をなでなでする。マナミの頭は撫で心地がよく、女の子らしいシャンプーのいい匂いがした。


不安そうな表情をしていたマナミも照れ笑いを浮かべ、さっきまでのことはすっかり忘れたようだ。


「んじゃ、俺は風呂入るから」


「は~い」


マナミは二階の私室、俺は脱衣所へとそれぞれ別れる。




浴槽に浸かってから、俺は再び考えを巡らせる。


ユキの親父さんに会う方法…重大事件でも起こせば確実だろうが、そんなことはできない。


ユキの家を訪ねれば運次第で会えるだろうが、生憎アイツの家は知らない。それどころか教師たちにも知らせてないはず。


父親が父親なだけに家の場所は伏せたいらしく、家庭訪問とかも警察署でやったり、時には拒絶したこともあるらしい。


やはり何らかの形で招いてもらうのが好ましい。おやっさんにそんな感じの仕事はないか聞いてみるか…。







考え始めて数十分―――、一筋の光明が俺を照らす。


(あるじゃないか、絶好のイベントが…!!)


学校生活があまりにも平和だから忘れていたが、俺達はターシャル達に狙われているんだった。


アイツらは他校も襲撃しているからその動きは警察の知る所だろう。そいつらを退けたと聞けば興味が湧くはず。


そうすればきっと話をすべく呼び出してくれるはず。俺の脳内ではそれに賭けることが満場一致で可決された。


考えるのをやめた途端に頭がクラクラしてきた。長湯で逆上せたのだろう。


風呂をあがった俺は再びリビングに戻り、アイスを食って熱を冷ます。アイスに所有権は特別存在しないが、マナミは常に残りをチェックしてるため2個食べたりすると翌日小言を聞かされる。


体温が下がってきたところで部屋着用のジャージを纏い、自分の部屋に戻る。そこからクローゼットの回転扉をくぐり、鍵を使って奥の部屋に入る。


階段を使って2フロア分、つまりは地下まで下りる。向かって右側の部屋に入り、指紋を照合し金庫を開ける。


金庫の中に今回の報酬金をしまう。ちゃんと数えたことがないので幾らになるかわからないが、すべて合わせると一千万は軽く超えると思われる。


その中に親父の遺産はほとんど含まれていない。親父の金はお袋の家の方に吸われていったからだ。


ちなみに母方からは援助も手紙も一切なく、まさに『金の切れ目が縁の切れ目』を体現している。


金庫の扉を閉めて自分の部屋にまで戻る。時計を見ると時刻は午前1時前。まだ寝る時間じゃないが今週末はデート2件に飛込みのバイトと、いつも以上にハードだったため早めに寝て休養することにした。












マナミ「お疲れ様でした。今週の内容はここまでです。次週更新もご期待下さい」




――以下、おまけの文――


律「聞いたわよ、守!」


守「なんのことだ」


律「マナミちゃんのハダカを見たそうじゃない!!」


マナ「えぇっ!?」


守「あ、あぁ…そのことか」


律「で、どうだったの?」


守「どうだったってなぁ…」チラッ


マナ「?」


守「マナの方があるな」


マナ「ちょっとマモル君!?」


律「ふむふむ、それで?」


守「マナはB確だから…マナミはABボーダーくらいだと推測される」


マナ「マモル君…そんな目で見てたんだ」ジトー


守「じゃあ友達を見る目で見たんでいいのか?」


マナ「えっ!?そ、それって…」


律「今まで守はアンタを『友達としては』見ていないってわけよね」


守「そういうわけだ」


マナ(友達としてみてないってことは『異性』として見てるってことよね…!)


マナ「と、特別だよ。マモル君だけだからね!!」










律「よくもあんな嘘つけたわね」


守「嘘?」


律「マナをどう見てるかよ。友達としか見てないんでしょ?」


守「いや、ちゃんと攻略対象として見てるぞ」


律「………マジ?」


守「マジ」


律「いつから?」


守「んー…中学で再会した時からかな」


律「その様子だとむこうも結構な期間っぽいわね。告白しないの?」


守「しない。厳密には、できない」


律「…?どういうこと?」


守「さてね。これ以上は非公開だ」





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