お宝山遠征(2)
バリケードの前からそうだったがこの辺りは廃棄物の放出するガスなのか、それとも害虫対策に燻煙式の殺虫剤でも使っているのかわからないが妙に視界が悪い。
突如、モヤの流れが変わる。人の接近を察知した俺は音や気配を探る…。
(正面に2つ、4時の方向に1、それから10時に1つ…!)
感じ取った4つの気配が一様に俺に向かって動き出す。次第に距離が縮まっていくが途中で動きがぱたりと止まる。
(ここまで来ておいて俺に気付いてないはずがない……、とすれば…飛び道具か!!!)
さっきまでの動きは助走のためのものであると判断した俺はすぐさま地面に伏せる!するとモヤから突然鉄パイプやバットが飛び出し、俺の真上でぶつかりあい、勢いを失い落下する。
どうやら俺の予想は正しかったようだ。人に命中したような音がしなかったしなかったことに焦った4人は慌てて距離を詰めてくる。
俺は直進し、正面からやってくる2人の顔面を掴む。それから反転して向きを変え、4時と10時から来る2人にさっきの2人の頭部をぶつけさせる!
4時と10時の2人は主に鼻から鮮血を出しながら倒れていく。最後に両手の二人も頭どうしをごっつんこさせ、使い捨てる。
後も同じように丁寧に相手してやればよかったのだが…飽きてその気も失せてしまった。
俺は全精力を開放し、威圧する。これで俺に敵意を向ける者はいなくなったはずだ。
俺が奥に進むと点々の気配は道を開けるように散らばる。突き当り付近まで行ったところで視界に何か黒くて大きな物体が映る。
近づいて見てみると、それはお目当てのソファであった。多少の傷はあるものの、座り心地もよく、クッションのおまけつきだった。
さらに近くには移動させるのに使ったと思われる特大サイズの台車があった。俺はそのソファを台車に乗せ、台車を押して三人の元へ帰って行った。
「……静かだね」
「せやな。まぁ守が制圧したんやろうけど」
「じゃあさっきのプレッシャーは…」
「間違いなく守や。アイツしかあんなことは出けへん」
ガラガラガラ……
車輪の音がする。三人は音のするほうを一心に見つめる。
「帰還ー」
「お帰り、マモル君!」
「なんや、じぶんソファも見つけてきたんかい」
「たまたま奥に行ったらあっただけだ」
「その台車もか?」
「そうだ」
「…まぁエエわ。ほなワシらは車持ってくるから待っときや」
そしてこの場には俺とマナの2人が残された。
「立ちっぱなしもつらいだろうから座ってな」
「でもマモル君は立ってるんでしょ?私だけなんて悪いよ…」
「俺は見張り役だからすぐ動けた方がいいんだけど…まぁいいか」
ソファに腰かけ、空いている部分を叩きマナに座ることを促す。マナもそれに応じ、隣にゆっくりと腰かける。
「おっ、そうだ、忘れるとこだった」
髪を留めていたヘアピンを外し、マナに返す。受け取ったマナはそれがまるであるように丁重に扱って財布の中にしまった。
「ん…?財布にしまうのか?」
「う、うん…。だって大切なものなんだもん」
「お守りじゃねえっつーの」
突っ込みがてらマナを小突く。マナは涙目を浮かべながらもどこか嬉しそうだった。
「そういえばこの後買い物に行く予定になってる何買うんだ?」
「お洋服だよ。マモル君もそうじゃないの?」
「俺はどっちかっていうと雑貨かな、服買うって言ってもジャージだし」
「ほんとマモル君は私服いつもジャージだね。マナミちゃんに怒られないの?」
「今朝も怒られたばかりだな。『もっとお洒落に気を使え』だとさ」
「ふふっ、マナミちゃんの言うことももっともだけど、マモル君はマモル君だもんね」
「流石マナ、俺の考えが分かってるな」
「長い付き合いだからね。……ねぇ、マモル君」
「私、マモル君のことが・・・」
プァップァ――!!!
車のクラクションが鳴り響く。マナは何かを言おうとしていたみたいだが俺は聞き取ることができなかった。
「ほな載せよか」
「あぁ、そうしようか」
三人がかりでソファを持ち上げ、荷台に放り込む。俺とマナは車に乗り込み、ハギとケイは荷台に乗り込んだ。
俺は運転席に座り、シートベルトを締める。次にクラッチを踏んでエンジンをかけ、ギアをローに入れる。アクセルを踏んでエンジンをふかし、半クラッチの状態になるまでクラッチを戻す。
そこから徐々にクラッチから足を離していき、ゆっくりと発進する。マナがいなければもっと乱暴にガッタンゴットンいわせながら出たことだろう。
アクセルを踏み、ある程度速度が出たところでセカンド、サードに切り替える。まだまだ加速してもいいのだが、ここは視界も道も悪いので安全を最優先して30km/hくらいで走る。
「えらいゆっくりやなぁ、学校に戻る頃には日が暮れとるんやないか?」
「公道に出ればもっと飛ばすさ。ここらは出しにくくてな」
「さよか。ほなワシらは寝るから着いたら起こしてや」
荷台の方が静かになる。しかしよくもこんな荒れた道を走ってるのに寝れたことだ。
「マモル君ってなんでもできるんだね」
「でも料理や裁縫はからっきしだからな、何でもできるってわけじゃないぞ」
「でもその辺はマナミちゃんがカバーしてるんでしょ?」
「そうだな…」
「ど、どうしたの?」
「そんなだから基本家事のほとんどはマナミがやってるんだけど、罪悪感がな…」
「気にしなくていいと思うよ?仮に私がそうだとしても全然構わないし」
「そんなもんかねぇ…。まぁアイツが望むなら住み込みのメイドを雇ってみてもいいんだがな」
「メ、メイド!?」
その言葉を聞いた途端、マナが顔を中心にオーバーヒートしていく。『お前がメイドになるか?』なんて冗談でも言えそうにない。
「だっだだだだダメだよマモル君!!メイドさんに変なちょっかいだしちゃダメ!!」
「誰もそんなことしないって。もししたらヤンデレマナミに殺されるわ」
「そうだよね。でもその時は私も黙ってないと思うよ?」
「…お前まで出てくると笑うに笑えないじゃないか」
マナの方を見たがやはり冗談で言った顔ではなかった。メイドの人選で俺の余命が決まりかねないぞ…。
車を走らせること20分、俺達は学校に返ってきた。局室に近いという理由から、俺は車を正門ではなく通用門の近くに停める。
「あれ?ここでいいの?」
「あぁ。おら起きろ、学校に着いたぞ」
寝ている二人を乱暴に起こす。
「ん、着いたか」
「ほな、部屋まで運ぶか。三人ならすぐやろ」
「よっ…と、ここでいいだろ」
ソファは部屋の中央やや後方に配備される。その正面にはテレビが鎮座しており、お笑いや格闘技のビデオを見るのに最適なんだそうだ。
「じゃ、俺らは帰るから」
「おぅ、付き合わせてすまなんだな」
教室を出、学校を後にする。思わぬ寄り道もあったが、予定通り買い物をするため大型モールへを足を運ぶ。
「ちょっと遅くなっちゃったね…。マナミちゃん、お腹空かせてないかな?」
「大丈夫だ。アイツは我慢強いからな」
「そうなの?」
「あぁ。前、色々あって9時過ぎに帰ったんだがそれまで晩飯食べてなかったことがあってな」
「ふ~ん…」
「そういうわけだから、こっち側は何も気にしなくていいぞ。お前の親がなんていうかは知らんが」
「大丈夫だよ、お母さんも遅くなるの見越してたみたいだし」
「そっか。それじゃ、遠慮なくゆっくり買い物するか」
「だね!」
作者「お疲れ様でした、今回更新分は以上となります」
マナミ「お兄ちゃん、メイドさんを雇うって聞いたけどホント?」
守「まだ決めちゃいないけどな」
マナミ「マナミ、メイドさん欲しい!『承知しました』とか言うんでしょ?」
守「いや、流石にそれは…」
マナミ「じゃあじゃあ!メイドロボとかどう?」
守「サイボーグの類ならいいけど…高くつくぞ?」
マッド爺「フェッフェッフェ、ワシの出番のようじゃな!」
守「爺さんの出番はまだまだ先なんで大人しく引っ込んでもらいましょうか」
マッド爺「むっ、何をするか!お前さん、誰のおかげで生きていられると思っとるんじゃ!!」
守「…ふぅ」
マナミ「お兄ちゃん、今の人は…?」
守「んー……知り合いの『その筋じゃちょっと有名な学者』だな」
マナミ「ふ~ん。すごい人なの?」
守「まぁ、すごいっちゃすごいかな。ただちょっとネジが吹っ飛んでるとこがあるけど」
マナミ「ほぇ~」
守「言葉巧みに誘ってきても乗らないようにな。何されるかわかったもんじゃないから」
マナミ「はぁ~い」