探索(2)
その一方――
「んっ……ん…」
「気がついたね、マナミちゃん」
「大丈夫?」
「うん……さっきの写真の人、どこかで会ったことがあるような……っ!」
またマナミが頭を押さえる。あの写真の人物は彼女にとって重要な存在のようだが、どうも本能が拒んでいるようだ。
「マナミちゃん、さっきの写真は見なかったにした方がいいんじゃない?」
「そう…みたいだね。ごめんね中断させちゃって」
「気にしなくていいわ。アタシ達もちょっと休憩できたし」
「それじゃ、第二ラウンドいってみよう!」
「「おー!!」」
「…って、なんでアンタが仕切るのよ」
「そういうのは気にしない、気にしない♪」
「で、戻ってきたわけだけど…」
「この部屋は探しつくしたって感じだよね」
そこで三人は他の部屋を探すことにした。そして部屋には3つの扉があることが分かった。しかし――
ガチャガチャ、ガチャガチャ――
「この扉、鍵がかかってるね」
「師匠なら開けれるんでしょうけど…私には無理ね」
一つ目の扉はカギがかかっていた。そして二つ目は――
『パスワード ヲ ニュウリョク シテ クダサイ』
「パスワード…なんだろ?」
「思いつく限り片っ端からトライしてみるしかないわね」
守やマナミに関係しそうな言葉を打ち込んでいくが、どれも正解ではなく、未だ鋼鉄の扉が三人の行く手を遮っている。
「完全にお手上げね…、もう一つの扉をあたってみましょう」
二つ目の扉はパスワードがわからず先に進めなかった。三つ目はというと――
ガチャ―、ギィィィィ――
「あれ?普通に開いたよ?」
「良かったぁ、折角戻ったのにもう調べるところがないなんてことになったら笑えないもんね」
「じゃ、入るわよ…」
部屋に入り、灯りをつける。
「ここは…!」/「……っ!」
三人が見たのは金属バットに釘バット、メリケンサックに木刀、特殊警棒にスタンガン、腕や脚に付ける装甲のようなもの等々、一言でいうなら『装備品』の数々だった。
サキは見慣れているのかすぐに探索に入ったが、驚いたことにマナミも足がすくんだりすることはなく、サキと一緒に装備を見て回っていた。
「サキちゃんはともかくとして、マナミちゃん、コレを見て何とも思わないの!?」
「ん~…、そうだね。さっき特攻服もあったし、こーゆーのがあっても別に不思議に思わないよ?それに集めるのが趣味かもしれないし」
「意外とタフなんだね…マナミちゃん」
調べに調べた結果、使った痕跡もほとんど見られないことから、これらの装備品は守のコレクションだという見解に到達した。
中には一部妙に歪んでいるものや打ち付けた痕跡のあるバールのようなものもあったがそれらは彼女たちの目には止まらなかったようだ。
(あら、こんなところにいかにも怪しげなファイルが…)
この部屋の捜査も終えて一度マナミの部屋に戻ろうかというその時、サキがファイルの存在に気付いた。もちろん読まないわけがなく――
(こ、これは…!!)
「なになに?何か面白いものでも見つけた?」
サキの様子を見て二人が歩み寄る。しかしサキは
「来ちゃダメ!!!」
と叫び、二人の歩みを止めさせる。そしてファイルを閉じ、元の場所にあったように戻した。それから二人の方へ歩き進む。
「さ、サキちゃん…さっき見てたファイルは…」
「アレはダメよ。アレは私たちが踏み入れてはいけない領域だったわ、とにかくマナミちゃんの部屋に戻りましょ」
「う、うん…。」
(センパイの陰ってのはアタシ達の思っている以上ね…)
マナミの部屋に戻る道中、さっきのファイルの中身を知ってしまったサキは誰が見てもわかるほどに青ざめていて、部屋に戻ってもすぐにトイレと称して部屋を出て行ってしまった。
――――――――――――出発前―――――――――――
「もしマナミちゃんに異変が起こったらコレを飲ませなさい」
師匠から錠剤の入ったケースを渡される。
「これは…?」
「いわゆる精神安定剤よ、一粒で十分効果はあるはずだから」
――――――――――――――――――――――――――――――
「うぇっ…。師匠…、師匠からもらった薬を飲むのはマナミちゃんじゃなくてアタシの方でした…」
錠剤を飲むとさっきまで青ざめていた顔が赤みを帯び始め、一分もすればすっかりいつもの顔色に戻っていた。
サキが部屋に戻ろうとすると、逆に二人が部屋から出てきた。
「あら、どうしたの?」
「そろそろ何か食べない?もう一時過ぎだし」
「え、えぇ、構わないわよ」
(あんなものを見た後で食べられるかしら…)
守「お疲れ様でした。次回の更新をご期待ください」
オニさん「サキがかなりダメージを受けていたみたいだが、何を見たんだ?」
守「アレは……いわゆる『グロ画像』ですかね」
綾「何、そういう趣味があるの?」
守「ありませんよ。これは親父の教育の一環だったんです」
オニさん「お父上の?差支えないのなら詳しく聞かせてほしいな」
守「黒武者家の男子たるもの、死体や凄惨な光景ごときで動揺するべからず、ということです」
綾「なんかやりすぎじゃない?いくら家訓だからとはいえ…」
守「そうですね。でもご先祖様の頃は試し切りや斬首の現場に立ち会わせてたそうですよ」
オニさん「だとすると、私と君のご先祖様は…」
守「もしかしたら、見かけたことくらいはあったかもしれないですね」