マナミとデート(2)
「ねぇお兄ちゃん、プリ撮ろ?」
どうやらプリント倶楽部のコーナーに目が行ったらしい。
写真とかに姿を残すのは本当は嫌なんだが他ならぬマナミの頼み、今回は特別に撮ることにした。
お金を入れると機械のアナウンスが入る。そのアナウンスとマナミによると、写真は何枚かとるらしい。
最初の一枚は普通に撮った。次は友達みたいにマナミと肩を組んで撮った。
他にもダンスのペアみたいにしたり、変顔をしてみたりいろいろなバリエーションで撮影した。
「お兄ちゃん、次で最後だよ」
「ん、もう終わりか。じゃあ最後は…」
ひょいっとマナミをお姫様抱っこの形で抱き上げる。
「えっ!?ちょ、ちょっと、お兄ちゃん!?」
「どうした?ちゃんとカメラの方見てないとダメだぞ」
「~~っ///」
「次は撮ったプリに書き込んでくの」
ペンをつかってモニタ上の画像に好き放題にかくそうだが、何を書いたらいいのかわからない。そこでとりあえず自分のサインを書いてみた。
「サインとか、お兄ちゃんカッコいい!」
マナミも自分のサインがあるらしく、俺のサインの近くに自分のを書いた。
そのあとはヒゲを書いたり、吹き出しを入れたりいろいろした。ほとんどやったのはマナミで俺は見ていただけだが。
そして最後の一枚、お姫様抱っこの奴だ。
マナミはモニタを見ただけで真っ赤になって書き込む余裕はなさそうだ。
そのままでもよかったが一応俺に『執事』と、マナミに『お嬢様』と矢印を引っ張った。
そしてプリクラがでてくる。
携帯に画像を送信することもできるらしいが長くかかりそうなので俺はしなかった。マナミはみんなに送るとか言って携帯に転送していた。
そのあとはホッケーで対戦した。結果は2勝2敗でマナミは勝ち越せず悔しそうだった。
二人で協力してガンシューティングもやった。クリアしたものの実戦とリンクしてしまい、時々変な動きしてたとマナミに言われてしまった。
「お兄ちゃん、次はあのUFOキャッチャーやろう!」
「まかせとけ、景品をかっさらってやる・・・と思ったが、もう100円玉がないな」
「あっちに両替機があるよ」
「じゃあちょっと崩してくるからここで待ってろよ」
「は~い」
ヴィィィィ…ジャラジャラジャラ
先を見越して1000円札を2枚ほど投入し、20枚の100円玉が取り出し口に吐き出される。
小銭を回収しようと手を伸ばしたその時――腕を掴まれた。
掴んだ腕の方を見ると『風紀委員』と書かれた腕章が目に付いた。
「なんだ、風紀委員か。さっき通路を見たときにはいなかったはずだが」
「隠れてたんですよ。『ゲーセンなら一度は両替機に行くはずだからそこを狙え』とユキさんの指示がりまして」
「そしたら見事に俺がかかったってわけか」
「はい。ちなみにユキさんには既に連絡をしましたからもう来ると思いますよ」
「…それマジ?」
「マジです」
「じゃあ長居は無用!」
掴まれていない方の手で手刀を振り下ろし、自由になる。急いでその場を離れ、マナミの元へ走る。
「ど、どうしたのお兄ちゃん!?」
「すまん、風紀委員に見つかっちまった。逃げるぞ!」
「う、うん!」
階段を駆け降り出口へまっすぐ向かう。自動ドアを超えたその先には――
「いらっしゃいませー♪」
ユキちゃんがいた、やはり先を越されていた。
「あちゃー…。何とか間に合うと思ったんだがな」
「ついに年貢の納め時が来たわね守、大人しくお縄を頂戴しなさい!!」
「却下」
そう言ってマナミよりも2,3歩前に出る。
「相変わらず強気ね。でもこれを見てもそう言えるかしら?」
ユキちゃんが指を鳴らすと物陰から風紀委員の腕章をつけた生徒が姿を現す。困ったことに何人かはトンファーやらさすまたやら武装していた。
「これはまた大層なお迎えだな」
「当然のことよ。なんたって守が相手だもの」
「ホントその勘と手回しの良さはオヤジさん譲りだな。元気にしてるか?」
彼女の父親は県警のトップで現役の頃は毎年のように表彰され、紙面にもよく名を載せていたらしい。
「パパは元気よ。それよりも少しは今の状況を考えたらどうなの?」
風紀委員の平どもが身構える。ユキちゃんの合図ひとつで一斉に襲い掛かってくることだろう。
「いつもよりちょっとばかし多いだけだろ?」
「妹さんがいるでしょ。いくら守といえど妹さんを守りながらこれだけの人数を相手にできるかしら?」
「…待て。”協定”を忘れてないか?」
俺と風紀委員の間には協定が結ばれている。
一、俺相手には罪状・抵抗の如何に関わらず武器を使用してもよい
一、俺を捕まえるために罪のないマナミを人質にしてはならない
一、俺を捕まえるのも基本は現行犯のみとする
「わかってるわよ。でもそれは『罪のない』妹さんでしょ?」
「ちっ…」
「今回は妹さんも遊戯施設の出入りの罪を犯しているのよ、だから人質にしても問題はないわ」
「さすが、粗探しも上手なこった」
「ユキさん、恐縮ながら意見があります」
「何かしら」
「今回の場合、妹の捕縛の際にも武器を使用すべきです」
「何だと?キサマ…」
俺は露骨に不快感を示す。
「まあ待ちなさい。彼の意見を聞いてみましょう」
と、ユキちゃんは俺を制して提案者に話を続けさせる。
「先ほどユキさんが仰った通り、私たちは彼の妹を人質にとることができますが、彼が阻もうとするのは目に見えています。
そして彼相手には武器を使って取り押さえることには同意が得られています。」
「成程。武器の使用が許可されている守が相手になるのがわかっているのに、素手で立ち向かうのは余りに無謀、というところかしら」
「はい」
「じゃあ聞くけど、もし守が武器を使った私たちの攻めを防ぎきれなかったらどうなるかしら」
「妹に当たる…かもしれません」
「そうね。それでもし妹さんに傷跡をつけてしまったらどうするの?」
「・・・・・・。」
「それに顔に当たってごらんなさい、女性にとって顔の傷は一生の傷なのよ!!」
提案した者は言葉を失った。さらにそこへ俺が追い打ちをかける。
「わかったならさっさとさっきの発言を撤回しろ、さもなくばキサマを病院送りにする」
「で、できるものならやってみろ!そうすれば停学は確実、ともすれば退学だぞ!?」
「それがどうした」
「た、退学だぞ!退学が怖くないのか!?」
「だから、それがどうしたんだと言ってるんだ。別に俺が死ぬわけではない、ならば退学なぞお前のような輩からマナミを守れるための代償と思えば十分安い!!」
近づき、肉薄する。中高の6年間一緒だったユキちゃんにはこれが冗談や脅しではないことはわかりきっていた。
「その辺までにしておいてちょうだい。これは教育が不十分だった私に責任があるわ、ごめんなさい」
割って入り、頭を下げる。
「ゆ、ユキさん、そんなことしなくても…」
「今この場を持ってあなたを風紀委員から除名します。早くどこかに行きなさい」
「ま、待ってください!僕はただ…」
「失せろ!!」/「消えなさい!!」
そして逃げる様に去って行った。
「お兄ちゃん…」
マナミが心配そうな目で俺を見つめる。
「心配するな。ちょっと害虫を駆除しただけだ」
どうもさっきの一言が効いたらしく、ちょっと怯えているようだった。
そこで、マナミの胸に手をやった。
「ちょ、お兄ちゃん!?///」
長いことやってると怖いので手を放す。
「お兄ちゃん、スケベ!!」
「そう怒るなよ。おかげで俺もお前もいつもの調子に戻れたんだから」
少しの空白があってマナミが「あっ」と反応する。これでこっちは大丈夫だろう。
「そういうことは家でやってくれない?」
「すまんな、とりあえずいろいろあったから今回は見逃してくんない?」
「それとこれとは別よ」
「ちぇっ、ケチだな。…じゃあマナミ、逃げるぞ」
「どうやって?」
「こんなこともあろうかと、準備は万端なのさ」
足元で煙幕弾を炸裂させる。あたり一帯は煙に包まれ、俺も含めて全員が視界不良になった。
「ゴホッ、ゴホッ…っ総員!近くの者と手を組んで脱出できるような隙間を作らないで!!」
さすがユキちゃん。こういう事態も予測して取るべき対応ができている。でも残念ながらそれじゃダメなんだな。
俺は再度マナミをお姫様抱っこし、縁やわずかな隙間を利用してゲーセンの建物の屋根の部分まで登り上がる。
そして煙幕の中でも俺を逃すまいと奮闘するユキちゃんたちを尻目にその場を後にした。
オニさん「ずいぶんと物騒なものを持ち歩いてるのね」
守「備えあれば憂いなし、ですから」
オニさん「その様子だと学校生活もなかなかスリリングじゃない?」
守「まぁそうですね。でも遠野先生の比じゃないですよ」
オニさん「彼は通勤してる車の中に銃火器を仕込んでるからねぇ」
守「オニさんも知ってましたか。でもそれだけじゃないですよ」
オニさん「というと?」
守「先生の持ってる腕時計やペン、その他諸々には麻酔銃の機能を兼ねてるものがあるらしいですよ」
オニさん「へぇ…。やっぱり見ればわかるものなの?」
守「どうでしょうね。あくまでも『らしい』の話ですから」
オニさん「そうね。でもそれなら何かソースがあるんじゃないの?」
守「ありますよ。いつもうるさい生徒が先生の授業に限って寝ていたりするみたいですね。俺もあの授業だけは妙に眠くなりますし」
遠野「そんな調子じゃ留年だよ?」
守「縁起でもないこと言わないで下さいよ…って、遠野先生!」
オニさん「噂をすれば、というやつね。で、噂は本当なの?」
遠野「半分本当、半分嘘、ってとこだね」