身近な同業者(1)
――四日後・事務所――
いつものようにまずはおやっさんと面会する。
「それで、仕事とは?」
「今回の目的は『とある組織の壊滅』だ。…それと、今回は二人で任務にあたってもらう」
「まさか、綾さんが?」
「いや、彼女ではない。もう一人はすでに現地で待っているそうだ」
「じゃ、俺も行きましょうかね。でも名前くらい教えてくれていいんじゃないですか?」
「おお、そうだったな。彼は私たちの世界では『無限射程』と呼ばれている」
「わかりました、じゃあ行ってきます」
外に出て、現地へと向かう。
――30分後
現地に到着した俺はさっそく相棒となる人物を探した。そしてそれとおぼしき人を見つけた。
「遅くなりました、鳳です」
「お、来たね。僕が『無限射程』、今日はよろ…」
握手をしようと振り返ったその瞬間、二人の動きが止まる。
「先生…!」/「守君…!」
「まさかこんな巡り合わせがあるとは、運命とはかくも奇異なものなんですね」
「全くだよ。でも君が相棒だっていうなら心配はなさそうだね」
「それは僕も同じです。…僕がこういうことをしてるのにちっとも驚きませんね」
「名簿で名字を見たときからもしや、って思ってたからね」
「さすがです。通り名からして、銃がご専門ですか?」
「そうだね。白兵戦もできなくはないけど君には劣ると思うよ。…ところで、こっちでもそういう喋り方なのかい?」
「いえ、違います」
「そうだよね。じゃあいつものようにしてくれないかな、それと『先生』って呼ぶのは…」
「じゃあ『ハルさん』で」
「…まあいっか。それじゃ、行こうか」
「行きますか」
「んじゃ、景気づけに…」
ハルさんはどこからかRPGを取り出して構える。
「バックブラストで黒コゲにならないように離れてて」
爆音とともに弾頭が射出され、二階の部屋で爆発が起こる。すぐさま屋敷中の明かりが灯り、戦闘員がわらわらと出てくる。
「それじゃ、おやっさんからもらった刀のデビュー戦といきますか!」
戦闘員の集団に単騎で突撃する。
俺は飛び上がり、試し斬りと言わんばかりに一人を頭から刃を振り下ろす。
すると刃は見事に相手の体を真っ二つに切り裂いた。切れ味は申し分なさそうだ。
裂けた体の間を通って前に進む。次は前と左右の三方向から襲いかかってきた。
まずは腕を伸ばし前方の戦闘員の腹を突き通す。そしてすぐさま刀を持ち替え、左へと薙ぎそのまま左方の戦闘員を胴を切断する。
次に左足を軸にして右足で地面を蹴り回転し、相手の攻撃をかわし股下から切り上げる。
再度前を向くと次は正面から一人向かってくるだけだった。
しかしそれは誤りであることが距離を縮めることでわかった。
後ろにも戦闘員がいる!これはいわゆるジェット・ストリーム・アタックだ!
そこで俺は最前列の奴を後ろに吹き飛ばすことで隊列を乱そうと前進しようとしたその時――
「伏せろ!」
俺は聞こえたとおりに地面に伏せた。次の瞬間には戦闘員三人とも上半身が吹き飛んでいた。
「避けれたということはこの通信が聞こえてるんだね」
「俺に通信システムが埋め込まれてること、知ってたんですか」
「オヤジさんに教えてもらってね」
「なるほど。それにしてもアンチマテリアルとは随分と物騒なものを…」
「でも役に立ったでしょ?さすがに連射はできないけどね」
「セミオートならある程度できると聞きましたけど」
「でも連射なんかしてどうするんだい?戦車の装甲に風穴開けるわけじゃあるまいし」
「職業柄、戦車を相手にすることもあるかもしれませんよ?」
会話をしながらも戦闘員を切り伏せ撃ち抜き着実に建物へと近づいていく。
「入口がなさそうだね。開けてあげるからまた離れててよ」
「入口ならありますよ」
俺は一度刀を鞘に戻し、近くにいた戦闘員を踏み台にして飛び上がり、二階に空いた大穴に手をかけた。
「驚いたなあ、すごい身体能力だね。じゃあ僕は一階から行くから」
「わかりました。また中で合流しましょう」
二階の部屋へと侵入した俺はさっそく戦闘員に囲まれていた。
「これはこれは、大層なお出迎えで」
俺は刀と鞘をそれぞれの手に持ち、二刀流の構えをとる。
戦闘員たちとのにらみ合いが続く。先に動いたのは俺で、鞘をシャンデリアに向かって投げる。
シャンデリアは地面に落下し、室内も闇に包まれた。
廊下に続くドアが開き、室内に光が差す。その光が映し出したのは一つの立像と多数の肉塊だった。
俺は投げた鞘を拾い、その部屋を後にした。
身近な同業者・・・それは遠野先生だった!
表パートではまだ出番はないですが、以後ちょいちょい出す予定です。
次回は後編の『身近な同業者(2)』に続きます
このあとがきの部分が寂しいので次回からはキャラクタ達を登場させたいと思っています。