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義妹記  作者: 白鳳
義妹編
13/59

露店


やっと実家から帰ってきました。実家でも書いてはいましたがストックはあまりないので特別ペースアップしたりはしません。






「…ぶえっくしょい!!」


とのっけからドでかいくしゃみ。


「大丈夫?お兄ちゃん」


マナミがティッシュ箱を持ってきて俺の体調を気遣う。


「あぁ…大丈夫大丈夫。きっと誰かが噂してるんだろうよ」


とマナミからもらったティッシュで鼻をかみながら言う。


「ならいいけど、夏風邪はかかると大変なんだから気を付けてね?」


「わかってるって。そうだ、屋上のことなんだけど…」


「あぅ…」


マナミの反応がよろしくない。何か思い当たる節があるようだ。


「もしかして…今朝サキ先輩に呼び止められてたのって、そのせい?」


「いんや、あれは別件。だいたい、それぐらいの内容だったらお前も一緒だって」


そういうとマナミはさっきまでの明るさを取り戻した。


「そっか。じゃあなに?」


「あのメンバーに俺らのメンバー、具体的には律っちゃん・マナ・あと一応陸もだな、こいつらも混ぜてもらえないか?」


「マナミ的にはおっけーだけど、みんなに聞いてみないとね」


そう言ってメールを作成しはじめる。意外とあのあつまりは民主的だなとひとり感心した。


10分もすれば皆から返事が返ってきて、満場一致でОKだそうだ。
















「ってなわけで、今日から晴れて全員が屋上で昼飯を食べれるぞ」


「なにが『ってなわけで』だよ、決まった段階で教えてよ」


と陸が不満を漏らす。


「いやーすまん、忘れてた。昨日は露店の事でいっぱいいっぱいでな」



「まぁいいわ。とにかく屋上に行きましょ?」



屋上についてみると、例のごとく各個人の席は決められていた。


律っちゃんはサキちゃんの隣で、マナは俺の隣、陸は…律っちゃんとマナの間でその間に一人ずつマナミのクラスメイトが配置されている。


なんか、狙って配置したよな? って言いたくなるような配座だ。



「じゃあお先に!」


席に着くや否や俺は弁当を急いで食べる。


半分くらい食べたところで食事を切り上げ、露店の支払所を設立する。特別指示は出していなかったが昼食スペースは支払所よりも後ろになっていた。


あとは開店するだけになったことを確認して


「それじゃマナミ、屋上の出入り口のドアを開けてきてくれ」


「んー」


「いいか、開けたらすぐに戻ってくるんだぞ!」


「たんじょーぶ、だいじょーぶ。」



――ギイィィィ



俺の注意もむなしくマナミは開けた直後にこちらへ戻って来なかった。そのため・・・



「開店だな?行くぞ!!」



わーーーっ、と人が津波のように押し寄せる。マナミはそれに呑まれ、激流の木片状態だった。


「だから言ったのに・・・マナ、レジ頼む!」


「え!?ちょっと、マモル君!?」


俺はマナにレジを任せ、マナミを救出しに人ごみの中を突き進む。


「おにーーちゃーーん!」


声の方に目をやると、マナミの手が流されていくのが見えた。それを頼りにさらにかきわけて進む。


「あっ、お兄ちゃん!」


「だから言ったろ。帰るぞ」


マナミを抱きかかえ、出入り口の建物向けて飛び上がる。その後、建物を蹴りさっきよりも強く反対側に飛ぶ。


――ダン!


レジの向こう側まで飛び、両足で力強く着地を決める。


「王子様とお姫様がご帰還なさいました~!」


マナミのクラスメイトたちは悠長にも俺達をからかっていたが俺の方はというと・・・


「マモル君、マナミちゃんを救出したんだったら早くこっちを手伝ってよ~!!」


「露店の様子もいい記事のネタになるわ~!」


「Zzz…」


マナは客の対応にてんてこまいしていた。律っちゃんは記事の材料集めに心血を注いでいた。陸に至っては寝てた。


「はいはい、今いきますよっと」


マナミをおろし、マナのヘルプに向かう。行きがけの駄賃に軽く陸を蹴っておいた。


「待たせたな、ありがとよ」とねぎらい、隣に座る。


「っしゃあ!お前ら3列に並べ、まとめてレジやってやらあ!」


そういうと彼らは軍隊並みの乱れのない動きで隊列を変更し、


「これください!」/「……これ」/「いくらですか?」 と一気に商品を差し出す。


「それは300円、そいつは150円、それは500円だな」


金額を言い、お金を受け取り、お釣りが必要な人にはお釣りを渡す。あとはこれの繰り返しだ。


マナの方を見ると口をぽかんとあけていた。



「ねーおにーちゃん、このカバーかけてあるの何?」


「それは今日の目玉商品だ。絶対にカバーをのけちゃだめだぞ」


「はーい。・・・・・・・・(ドキドキ)」


「こっそり見ようとするなよ」


「ギクッ!」


「油断も隙もありゃしない。…おい待て!小銭ちょろまかしてんじゃねぇ!10円足りんぞ!」






「先輩スゴイよねー。レジで三人を同時に相手にしながらマナミちゃんとも会話してるし」


「しかもちゃんとお金の計算とかもしてるしねー」


「実はセンパイの脳ってコンピュータ並の処理能力なんじゃない?」


「え!?先輩ってサイボーグだったの?」


「いや、誰もそんなこと言ってないから」








「もうすぐ完売なんじゃない?」


「陳列してあるやつは、な」


最初は口を開けていたマナも今では俺の隣に座ってマスコットガールになっている。律っちゃんと陸は相変わらずのようだ。









「守先輩とマナ先輩ってなんかいい感じだよねー」


「でも守先輩にはマナミちゃんがいるじゃん、どっちをとるのかな?」


「センパイのことだから『愛と恋は違う』とか言って両方をとるんじゃない?」


「「それありそー」」


「でも、なんでマナ先輩は守先輩が好きなの?マナミちゃんのこともよく知ってるのに」


「「さあ?」」


「ふっふっふ、それについては私が答えましょう!」


「知ってるの?サキちゃん」


「もちのろんよ。なんでも中学校の頃、マナ先輩は守先輩に助けてもらったことがあって、それがきっかけらしいわ」


「「へぇー」」


「それに、あの二人は幼馴染らしいの。フラグがビンビンに立ってるわ!」






「そういやさー、中学校の頃の守先輩ってどうだったんだろね?」


「「あ、それに気になるー」」


「師匠に聞いたんだけど、その辺については全っ然教えてくれないのよねー」


「どうだったの?マナミちゃん」


「え?えーっと…い、今と大して変わってないよ?」


「「ふーん…」」


「じゃあじゃあ、『治安維持局』ってどんな組織なの?」


「あー…あれは…知らない方がいいと思うわよ」


「なんでー?」


「センパイの印象が変わるわよ、マジで」



「人の噂話はその辺にしとけ」


突然お兄ちゃんの声が割って入る。その声は盛り上がっていた状態でもはっきりと聞くことができた。


「お兄ちゃん…怒ってる?」と恐る恐る聞いてみる。


「ちょっとな。人の過去なんて詮索するもんじゃないぞ」


その時のお兄ちゃんはちょっと怖かったけどみんなで謝ったらすぐにいつもの優しいお兄ちゃんに戻った。






「毎度ありー。・・・さて、完売だ!」


「でも結構人が残ってるね」


「そりゃこれからがメインだからな」


そう言ってお兄ちゃんはみんなの前に立った。


「さぁ皆さんお待ちかね!これより気まぐれ露店恒例の『気まぐれオークション』を開催します!」


いぇーーい!!


ものすごい人の声が屋上中に響き渡る。


何が気まぐれなのかサキちゃんに聞いたら、「開催するかどうかも、売るものもすべてセンパイの気まぐれのオークション」らしい。


「それじゃ、本日の商品をお見せしましょう。それじゃ、持ってきてー!」


そう言うと陸先輩がお兄ちゃんの言う『目玉商品』を台車に乗せて運んでいった。


「ほい、ご苦労さん。今回の商品は・・・コイツだぁ!!」


勢いよくカバーを外す。その先には――


「…エアコン?」


「だね。どっからどうみても」


「そう、今回の目玉商品は空調設備(工事込)だ!どこに設置するかは落札した人の自由!」


それを聞いた参加者たちの歓声が耳をつんざく。




「すごい熱狂っぷりだねー」


「ホントすごいねー・・・ん?アレ美穂じゃない?」


「え~?・・・あ、ホントだ。みほりんだ」


「美穂って野球部のマネージャーだったよね。部室にでも置くのかな?」


「たぶんそうじゃない?去年も熱中症で何人か病院送りになってたし」







「それじゃ、1円からスタート!」


「千円!」


「二千円!」


「五千円!」


そしてあっという間に一万円の大台に乗り上げ、さらに高値が提示される。


「二万五千!」


「二万八千!」


「三万!」


このあたりになってくると脱落するものが出始める。


「三万三千!」


「三万七千!」


「…四万!」


さっきに比べるとほんの一万上がったくらいだがほとんどのものは振り落とされ、上げ幅も小刻みになってくる。


「四万二千!」


「四万二千三百!」


「四万二千五百!」


「五万!!」


それを境に場が静まり返る。最後の一声が完全にトドメとなった。



「いませんか?五万以上はいませんか?……ハイ、じゃあ五万円で落札!!」






「ほえ~、五万円で落札だって~」


「一気に飛ばしたわねー。…美穂は残念だったわね」


「みほりんちょっとかわいそうだね…。でもこのお金って部費からだったのかな?」


「たぶん自費よ」


「「マナ先輩!」」


「野球部は毎年部費を限界まで使ってるからこういうことに使うお金はないはずよ」


「ということは美穂は…」


「身銭を切る覚悟だった、というわけよ。そこまで野球部の役に立ちたいと考えてるのね」


「・・・・・・・」


何も言えなかった。その場から帰ろうとするみほりんを見てはなおさらだった。




――階段――


「はぁ…買えなかったかぁ」


「そんなに悲しむことはないぞ」


「え…?」


「野球部のマネの小林美穂ちゃんだろ?空調の件は残念だったな」


「守先輩…。どういうことですか?」


「実は売り物にする予定はなかったんだが扇風機が二台ほどあってな。それをやるよ」


「本当ですか!?い、いくらですか?」


財布を出して現金を出そうとする。俺はその手を抑えて――


「金は要らんよ。その金で氷とか飲み物を買ってやりな。」


「ハ・・・ハイ!ありがとうございます!」


深々と頭を下げる。


うちの学校の野球部はあまり強くないので興味がなかったんだが、今年ばかりは頑張っててもらいたいなと思った。





読んでいただきありがとうございました。



大盛況のうちに幕を閉じた露店、しかし今回は商品数が多いので店じまいにはまだ早い!


次回『露店(夕)・会合』に続きます。



ご意見・ご感想・誤字脱字の指摘等々お待ちしております。

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