発露
「・・・んぱい・・・せんぱい・・・」
誰かが俺を呼んでいる。意識が戻るに連れてはっきりと聞き取れるようになってきた。
「・・・先輩!起きてください!」
「んっ・・・あぁ、大丈夫大丈夫」
とりあえず上半身だけを起こして伸ばしていた足を折りたたんで座ると・・・
「あっ、お兄ちゃん、気がついたんだね」
マナミが目の前にいた。その向こうには正座をしている(恐らくさせられている)サキちゃんがいた。
「お兄ちゃん…見た?見たよね?」
「なっ、何をだ?」
じ~~
言わなくてもわかるでしょと言いたげな目で見てくるが、わからないなとそっぽを向く。
「う…その……マナミの……スカートの中」
やっぱりそうだよな。しかし困ったことになった、こういうときは正直に認めるべきなのか?それともあくまでシラを切ったほうがいいのか?
悩みに悩んだ末に――
「見てない」
後者を選んだ。言ってしまった以上もう後戻りはできない。
「ホントに?」
「本当に」
「じゃあお兄ちゃん、どうだった?」
「赤と白の縞ぱん、そりゃあもぅ抜群に良かったぞ。」
「へぇー」
「あ゛」
(しまった!思わず言ってしまった!)
一瞬にしてすべてが凍りつく。
マモルは あたまが まっしろに なった !! ▽
「お兄ちゃんのえっち!!うそつき!!」
世界の名ストライカーをも凌ぐような強烈な蹴りが放たれる。
丸見えだったがマナミも俺も気にする余地なんてない。
俺は座っていてマナミは立っていたため、マナミの蹴りは俺の喉元を狙っていた。この一撃をまともに受けてはひとたまりもない!
「………!!」
バシッと蹴りを受け止めたのは良かったがいつものクセで威嚇してしまった。さらに悪いことにテンパっていたせいで遠慮は一切できなかった。
「っ!?」
マナミは完全に俺の威嚇に気圧されてしまい床にぺたんと座り込む。他のメンバーは距離が離れていたので威嚇の効果はほとんどなかった。
ただマナミへの影響は深刻で、顔は恐怖で青ざめ小刻みに震えていた。
「あ…わ、悪い。クセで、つい…」
平静を取り戻したものの、苦しい言い訳しか出てこない。
「お兄ちゃん、怖い・・・」
さて、どうしたものか…
「マナミちゃん、先輩も悪気があってやったわけじゃないんだよ。さっきのはちょっとした事故なんだよ、だから忘れよ。ね?」
やはりこういうときにクラスメイトやダチは頼りになる存在だな。
「ありがと。…そうだよね、お兄ちゃんはいっつもマナミを守ってくれてるもんね。このくらいはできないとダメだよね。」
驚くべきことに、さっきまでの状態からは一転、いつものマナミに戻る。
気がつけば昼休みも残り数分、話も一段落したところで今日はここらでお開きにして片づけをする。
そんな時、俺の携帯が振動し着信を知らせる。
発信者は…おやっさん!?
「はい、もしもし」
「おぉ、繋がったか。私だ」
「どうしたんですか?おやっさん こんな真昼間に」
「君に渡したいものがあってな。学校帰りにでもよってくれないか」
「学校帰りですか、いつもの時間じゃダメなんですか?」
俺個人としては、昨日の今日だから学校帰りのほうがありがたいが
「夜からは総会があってな。他にも用があってそれから2・3日は留守にする予定だ」
「わかりました。じゃあ夕方に」
「…というわけで、今日は一緒に帰れそうにない」
マナミは「はーい」と返事をして、クラスメイト達と帰っていく。一時はどうなるかと思ったが、何事もなくてなによりだ。
-―-―-教室-―-―-
屋上から戻った俺は律っちゃんの所へ向かう。
「仕事を依頼したいんだがいいか?」
「あなたらから仕事?情報操作か何かかしら」
それも頼みたかったが「違う」と否定しさらに「宣伝だ」と続ける。
「あぁ、気まぐれ市をやるのね」と律っちゃんも気付いた様子。
「明日の昼休みに開店する旨を宣伝してくれ。あとは全部そっちにまかせる。頼めるか?」
「おまかせあれ」と畏まる。
「報酬はいつも通り売り上げの1割な」
「わかってるわよ。ところで、何か目玉商品とかないの?ないと広告作りにくいんだけど」
「っと、忘れるとこだったな。今回は『夏の必需品』と『男子の必需品』だ」
律っちゃんはそれだけの情報からそれらが何であるかを推測し、
「今回はすごいもの売るのね。報酬が多くなることを期待してるわよ」と言って手を差し出す。
「それには宣伝を頑張ってもらわないとな」と言って俺も手を伸ばし堅い握手を交わす。
午後の授業が始まる。しかし俺の頭の中はおやっさんが俺に見せたがっている物のことでいっぱいだった。
過去の例からして、今日も手に入れたお宝の自慢と見て間違いないだろうがたいていロクなことにならない。年代物のワインを自慢してきたときなんか未成年の俺に酒を勧めてきたし。
「守、ミョウバンの化学式わかるか?」と教師に指名されたが
「硫酸アルミニウムカリウム12水和物、です」と即答する。
クラスメイトの感嘆の声を他所に考察を再開する。
渡したいものがあるというのは口実で、実は他の用があるとか?『留守の間、東雲支部を頼む』みたいな。
あるいは今後についてか?『高校卒業後も続けるかどうか』とか。
午後の時間のほとんどを費やしたが所詮は考察、行ってみないとわからないという結論に至った。
そして放課後、俺は学校からおやっさんのいる事務所へと舵を取った。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
おやっさんが守るに渡したいものとは?つーかそもそもそのために呼んだのか?
次回、『物憑』に続きます。