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ハズレスキル《物理補助》、気づけば世界最強でした  作者: 松竹 ウメ


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8話 魔物の群れと、力学の連鎖

 二匹目のダイアウルフが俺に向かって跳躍する。

 巨大な牙が月光を反射し、殺意を剥き出しにして迫ってくる。

 俺は地面を蹴り、横に転がる。


「《物理補助》……着地点の反発係数、増加」


 地面との接触面を一瞬だけ「弾力的」にする。

 体が跳ねるように起き上がり、すぐに次の動作に移れる。

 ダイアウルフの爪が、俺がいた場所の土を抉る。


「タクミ、何やってんだ!」


 ガルドが柵を飛び越えて駆けつけてくる。剣を抜き、一匹目のダイアウルフに斬りかかる。

 リーナも続いて現れ、手をかざす。


「《フレアボルト》!」


 掌から火の矢が放たれ、二匹目のダイアウルフに直撃する。

 だが、ダイアウルフは炎を振り払い、怯まない。


「硬いな……魔法耐性があるのか!」


 リーナが舌打ちする。

 ジンが矢を連射するが、急所を外れた矢では致命傷にならない。

 そして――。


「クソッ、まだ来るぞ!」


 ガルドが叫ぶ。

 森の奥から、さらに三匹のダイアウルフが姿を現した。

 合計五匹。


「群れで来るとは聞いてねぇぞ!」


 ガルドが焦りを見せる。

 リーナが冷静に指示を出す。


「ガルド、前衛を頼む。ジン、目を狙え。タクミ、あんたは下がって――」

「いや、戦える」


 俺は短く答えた。


「さっきの石投げみたいな真似ができるなら、手伝え。できないなら邪魔だ」

「……やってみせる」


 俺は周囲を見渡す。

 地面に散らばる石、折れた木の枝、柵の杭。

 武器になるものは何でもある。

 問題は――どう使うかだ。


「《物理補助》……投擲物の軌道、最適化。空気抵抗、最小化」


 俺は石を拾い、一匹目のダイアウルフに向けて投げる。

 石は正確に前脚の関節に命中し、ガルドの剣が入る隙を作る。


「いいぞ!」


 ガルドが深々と剣を突き刺し、一匹目が倒れる。

 だが、残り四匹が一斉に襲いかかってくる。


「散開しろ!」


 リーナの指示で、それぞれが距離を取る。

 ジンが矢を放ち、一匹の動きを牽制する。

 リーナが再び魔法を放つが、ダイアウルフは避ける。

 俺は次の手を考える。

 一匹ずつ倒していては、間に合わない。

 ならば――。


「ガルド、三匹をまとめて引きつけられるか!」

「できるが、理由は!?」

「まとめて動きを止める!」


 ガルドが一瞬躊躇したが、すぐに理解した。


「任せろ!」


 ガルドが大声を上げ、三匹のダイアウルフの注意を引く。

 ダイアウルフたちがガルドに向かって殺到する。

 その瞬間――。


「《物理補助》……地面の摩擦係数、広範囲に低下」


 三匹のダイアウルフが走る地面を、一斉に「氷のように滑りやすく」する。

 ズザザッ!

 三匹が同時にバランスを崩し、折り重なるように倒れ込む。


「今だ、リーナ!」

「分かってる!」


 リーナが両手をかざし、いつもより大きな炎を生成する。


「《クリムゾン・バースト》!」


 紅い炎球が三匹の真ん中に着弾し、爆発する。

 炎が広がり、三匹のダイアウルフが焼かれる。

 悲鳴と共に、三匹が動かなくなる。

 残りは一匹。

 ジンが矢を構え、冷静に狙いを定める。


「……そこだ」


 矢が放たれ、最後のダイアウルフの目に命中する。

 ダイアウルフが倒れ、痙攣した後、完全に動かなくなった。

 静寂が戻る。

 ガルドが荒い息をつきながら、剣を下ろす。


「……助かった。タクミ、お前、本当に記憶喪失か?」

「体が勝手に動いたんだ」


 またしても誤魔化す。

 リーナが俺をじっと見つめる。


「さっきの、地面を滑らせたのは魔法か?」

「……分からない。気づいたらそうなっていた」

「嘘をつくな。あれは明らかに意図的だ」


 リーナの目が鋭い。

 だが、ガルドが間に入る。


「まあまあ、リーナ。詮索は後だ。今は村を守れたことを喜ぼうぜ」


 ジンも頷く。


「ガルドの言う通りだ。それに、タクミが敵じゃないのは確かだろ」


 リーナは不満そうだが、それ以上は追及しなかった。

 村人たちが柵の向こうから駆けつけてくる。


「魔物は倒したのか!?」

「ああ、全部で五匹だ」


 ガルドが答える。

 村人たちが安堵の表情を浮かべる。

 村長も現れ、俺たちに深々と頭を下げた。


「ありがとう。君たちのおかげで、村は救われた」


 その夜、村ではささやかな宴が開かれた。

 俺はガルドたちと共に、焚き火の周りで食事をする。


「タクミ、お前、冒険者にならないか?」


 ガルドが唐突に言う。


「冒険者?」

「ああ。お前の戦い方、独特だが効果的だ。俺たちのパーティーに入らないか?」


 リーナが口を挟む。


「ガルド、早すぎる。まだ信用できるか分からない」

「いいじゃねえか。少なくとも、今日は一緒に戦ったんだ」


 ジンが笑う。


「俺は賛成だ。タクミがいれば、戦術の幅が広がる」


 三人が俺を見る。

 俺は少し考えた後、答えた。


「……考えさせてくれ。まだ、記憶も戻っていないし」

「そうか。まあ、急がないさ」


 ガルドが気さくに笑う。

 焚き火が静かに燃える中、俺は今日の戦闘を振り返る。

 《物理補助》は、単独でも有効だ。

 だが、他者と連携することで、その効果は何倍にも跳ね上がる。

 ガルドの前衛、リーナの火力、ジンの精密射撃。

 そして、俺の《物理補助》による補助。

 もしかしたら――この組み合わせは、悪くないかもしれない。

 星空の下、俺は静かに考え続けた。

お読みいただきありがとうございます。

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