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ハズレスキル《物理補助》、気づけば世界最強でした  作者: 松竹 ウメ


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17話 武器屋の選択と、初めての依頼

 ギルドを出て、俺たちは武器屋へと向かう。


「武器屋はこの先だ」


ガルドが先導する。

十分ほど歩くと、大きな看板が見えてきた。

『鉄槌亭』

店の前には、様々な武器が展示されている。

剣、斧、槍、弓。


「ここが、この街で一番品揃えが良い武器屋だ」


ガルドが扉を開ける。

中に入ると、壁一面に武器が並んでいた。

カウンターの奥には、筋骨隆々とした中年の男性が立っている。


「おう、ガルド。久しぶりだな」


男性が笑顔で迎える。


「よう、ドルフ。今日は新人の装備を見に来た」


ガルドが俺を指差す。

ドルフと呼ばれた男性が、俺をじっと見る。


「新人か。で、何が欲しい? 剣か? 斧か?」

「……ナイフが欲しい」


俺は答える。


「ナイフ?」


ドルフが意外そうな顔をする。


「ああ。俺の戦い方には、ナイフが一番合ってる」


俺は正直に言う。

銃で遠距離から攻撃し、《物理補助》で敵の動きを制御する。

もし接近されたら、小回りの利く武器で対応する。

剣や斧のような大振りな武器は、俺には合わない。


「なるほどな。まあ、武器は使う奴に合ってるのが一番だ」


ドルフが頷く。


「じゃあ、こっちを見てくれ」


ドルフが棚からいくつかのナイフを取り出す。


「これは狩猟用のナイフ。刃渡り二十センチ。頑丈で扱いやすい」

「これは戦闘用のダガー。刃渡り三十センチ。刺突に特化してる」

「これは投擲用のナイフ。軽くてバランスが良い」


俺は一つ一つ手に取ってみる。

重さ、バランス、グリップの感触。

どれも悪くない。

だが――。


「もっと、特殊な素材のナイフはないか? 振動を伝えやすくて、熱にも強いもの」


俺が尋ねる。


「振動? 熱?」


ドルフが首を傾げる。


「ああ。俺のスキルは、接触した物質に振動を送り込んだり、摩擦熱を発生させたりする。だから、振動を効率よく伝えて、なおかつ高温にも耐えられる素材が良い」


ガルドたちも、興味深そうに聞いている。


「振動を伝えて、熱にも強い……そりゃあ、かなり特殊な要求だな」


ドルフが腕を組んで考え込む。


「鉄は振動はそこそこ伝わるが、熱で変形しやすい。鋼は少し良いが、それでも限界がある。普通の金属じゃ、お前の要求には応えられないな」


ドルフが奥の棚から、一本のナイフを取り出す。


「だが――これなら、いけるかもしれない。ミスリル合金製のナイフ」


刃渡り二十五センチほど。

刃は銀色に輝き、柄には黒い革が巻かれている。


「ミスリル?」

「希少金属だ。軽くて丈夫で、魔力の伝導性も高い。そして――振動も良く伝わるし、融点が異常に高い。普通の火魔法程度じゃ溶けない」


俺はナイフを手に取る。

驚くほど軽い。

だが、刃は鋭く、バランスも完璧だ。


「試してみていいか?」


俺が尋ねる。


「ああ、裏に試し切り用の丸太がある」


ドルフが裏口へと案内してくれる。

裏庭には、太い丸太が置かれている。

俺はナイフを丸太に当て、《物理補助》を発動する。


「《物理補助》……ナイフの刃先、振動数増加」


ビリビリと、ナイフが震える。

そして、ゆっくりと丸太に刃を押し当てる。

ギリギリ……。

まるでバターを切るように、ナイフが丸太に沈み込んでいく。


「すげぇ……」


ガルドが呟く。


「振動で木材の繊維を断ち切ってるのか」


リーナが分析する。


「これなら、硬い魔物の皮膚も切れるな」


ジンが感心する。

俺はナイフを引き抜く。

刃には、傷一つない。


「これをもらう」


俺がドルフに言う。


「いい選択だ。ただし、ミスリル製だから高い。金貨二枚だ」

「金貨二枚……」


俺は困る。

そんな金はない。


「俺が出す」


ガルドが金貨を取り出す。


「いや、それは悪い」

「気にするな。昨日、お前に助けられたからな。それに、これから一緒に依頼を受けるんだ。装備がしっかりしてる方が、俺たちも助かる」


ガルドが笑う。


「……ありがとう。必ず返す」


俺は頭を下げる。

ドルフが金貨を受け取り、ナイフと革製の鞘を渡してくれる。


「大事に使ってくれ」


俺はナイフを腰に差す。

銃と、ナイフ。

これで、遠距離も近接戦闘も対応できる。


「よし、装備も揃ったし、依頼を受けに行こう」


ガルドが言う。

俺たちはギルドへと戻る。

ギルドのホールに入ると、掲示板の前に人だかりができている。

冒険者たちが、依頼書を見ている。


「タクミは初めてだから、簡単な依頼がいいな」


ガルドが掲示板を見る。


「これはどうだ? 『薬草採取。森の入口付近で薬草を十株採取。報酬は銀貨十枚』」


簡単そうだ。


「いいんじゃないか?」


ジンが言う。


「でも、つまらなくない?」


リーナが不満そうに言う。


「タクミは初めてなんだから、これくらいでいいだろ」


ガルドが依頼書を受付に持っていく。


「この依頼を受けます」


ミラが依頼書を確認する。


「薬草採取ね。これは簡単だけど、森には魔物もいるから気をつけて」

「分かってる」


ガルドが登録証を見せる。


「それじゃあ、依頼受理。頑張ってね」


ミラが笑顔で送り出す。

俺たちはギルドを出て、森へと向かう。

ゼリーは、相変わらず俺の足元でぷるぷると跳ねている。


「薬草は、緑の葉っぱで白い花が咲いてるやつだ」


ガルドが説明する。


「森の入口付近なら、すぐに見つかるはずだ」


街を出て、森へと入る。

木々が立ち並び、日差しが木漏れ日となって差し込む。


「あった、これだ」


ジンが地面に生えている植物を指差す。

緑の葉っぱに、白い小さな花。


「これを十株、か」


俺たちは薬草を採取し始める。

根ごと引き抜き、袋に入れる。

五分ほどで、十株集まった。


「簡単だったな」


ガルドが笑う。


「これなら、すぐに終わ――」


その時。

ガサガサと、草むらが揺れる音。


「……何かいるぞ」


ジンが弓を構える。

草むらから、飛び出してきたのは――。


「ゴブリン!」


小柄な、緑色の肌をした魔物。

手には粗末な棍棒を持っている。

そして――その数は、五匹。


「チッ、運が悪いな」


ガルドが剣を抜く。


「タクミ、初めての実戦だ。落ち着いて戦え」

「分かった」


俺は銃を抜く。

ゴブリンたちが、雄叫びを上げながら突進してくる。

俺の初めての依頼が――今、始まる。

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