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ハズレスキル《物理補助》、気づけば世界最強でした  作者: 松竹 ウメ


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14話 同行の決断と、草原の脅威

翌朝。

俺は村長の家の前で、ガルドたちと向き合っていた。


「本当に、冒険者にはならないのか?」


ガルドが残念そうに尋ねる。


「ああ。パーティーに正式に加わるのは、まだ早い」


俺は答える。


「でも――街まで、一緒に行かせてもらえないか?」


三人が顔を見合わせる。


「街まで?」

「ああ。この世界のこと、もっと知りたい。街に行けば、情報も集まるだろう」


リーナが腕を組んで考える。


「別に構わないけど……護衛料は出せないわよ?」

「それは分かってる。ただ同行させてもらうだけでいい」


ジンが笑う。


「むしろ、タクミがいてくれた方が心強いくらいだ」


ガルドが頷く。


「よし、じゃあ決まりだ。今日の昼には出発するぞ」


俺は荷物をまとめ、村人たちに別れを告げる。

村長が俺の手を握る。


「短い間だったが、世話になった。リックを助けてくれて、本当にありがとう」



「こちらこそ、世話になりました」


トムとリックも見送りに来てくれた。


「タクミさん、また来てくださいね!」


リックが元気よく手を振る。


「ああ、また」


俺は短く答え、村を後にする。

村の入口で――意外な姿が待っていた。

ぷるん。

あの劣化したスライムが、俺の足元で跳ねている。


「……お前、ついてくるのか?」


スライムがぷるぷると震える。

肯定の意思表示らしい。


「おい、そのスライム……ダンジョンから出てきたのか?」


ガルドが驚く。


「ああ。宝箱の鍵を守っていた番人だ」

「番人が懐くなんて、珍しいな」


リーナが興味深そうにスライムを観察する。


「もう戦う力はなさそうだし……まあ、いいんじゃない?」


ジンが笑う。


「でも、名前くらいつけてやれよ。ずっと『スライム』じゃ呼びづらいだろ」


名前、か。

俺はスライムを見下ろす。

青白く、半透明で、ぷるぷると震えている。


「……ゼリー、でどうだ」


ぷるん!

スライムが嬉しそうに跳ねる。

気に入ったらしい。


「ゼリーか。まあ、見た目通りだな」


ガルドが笑う。

こうして、俺たち四人と一匹は、ルヴァルトの街へと向かう。



森を抜け、開けた草原に出る。

見渡す限りの緑の大地。

遠くには山々が連なり、空は澄み渡っている。


「いい天気だな」


ジンが伸びをする。


「このまま順調にいけば、夕方には街に着くわ」


リーナが地図を確認する。

だが――。


「……待て」


ガルドが急に立ち止まる。


「どうした?」

「何か、嫌な予感がする」


ガルドが剣の柄に手をかける。

その瞬間――。

草原の向こうから、黒い影が現れた。

いや、影ではない。

魔物だ。


「オーク……それも、かなりの数!」


リーナが叫ぶ。

オーク。

豚の頭を持つ、二足歩行の魔物。

体格は人間の一・五倍ほど。手には粗末な斧や棍棒を持っている。

そして――その数は、十匹以上。


「群れで来るとは……厄介だな」


ガルドが剣を抜く。


「タクミ、下がってろ。俺たちが――」

「いや、戦う」


俺は銃を抜く。


「この銃の性能を、試させてもらう」


ガルドが一瞬躊躇するが、すぐに頷く。


「分かった。無茶はするなよ」


オークの群れが、雄叫びを上げながら突進してくる。


「散開! 包囲されるな!」


リーナが指示を出す。

ガルドが前に出て、最初のオークを剣で迎え撃つ。

ジンが弓を構え、矢を放つ。

リーナが魔法を詠唱する。


「《フレアボルト》!」


炎の矢が放たれ、オークに命中する。

だが、オークは怯まない。


「硬い! 魔法耐性があるのか!」


そして――俺は銃を構える。


「これが……銃の本当の使い方だ」


俺は、遠く離れた三匹のオークの足元を狙い、立て続けに撃つ。

パン、パン、パン!

三発の弾丸が、それぞれ別のオークの足元の地面に着弾する。


「《物理補助》……各着弾点を起点に、地面の摩擦係数、最小化」


三箇所の地面が、同時に氷のように滑りやすくなる。

ズザザッ!

三匹のオークが一斉にバランスを崩し、派手に転倒する。


「すげぇ! 一度に三匹も!」


ガルドが驚きながらも、倒れたオークに剣を振り下ろす。


「これなら、近づかなくても効果を発動できる!」


俺は続けて、別のオークたちの足元を狙い撃つ。

パン、パン!

さらに二匹が転倒する。


「タクミ、右側のオークを頼む!」


ジンが叫ぶ。

右側から三匹のオークが、リーナに向かって突進している。

俺は即座に銃口を向け、連続で三発撃つ。

パン、パン、パン!

三匹のオークの足元に着弾。

ズザッ!

三匹とも、リーナの手前で滑って転倒する。


「助かったわ!」


リーナが魔法を放ち、倒れたオークを攻撃する。


「これは……手で触るより、遥かに効率的だな」


俺は銃の利点を実感する。

遠距離から、複数箇所に同時に物理補助を発動できる。

これなら、危険な場所に近づく必要もない。

だが――。


「くっ……数が多すぎる!」


ジンが叫ぶ。

オークは次から次へと襲いかかってくる。

そして――一匹のオークが、ガルドの死角から斧を振り下ろした。


「ガルド!」


リーナが叫ぶ。

ガルドが気づき、剣で受け止めるが――。

ガキィン!

衝撃で、ガルドがよろめく。

その隙に、別のオークが棍棒を振るう。

ドン!

ガルドの肩に直撃する。


「ぐっ……!」


ガルドが膝をつく。


「ガルド!」


俺は咄嗟に、ガルドに迫るオークの進路上の地面を狙って銃を撃つ。

パン!

弾丸が地面に着弾する。


「《物理補助》……着弾点の地面、反発係数増加」


着弾点の地面が、一瞬だけトランポリンのように弾力的になる。

オークが踏み込んだ瞬間――。

ボヨンッ!

地面が跳ね返し、オークの足が予想外の方向に弾かれる。


「うおっ!?」


オークがバランスを崩し、前のめりに倒れる。

ガルドから離れた位置に。


「……こんな使い方もできるのか」


俺は新たな可能性を発見する。


だが――戦況は依然として厳しい。

ジンも、オークの攻撃を避けきれず、腕を負傷している。

リーナは魔法を連発しているが、MPが尽きかけている。


「このままじゃ、全滅する……!」


その時――。

ぷるん!

ゼリーが、俺の足元から飛び出した。


「ゼリー!?」


ゼリーは、オークの足元に飛びつき――。

ぬるり。

オークの足が、ゼリーの体液で滑る。

バタン!

オークが派手に転ぶ。


「……まさか、お前」


ゼリーは、自分の体液を使ってオークを滑らせている。

戦う力はないと思っていたが――サポートはできるのか。


「ゼリー、いいぞ!」


俺はゼリーと連携しながら、遠距離から銃でオークたちの足元を狙い撃つ。

パン、パン、パン!

複数のオークが次々と転倒していく。

そして、最後の一匹。

ガルドが立ち上がり、剣を構える。


「最後は……俺がやる」


負傷しながらも、ガルドは最後のオークに斬りかかる。

ガルドの剣が、オークの首を切り裂く。

オークが倒れ――静寂が戻る。


「……勝った、のか」


ジンが荒い息をつく。


「ああ……何とかな」


リーナが地面に座り込む。

だが――ガルドの傷は深い。

肩から血が流れている。

ジンの腕も、骨が見えそうなほどの傷だ。


「これは……街の治療院じゃないと無理だな」


リーナが冷静に判断する。


「応急処置はできるけど、完治には時間がかかる。早く街に行かないと」


俺も頷く。


「急ごう」


ガルドを支え、俺たちは街への道を急ぐ。

ゼリーは、俺の足元でぷるぷると跳ねながらついてくる。

思わぬ形で、街へ急ぐ理由ができた。

そして――俺は、銃の真価を理解した。

遠距離から、複数箇所に同時に物理補助を発動できる。

この武器は――想像以上に、強力だ。

お読みいただきありがとうございます。

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