表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

逃げ方を忘れたウサギ

作者: 風太郎
掲載日:2026/01/20

秋頃、畑の畝を新しく作るために刈った草を集めようとしたとき


ガサガサ


っと音がしてそちらの方を向いてみると薄茶色の毛玉が上下しながら遠ざかって行くのが見えました。

はじめにウリ坊が思い浮かびましたがそれにしては小さいと感じました。

なんだろうなと思いながら、その毛玉が完全に走り去ったのを確認して作業に取り掛かろうとしたとき、5m程離れた低い草むらに隠れている毛玉に気が付きました。

僕は全身が草に隠れた毛玉にゆっくり近づくとそれは胴が長く頭が胴と同じ角度についていることがわかりました。

もっと近づいてみると身体に対して大きな耳が付いているのが分かり、その毛玉がニホンノウサギであることが分かりました。

珍しかったので保存用に写真を撮ったあと、しばらく近くにいましたが一向に逃げる気配もないため放っておいて作業を続けることにしました。


30分ほど作業し、再び様子を見に戻ってくると全く同じ位置に同じ格好で留まっていました。

僕はこのウサギがなぜこのまま留まっているのか考えました。

考えた結果、3つ仮説が思い浮かびました。


1:何かを食べるため

2:どこか怪我をしているため

3:ストレスに対する対応方法がわからない


1は口元が動いていないことから違うとわかりました。

2は見た目からして出血している箇所は無さそうでしたが、捻挫や骨折の可能性は見た目では排除できませんでした。

3を確かめるためにウサギから正面の30cmほど離れた場所に使っていたアメリカンレーキを落として反応を見ることにしました。


ドスッ


っと落としてみると、全くの無反応でした。そのことから僕はこのウサギはストレスに対する対処ができないためにこの場に留まっているのだと理解しました。

さらに僕は考えました。このウサギは放置するとどうなるだろう、と。

その答えは明白でした。どう考えてもどのみち烏や鳶などの肉食動物に襲われて食べられる運命しかないと思いました。それと同時に僕はペットとしてこのウサギを飼育する余裕はないことを理解しました。このまま逃がす以外に僕に選択肢は残されていませんでした。

しかし、それは同時にこのウサギの死を意味するのと同義でした。


少し考えた結果、このウサギが生き残るほんの僅かな可能性に気が付きました。それは、この場でこのウサギに『逃げる』ことを覚えて貰うことでした。僕は迷いなくそれを実行することにしました。

僕は軽くウサギを持ち上げて、後ろ脚を何度か曲げ伸ばししました。するとそのウサギも自分で脚を動かし始めたのでウサギを放すと他のウサギの走っていった方向に勢いよく走っていきました。


1週間後、澄み渡る秋空の下、その近くの田んぼに行ってみると目新しいウサギの糞がいくつか落ちているのを発見しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ