宇宙工場サブファイロット 02章 データ人工衛星2
「僕? 僕の製造室は、そういうのはなかったな。製造室はまだいいけど、掛け持ちしてた修理室の方が結構忙しくて。あんまり休みはなかったよ。あっても、買い物とかして終わり。」
「買い物ってどんな。」
「服とかかなあ。あと、古いカップとか。オールドものってほどじゃないんだけどね。昔の人が使っていた、感じのいいティーカップを集めてたんだ。誤作動が起こる前は。」
ちなみに、ナットが言っているのは本当はティーカップなどではなく、実はジュースの空き瓶などである。(彼はティーカップだと信じていた。)スペアが笑って、
「ロボットが誤作動起こした後は、一気にコレクションが増えてラッキーだったな。それも、普段お目にかかれないような大統領邸のオールドものが。」
くすくす笑う三人を、パドは黙って眺めていた。ロボット工場の生活がどういうものか漠然と想像はしていたが、どうやらそれは、自分の想像をはるかに越えた世界らしい。しかも、彼らはそれ以外の生活を全く知らずに過ごしている。ややあって、パドはゆっくり尋ねた。
「その大統領っていうのは、ロボット工場で働いてるのかね?」
「まさか! 大統領は工場の所属じゃないよ。管理エリアは工場エリアとは違うから。管理エリアはステーションの上部にあって、普通は入れないんだ。特別なチューブを通っていかないと行けないから。」
「そうそう。それで管理エリアの中心に大統領邸があって、大統領はそこで働いてるのさ。」
「何をして。」
ナットとスペアは言葉につまった。大統領の仕事の内容など、自分たちがよく知るはずもないではないか。
すると、ちくわを食べ終わり、別のテーブルに置かれていた料理を物色していたボルトが、ぶっきらぼうに口を開いた。
「『大統領は、他のステーションや惑星と連絡をとって、ロボットの受注と発注を行います。新しいロボットの生産プロジェクトを立ち上げ、それを工場に割り振ります。側近たちが、大統領の仕事を助けます。』」
スペアが彼女を振り返って、
「ワーク暗唱13の3か。忘れてた。」
「なつかしいね。昔よくやらされたっけ。そうそう、パド、大統領はロボットがうまく宇宙に出回るよういろいろ働いているんだよ。」
「殺人ロボットをな。」
思わず吐き捨てるように言ってしまってから、はっと表情を凍らせた三人に気づき、パドはあわてて言葉をつなげた。
「いや、少なくとも俺の所に来たのはそうだって意味だよ。他に、戦闘ロボット以外に役に立つロボットも造ってたかもしらんし、俺には分からんよ。しかし・・・、そうだな、ずいぶんお前たちのステーションは、変わってるな。少なくとも、そうだな、他じゃちくわにチョコソースなんて掛かっているのにはお目にかかれないね。珍品ものだよ、これは。ところでボルト、お前の食ってるそれはなんだい。」
「何だこれは、スペア。」
「ぼたむおち。」
「ぼたむおち?」
「古典料理の一つさ。こめを使った代表的な料理なんだ。」
スペアが胸ポケットから、愛用のデータブックを取り出して開いてみせる。パドがのぞきこんで、
「これはぼたもちだろ。」
「ぼたもちって読むのか。」
「それがぼたもちだとしたらね・・・。九割方あんこじゃないか。米はどこだい。このデータブックには分量は載ってないのか? それにお前さんの食ってるそれ、よその五倍の大きさはあるぜ。ついでに言うと、ケーキみたいに切り分けて食うもんとも違うんだが。」
「そうなの? 食べづらそうだと思って、僕がさっき切っといたんだよ。ところでケーキって何。」
「うーん。」
パドは、彼らとの会話に少し疲れを感じ始めていた。スペアがすぐにデータブックを操作する。
「あったぞ、これじゃないか? 『甘くておいしい、いちごケーキ。』 甘いのか。よし、今度はこれを作ってみよう。夕食はこれで決まりな。」
パドは頭を抱え込んだ。




