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宇宙工場サブファイロット 01章 謎の宇宙船7

 結局、パドは二人と一緒に曳航船に乗り移ってきた。彼らが操縦室に入ると、ボルトが「遅かったな。」と椅子から身を乗り出して振り向く。知らない男が一緒だったので、じろっと相手を見あげたが、

「あんたの船、エンジンがいかれてるよ。」

といきなり言った。


「ずいぶん酷使したんだろ。たぶんYM201パーツが焼き切れてる振動音だ。このまま行ったらあと30タイムぐらいで爆発。」

 天気の話でもするように、淡々とした口調で続ける。お互いの船をつないでいた、宇宙ワイヤーからの振動音で彼女はそれを知ったのだが、パドが答えなかったのは、あっけにとられていたからだった。話ぶりもさることながら、相手の腕に巻き付いているものが彼の目を釘付けにしていたのである。

「その・・・、なんだその腕の。」

「ヘビ。」

 つまらなさそうにボルトは答えたが、スペアとナットが席につくと、彼女はわずかに顔をしかめた。スペアが彼女の視線に気がつき、

「パドのおっさんだ。」

と短く紹介する。ボルトはうなだれたままのナットに目を移し、それからパドに目を向けた。


「爆発船に乗ってるような男は、子供をいじめて楽しむのか?」

 珍しく怒りの口調で言うと、

「別に俺はいじめちゃいねえよ。ウイルスだって置いてきたしな。」

 パドはおどけるように、両手を広げて答えた。事の次第をボルトがすっかり聞き出すまで、長く時間はかからなかった。ボルトはしばらく黙っていたが、ごく低い声で、

「あんたの船に衝突しそうになったことは謝れても、あんたの仲間を皆殺しにしたロボットを造ったことは謝りきれない。」

と、立ち上がると深く頭を下げた。それを見て、スペアもナットも立ち上がり、深く頭を下げる。パドはあわてて手を振った。

「おいおい、よせって。お前たちだって、結果がどうなるか分かってロボット造りに手を貸してた訳じゃないんだろ。」

 ボルトが顔をそむけた。


「それを考えたのは、誤作動が起こってからだ。」

「そう暗くなるなって。どのみち、俺が復讐したかった奴らは、お前さんたちのようなガキじゃあねえよ。」

「おかしなおっさんだな。あんた、女子供も殺されてんだろ。私たちだって復讐の範囲だろうが。」

「――そう思っていたがね。実際、面と向かったら、できるもんでもないようだな。それに・・・、俺の船のエンジンは、確かにずっとやばいんだ。お前たちのステーションで、修理させてもらえると助かるんだが。」

「いいのか? おっさんの仇の工場ステーションだぞ? ロボットだってたくさんいるんだ。」

 スペアが尋ねる。パドはぼりぼりと頭をかいて、

「ま、そのへんはぼちぼち考えるさ。お前たちの仲間が見つかって帰ってでも来たらな。その前に、よかったら船を直したい。」

「分かった。じゃあ、牽引ビームを出しておっさんの船を引いていく。」


「・・・本当にこの船はよく出来てるな。中も素晴らしいじゃねえか。さすが、お前たちの宇宙ステーションはいいものを造るねえ。」

 操縦室をぐるっと見回して、素直に感心して言うパドに、

「スペアが設計したんだよ、この船。」ナットが小さな声で告げた。

「なんだって?」

「ステーションにあった船は、ほとんど人間をつめて出てっちゃったから。」

「呆れたね。末恐ろしいガキどもだ。」

「ガキじゃないったら。」

 三人が思わず声を揃えて言う。彼らは顔を見合わせて、やっと少し笑った。パドも安心したように、親しげに操縦席に近寄り、中央のスペアの操縦席に手をかけると、

「ところで・・・。俺の船をひきずっていくのに、さっきみたいな乱暴な操縦はちと困るね。俺に操縦を任せてみる気はないかい?」

「おっさん操縦できるのかよ。」

「言ってくれるねえ。お前の一千倍は軽く飛んでるよ。」

 パドは軽くウィンクしてみせた。


「そうじゃなくて、この手の船をさ。おっさんの旧式シップとは全然違うんだけど。」

「ほんとに言ってくれるなあ。任せとけって。」

 彼はスペアと交代して、操縦席に座った。スペアは後ろの補助椅子を出して座る。パドの隣のナットが、そっと顔を近づけて、

「パドが一緒に来るのはいいけど、僕らのステーションを全滅させたりしない?」

と、小声で尋ねた。

「しないしない。」

 安心させるようにパドが笑って答える。反対側の席のボルトは、独り言のように、

「離陸より着陸の方が難しいんだろ。スペアの操縦でどっかんと着陸しても、あるいは全滅だったかもな。ああよかった。まともな操縦者が来てくれて。」

 それを聞いたパドは大声で笑った。そして、慣れた動作でベルトを締め、操作パネルを叩いて操縦桿を引くと、進路を宇宙ステーションに向けた。


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