宇宙工場サブファイロット 01章 謎の宇宙船4
戦闘ロボットや、作業ロボットのリーダーたちを集めた定例のステーション会議の後で、三人はいよいよ曳航船に乗り込んだ。三人の留守中、ステーションはリーダー・ロボットのまとめ役であるA3が預かることになり、すみずみまで細かく管理する手筈が整えられた。
この新しい曳航船には、ロボット間通信と同様の通信システムが搭載されており、近距離であれば、ステーションのロボットとコンタクトできるようになっている。山ほどの乾燥食料(念のため)と、冷凍食料などもピクニック気分で大いに詰め込み、曳航船はロボット達の補助によって、順調に宇宙へと飛び出した。
「――近くには船はいないな。」
しばらく航行したところで、操縦席のスペアがつぶやく。右隣の副操縦席にはナットが、同じく左の席にはボルトが座っていた。
広々とした操縦室は、時折青い光が壁のラインを走り、壁のいくつかのパネルが小さな音を立てるほかは、いたって静かだった。三人の正面のメインモニターには、黒々と宇宙空間が広がって映っている。
座り心地のいい副操縦席の椅子に深々と身を沈めたナットは、うっとりした目でぼんやりと答えた。
「いいよー、それに、近くにいたらもう今頃ステーションに戻ってきてるもの。近くにはいないと思うよ。それより・・・。考えたら、ステーションを離れるのって、始めてだ。生まれた時からステーションで、毎日組み立てと不良品の修理だもん。こういうのって、ちょっと憧れてたんだ。嬉しいなー。」
ナットは操縦室をぐるっと見渡した。ふと、その視線がボルトに止まる。
「あのさ、操縦席にまでヘビを持ち込まなくたっていいんじゃない。」
スペアも無言で非難の目をボルトに向けた。
「おとなしいヘビだ。かみつきゃしない。」
「そういう問題じゃ・・・。」
ボルトの腕で気持ちよさそうにとぐろを巻いているヘビを見て、ナットはあきらめたようにスペアの方に向き直ると、
「そのレーダーはどのくらいまで探索できるの。それRT32ガンマレーダーだね。じゃあ15万宇宙キロくらい? もうちょっと?」
「16か7ってところだろう。航行したところは、周囲16万キロを含めて宇宙地図を自動作製しているから、宇宙ステーションにもすぐ戻れるし、何か見つけたら目印を打っておける。」
「便利だね。オートマップの作成装置は組み立てたことあるけど、実際使っているのを見るのは初めてだな。」
ナットは興味深そうにスペアの手元をのぞき込んむ。三次元に投影された地図は、いくつかの円や楕円、ラインや記号などを白く浮かび上がらせていた。
「オートマップなんて、ロボットに何の役に立つんだ?」
ヘビの頭を撫でながら、ボルトが聞いた。
「さあね。思わぬところに戦域が拡大した時にでも、役に立つのかな。ああ、敵のステーションなり惑星に攻め込んで、情報を取ってくる意味もあるんだろ。敵基地の場所とか施設とか、そういったものを記録して持ち帰るのかもしれないし。」
「なるほどな。」
それから、ふとつぶやいた。
「前から気になっていたんだが、私たちのステーションは、戦闘ロボットの専用工場なんだよな。」
「何を今さらー。一日に三十体ものロボットの最終チェックをやっていた、ボルトがどうしたの。」
「私たちの作ったロボットは、何人ぐらい人を殺したんだろう。」
スペアとナットはびっくりして彼女を見つめた。その腕のヘビより仰天することだったのだ。
「なんだって?」
「そんなの分かるわけないじゃん。いったいどうしちゃったのさ。」
ボルトは関心なさそうに、椅子に深く身を沈めた。
「別に。なんとなく思っただけさ。」
スペアとナットは顔を見合わせた。そのうちようやくスペアが口を開いて、
「おかしな事を考えるな。ま、もう少し飛んでみよう。考えてみたら、ロボットが戦争している領域に入らないとも言えないんだよな。このままずっと飛んでいったら。このあたりは、不可侵条約があるからいいけど。」
「不可侵条約? なにそれ?」
「うん、詳しくは知らないけど、ロボットや兵器を製造しているステーションは保護を受けていて、その周辺も含めて攻撃されないって事さ。」
「・・・おかしくない? 僕だったら真っ先に、ロボットや兵器を造っているところから、攻撃するよ。だってそうしたら――」
ナットは言葉に詰まった。そうしたら、すぐ戦争が終わると言いかけたのだが、造っているところ、それこそは自分たちの住んでいるステーションなのだ。それに、何故自分たちが攻撃されなければならないのだろう?
「よく分からなくなった。」
「ロボットや兵器を作っているところは攻撃されないだろ。だって、それを攻撃しようと思ったって、攻撃するのはロボットだし、使うのは兵器だろ。攻撃して破壊したら補充がきかなくなるもんな。」
「なるほどねー。」
彼らはしばらく他愛のない話を続けていたが、不意に操縦席のスピーカーから警告音が鳴った。スペアが手元のサブモニターをのぞき込む。
「レーダーに反応だ。これは――、小型移動物体。隕石か?」
「メインモニターに映せる?」
「ちょっと待て。これだな。」
スペアがいくつかキーを叩くと、ごみのように小さなものがモニターの中央に映し出された。かすかに、光の尾のようなものが見える。さらに拡大すると、推進装置で進んでいる何かの物体のようだった。
「仲間のシップじゃない?」
ナットが立ち上がって身を乗り出し、スペアも目をこらした。
「小型船にしても小さいな・・・。船影からして、仲間のシップとは思えないけど。ひとりかふたり乗り程度の、ほんの自家用シップかもしれない。」




