宇宙工場サブファイロット 01章 謎の宇宙船3
「さてそれで。」
三人は、ステーション中央通路をぶらぶら歩いていた。巨大な透明チューブ状の通路の下には、大小のロボット工場が延々と続いている。不思議なことに、ロボットが暴れて壊滅状態になったブロックと無傷のブロックがあるため、透明な管のはるか下には、はっきりとしたコントラストのある風景が広がっていた。
ブーツの音を響かせ、おどけて飛び跳ねるように歩いていたナットが、くるっと振り返った。
「曳航用シップは完成。動作に問題なし。どうする? このまま待つか、あれで外に出るか。これからどうするか決めようよ。」
「二対一というのは考えにないんだろ。」
「ん?」
ボルトはぶっきらぼうに、
「誰かひとりここに残るとか、逆に誰か一人だけ外に行って見てくるとか。」
「出来なくはないだろうけど、何かあった時ひとりだとまずいだろ。ロボットの手当はいまいち当てにならないし。」
スペアが口を挟んだ。ここは戦闘ロボットを生産する工業ステーションなので、それ以外の一般用ロボットは数も少なく、性能もそれほど重視されていないのである。
「・・・そうだな。」
ボルトが息を吐くと、ナットが畳みかけるように、
「とにかく宇宙に出てみた方がいいと思うんだよ、あんなにいい船が出来たんだしさ。で、仲間の船が見つかったら、曳航してきたらいいでしょ。他のステーションの人間がやっぱり追い出されていて、出会ったら、見なかったことにして帰ったらいいでしょ。他の宇宙ステーションが見つかったら、通信関係のプログラムをコピーしてもらってくる。ロボットに占拠されていたら、バグが直せそうだったら直して、そうでなかったら僕たちを捕まえようとしてくるんだから、さっさと逃げる。逃げるスピードはある?」
「あの船ならたいていのロボットの攻撃に耐えられるし、逃げ足も十分だ。」
「さすがだね。スペアの設計だったら安心だよ。ね、そうしよう? ここにいても、三人だけであとはロボットばっかり。正直、ちょっと退屈してきちゃったよ。大統領邸も探索し尽くしたし。ね?」
ナットは勢い込んで二人を交互に見た。一方、スペアは誰かがこのステーションを訪れた時、発着場が修理中でも、船を曳航して着陸できるようにと曳航船を作らせていたので、どちらかというと、待った方がいいと考えていた。ただ、いつまでも誰も訪れないことも考慮にいれ、様々な装備をつけておいたのである。
「自分で造らせておいて何だけど、あれで出るのは最終手段のようなものだからな。もう少し、待ってみた方がよくはないか?」
「いつ来るか分からない配送業者や注文者を? もう十分待ったよ。それに、せめて通信システムだけでも復旧できたら、業者でも注文者でも呼び出し放題じゃん。仲間とも連絡が取れるだろうし。やっぱりさ、あれだよ。誰かに会って通信システムのプログラムをもらった方が断然早いって。ボルトはどう思う?」
ボルトはしばらく黙っていた。
「それは、どっちでもいい気がする。気になってるのは、別のことだ。」
「ボルトー、まだロボットのこと疑ってるの? バグは・・・」
「バグのことだけじゃないんだ。まあいいや。どっちでも。」
「どっちでもって、僕が出発組、スペアが待機組、ボルトがどっちでもじゃ決まらないよ。」
「知ったことか。だいたい多数決なんて嫌いだ。」
「わっがままだなあー。」
呆れて言うナットに、それまで黙って聞いていたスペアが口を開いた。
「まあ、お前がそんなに言うなら、ちょっと宇宙を散歩してみるのも悪くないか。」
「ほんと!」
「だが、始めはほんの近場にしとこう。船のテストも兼ねて、ってことで。どうだそれで?」
「賛成!」
ナットが嬉しそうに叫ぶ。
「ボルトは?」
「お前がそう言うんなら異存なし。」
「じゃあ決まりだな。リーダー・ロボットたちに今後の修理の指示を出したら、ついでにこのステーションの管理体勢も整えて、それから出るとしよう。」
この中央通路でなにげなく決めた出発が、三人の運命を変えていくとは、このとき誰も想像していなかった。
戦闘ロボットや、作業ロボットのリーダーたちを集めた定例のステーション会議の後で、三人はいよいよ、曳航船に乗り込んだ。三人の留守中、ステーションはリーダー・ロボットのまとめ役であるA3が預かることになり、すみずみまで細かく管理する手筈が整えられた。




