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宇宙工場サブファイロット 02章 データ人工衛星13

「右上の・・・矢印があるだろう。それを押して選択範囲を決める。決定したら、部分解除のボタンを押すんだ。」

 操縦席は、いくらシールドが張ってあるとはいえ、ロボットの激しいビーム攻撃で揺れている。ボルトは冷静に範囲を決めると、

「合図をするまで、出てくるなよ。」

 そう言って、シールドの部分解除ボタンを押した。船のシールドの一部がすっと薄くなり、消えていく。建物の出口から、曳航船の様子を伺っていたスペアとナットは仰天した。

「違うよ、なんでそんなとこ解除してんの!」

 ナットが叫んだのも無理はない。曳航船は、右側の腹をスペアたちのいる方に向けて止まっていたが、彼女が解除したのは船の左側の上部だったのだ。


 次の瞬間、曳航船の左側から緑色の光が走った。ボルトがロボットをビーム攻撃したのだ。ロボットはたちまちその目を明滅させ、曳航船を上位の敵と認識し、一斉にシールドの解けている左側にまわりこんで激しい攻撃を加え始めた。スペアたちを追ってきていたロボットも次々上昇すると、攻撃目標を曳航船へと変えていく。

「ボルト、操作が違う、もう一度・・・」

 スペアが言いかけると、パドが鋭く、

「違う、ああやってロボットを引きつけてるんだ。とんでもない奴だ。船まで走るぞ、用意しとけ!」

 同時に、ボルトの声が受信機から響いた。

「いまそっち側のタラップを降ろして周囲のシールドを解除する。走れ!」

 三人は建物の出口から走り出した。がらあきになった曳航船の右側にタラップが伸び、その周囲だけ小さくシールドが解けていく。三人はその中に走り込んだ。最後に船に飛び込んだパドは、すぐパネルを押してタラップを引き上げながら叫んだ。

「もういいぞボルト、シールドを張れ!」


 それを聞いたボルトはパネルを叩き、すぐにシールドを全体に張り始めたが、その行動は一層ロボットを刺激した。船を急激に上昇させながら、ボルトがメインモニターを見上げた時、そこには口径の大きなオレンジ色の砲を構え、細かく角度を修正している一体の青いロボットが映っていた。

 そのオレンジ色の砲がDZ35型短距離衝撃砲で、搭載型ロボットのパイロットに直接衝撃を与えるための武器と気づくと同時に、ボルトは体をロックしていたベルトを解除し後ろの床に転がった。同時に、青い戦闘ロボットが衝撃砲を撃つ。衝撃波は、完全にシールドがかかりきっていない曳航船の左側から突き抜け、操縦席のあたりを激しく振動させて反対側へと抜けた。一瞬の間の後、独特の甲高い共鳴音が船に響き、ぐらぐらと大きく揺れた。



「いまのは・・・!」

 宇宙服を脱いでいたスペアが青ざめ、動作を止める。パドの前のナットの顔も、真っ青になっていた。

「嘘・・・。」

「どうしたナット。スペア?」

 ただならぬ様子にパドが聞いたが、スペアはそれに答えず通路を全力で走り出した。

「待って、行っちゃいけないよ! 二発目が来たら・・・、スペア!」

「いったい何の音なんだ今のは! ナット?」

 ナットは真っ青な顔をパドに向けた。

「間違ってるって思うけど、今の音はひょっとしたら、衝撃砲かもしれない。R48系ロボットなんかに搭載されていて、破壊はせず、搭載型ロボットのパイロットの脳だけに衝撃を与える奴なんだ。シールドが貼ってあったら平気だと思うんだけど、でも、まだ、」

 声をふるわせながら話すナットに、パドは素早くうなずくと、すぐスペアの後を追って走り出した。ナットもあわてて後を追ったが、ふとその足が止まる。船への振動がなくなっていたのだ。曳航船は、既に人工衛星からかなり離れていた。ロボットはある距離までは追ってきたが、それ以上追撃しようとはせず人工衛星へ戻ったらしい。ナットははっとして、また操縦室へとひた走った。


 通路を駆け抜け、操縦室に飛び込んだナットが目にしたのは、床に転がったボルトの体と、それを呆然と立ちすくんで見ているスペア、そして彼女の脇にかがみ込んだパドの姿だった。

 ナットはふらふらとスペアに歩み寄って、

「え・・・。嘘、だよね。スペア?」

 ナットはスペアの腕をつかんで何度もゆさぶったが、スペアは答えず呆然と立っている。やっと、彼はゆっくりナットの方に顔を向けたが、その目はナット以上に恐怖で凍りついていた。

「ナット、ボルトは・・・」

 その時、パドの妙にゆっくりした声が響いた。

「スペア、ナット。ボルトは無事だよ。よく見てみるんだな。」

 スペアははっと息をのみ、ナットはもうボルトに飛びついてその体を揺さぶっていた。

「ボルト、ボルト!」

 彼女の体を激しく揺すぶるナットをパドはあわてて止めて、

「やめろナット、頭でも打っていたらどうする、揺するんじゃない。」

「でも、でも・・・・」

「泣くなって。大丈夫だ。脈もあるし、息もしてる。それにあのベルトを見てみろ。」

 パドはナットの頭にぽんと手を置くと、操縦席のベルトにナットの顔を向けさせた。そして、

「衝撃で吹っ飛んだんだったら、ベルトはちぎれるか、ちぎれずにボルトが操縦席にいるか、どっちかだ。あんな風にちゃんと外れはしないんだ。」

と言って、ナットの髪を撫でてやる。ナットはへなへなと、そのまま床に座り込んでしまった。スペアも、途切れ途切れにつぶやく。

「じゃ、おっさん。ボルトは・・・?」

 パドは倒れたボルトを抱え起こしながら、

「そう、狙われてると分かって、とっさに操縦席から飛び退いたんだろう。まったくさっきのシールド操作といい、戦闘経験でもあるんじゃないか。」

「そんなものない。」

 不意に、小さな声がした。

「ボルト!」

 ナットが叫ぶ。スペアもすぐそばに寄った。

「気がついたか。」

 パドが声をかけると、ボルトは自分を持ち上げようとしているパドを迷惑そうに見て、

「離してくれ。自分で立てる。」

と、実際立ち上がろうとしたが、すぐに顔をしかめた。

「どこか痛いのか?」

「・・・頭が少し。それに、疲れた。眠い。」

 それだけ言うと、彼女はまたのびてしまった。パドは、「よいしょっと」とボルトを抱えると、スペアたちの方を見て、

「どこに運んだらいい? 個室があるとか言ってたな?」

「おっさん、救護室があるよ。通路に出て左の奥。こっちだ。」

 スペアが急いでパドを先導する。ナットも付いていこうとしたが、ふと、何かを踏みそうになり足を止めた。見ると、ボルトのヘビだった。おそるおそる、その胴体をつついてみると、ヘビはぴくっと動いた。無事らしい。ナットはほっと息をついて、スペアたちの後を追った。


次回更新は1/30(12:00)の予定です。

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