宇宙工場サブファイロット 02章 データ人工衛星12
パドは腰のビームライフルを抜き、通路の向こうからやってくる巨大なロボットの一体を撃った。まっすぐこちらに向かって来ていたロボットたちは、すぐに反応して、建物や壁の影に移動した。そして、そこからさらに攻撃してきた。
「なんで、なんでロボット達が僕らを襲うの!」
「その前に何でロボットがいるかだ!」
「お前たち、馬鹿な事言ってる前に、早くそっちに逃げ込め!」
パドが二人の腕をつかんで走る。彼らが建物の奥の部屋に走り込むのと、入り口近くの壁が多数のビーム砲で破壊されたのと、ほぼ同時だった。戦闘ロボットは少なくとも十五、六体はいた。それがみな、スペアたちのいる建物に向かって攻撃してくる。
パドは建物の陰からビームライフルを撃って応戦したが、そのビームが命中しても、ロボットはわずかな間ぽかんとして動作を止めるだけで、何のダメージも負っていない。当然だった。この戦闘ロボットたちは、最上の戦闘力と防御を誇るR48ブルー・オリオンというモデルで、パドの貧弱なビームライフルなど通じるはずもない。というより、これほど弱い武器の反撃は想定されておらず、思考プログラムに混乱が生じて動作が一瞬止まる程だった。
轟音の中、スペアは大声で怒鳴った。
「命令だ、攻撃をやめろ! こちらはロボット制作者のスペアとナット、それにパドだ!」
しかし、ロボットは攻撃をやめない。スペアは信じられないといった顔で、思わず二、三歩後ずさった。その後ろにしゃがみこんでいたナットは、宇宙服のポケットから取り出した小型端末をしきりに操作していたが、スペアを振り仰いで、
「おかしいよ、バグ修正プログラムを送っているのに、ロボットが攻撃をやめない! 受信できてないはずはないんだ!」
スペアはそれを聞くと、
「ボルト、ロボットに修正プログラムを送ってくれ! ナットが送っているがうまく作動しない!」
曳航船の操縦席のボルトは、スペアの声を聞く前に、パネルを操作していた。曳航船のまわりにはシールドが強く張られ、船は濃い桃色に染まっている。そして、戦闘ロボット達は、曳航船のまわりにも現れ始めていた。
「もうやっている、2セットで512回送っているが、反応なし。スペア、彼らはこっちの送信を受信しない。攻撃をやめるようコードを送っているけど、それも無視している。」
「ボルト、船を動かして俺たちを回収しに来れるか!」
ビームライフルに新しいエネルギーを充填しながら、パドが叫ぶ。ボルトはボタンを押してベルトをしめ、操縦席に体をロックすると、
「先にパドに操縦を習っておくんだった。」
次の瞬間、警告音が響き、船が震えた。ロボットの攻撃が曳航船にも向けられ始めたのだ。ボルトはシールドレベルを確認した。その値は最大値の300になっている。
「よし。チェック、動くなよ。」
パネルから目を離さず低く言う。その膝にヘビがしっかりとつかまった。
「5ミナン上昇・・・、速度10、どけロボット!」
曳航船はふらふらと不安定に浮かび上がると、ゆっくり旋回しながら動き出した。すかさず船に、飛行能力のある戦闘ロボットのビームが降り注ぐ。
「ちぇっ、こっちには三十体はいるな。スペア、ナット、パド、今行くから。でもこっちにもロボットが付いて来ている。」
「そっちは・・・大丈夫なのか?」
パドは、さらに奥の部屋、スペアとナットを逃がしながら尋ねた。スペアとナットは武器など持っていないから、パドの指示で走るしかない。その間にも一段と大きな閃光が彼らの前を走り、ぶ厚い壁の一部が倒れた。
操縦席のボルトは、けたたましい警告音と船の振動に耐えながら、操縦桿を強く握って、いくつかのモニターを確認し、
「こっちはシールドがある。ロボットの攻撃は届かない。それよりお前たちのいる建物、ロボットが攻撃している側にまわれない。反対側にすこしスペースがある、反対側まで出てこられるか?」
「今やっているところだ、反対側にロボットはいないか?」
パドが聞くと、ボルトは素早く横のモニターを見た。
「まだいない。ロボットは単調な動きしかしていない。複雑な戦闘プログラムにまだ移行していないようだ。たいした反撃もないから、一次プログラムしか動いていないんだろう。でもこっちにくっついているロボットは嫌でもそっち側に回り込むと思う。どうしたらいい?」
「ボルト、ロボットを攻撃するんだ、攻撃システムは操縦席のななめ左の、赤いパネルだ。」
スペアが言う。
「分かった。・・・いやだめだ、こんな強い反撃を受けたら、ロボットは瞬時に二次か三次以上の戦闘プログラムに移行するぞ。もっと強力な武器を選択するし、作戦を切り替える。スペア、ロボットは何とかしてみる、だから早く反対側まで出てこい!」
「言われなくてもそうするって!」
パドは二人をかばいつつ、追ってくるロボットに追撃を許さぬよう、ビームライフルを次々撃ちながら奥へ奥へと進んだ。幸い、彼らの小型ライトや、ロボットのビーム攻撃に照らされ浮かび上がるこの建物の構造は、非常にシンプルで、邪魔な障害物や行き止まりもなく、なんとか建物の反対側まで三人は走りきった。そこにも出口がある。パドがライフルを構えながら振り向いた。
「ナット、そこから外を確認しろ、そっとな。」
ナットは言われるまま、青ざめた顔をドアの隙間からそっと出して、外の様子を伺った。すぐ濃い桃色の光をまとい、数十の飛行ロボットたちに囲まれた、彼らの曳航船がゆるやかに向こうから近づいてくるのが目に入った。
「パド、船がそこまで来てる! でも、ロボットの集中攻撃を受けている。どうしよう!」
「どうしようって・・・。どうにもならんよ、船まで走るしかないな。」
「ロボットに見つかったら蜂の巣にされるぞ、おっさん!」
パドは出口近くの二人に近寄ると、こんな状況でもおどけたように言った。
「このままここにいたって、後ろから蜂の巣だ。同じことだよ。それより船のシールドを解かないと中に入れない、その方が問題だ。ボルト!」
「分かってる、でかい声を出さないでくれ。シールドを解くんだろ。でもちょっと待ってくれ。待てるか?」
ボルトの声が雑音混じりに流れる。
「あまり待てないね。」
かなりそばまで追ってきているロボットをライフルで撃ちながらパドが答えた。その間に、船は彼らから15ミナンほどの近くにまで接近し、停止した。
操縦席のボルトは、シールドパネルを操作しながら、
「スペア、教えてくれ、シールドの部分解除の方法は?」
次回更新は1/29(12:00)の予定です




