宇宙工場サブファイロット 02章 データ人工衛星11
人工衛星に降り立ってみると、静まりかえっているせいか、あるいはあちこち破壊されているせいなのか、そこはゴーストタウンのような不気味な雰囲気が漂っていた。重力が、ステーション並みにあるのも意外だった。
「ちゃんと重力バランスを取っているんだな。」
宇宙服の無線を通して、スペアが二人に話す。パドは、油断なく辺りを見回した。その宇宙服の腰にはビームライフルがさげられている。
ナットが不思議そうに建物を見上げた。
「これみんな、データセンターなのかな。」
「どうだろう。何だか変な気がするな。いったいどれだけデータを保存するつもりだったんだろう。」
「データをしまっておくだけにしては、大げさすぎるって思わないか、お前たち。」
パドの声が、低く無線を通じて二人の受信機から流れる。スペアはパドを振り向いて、
「それ、どういう意味だ、おっさん?」
「あれを見て見ろ。」
パドは腕を上げた。スペアとナットは示された方を見てみたが、普通に壊れた壁があるだけである。
「どれ?」
ナットが聞くと、
「あんな壁、ただのデータルームの壁には見えないがね。ほとんど装甲って感じだろ。分厚すぎるし、多分そのへんの安い金属なんかで出来てないぜ。」
パドは宇宙船のヘルメットの上から、あごのあたりを無意識に撫で回した。
「そう言われれば変だな。この壁・・・、壁なんだろうか。材質は、戦艦の装甲にだって使うやつだよ。」
ナットが壁に近寄り、手袋越しに触れながら言う。パドは気乗りしない態度で、
「どうも、ここには長居したくない気がするね。早いところ、目的のデータってのを探した方がいい。」
三人はとりあえず、少し離れたところに見える、あまり破壊されていない建物のひとつに向かう事にした。三人の影も変に黒く、広い通路に伸びていった。
一方、曳航船の操縦室にひとり残ったボルトは、青い壁に時折走る光や、メインモニターの情報をぼんやり眺めながら、ヘビを撫でていた。椅子に深く沈みこみ、曳航船が奏でるわずかな振動音を、無意識に聞きとって、低くつぶやく。
「スペアもたいした奴だな。」
振動音から感じられる船の状態は、文句のつけようがない。こんなにエネルギーがうまく回っている船を、ボルトはめったにチェックしたことがなかったのだ。
半分目を閉じて、ゆったりしていた彼女だったが、ふと、その目が開かれた。自分を撫でていた手が突然止まったので、ヘビが鎌首をもたげる。ボルトはじっと、集中してスピーカーから漏れる音を聞いていたが、その息が浅くなっていく。
突然、彼女は椅子から飛び出した。操縦席のマイクをひったくるようにして取ると、乱暴にパネルを叩いて、
「スペア、すぐ応答しろ、スペア!」
「どうしたボルト。」
ただならぬ声に、建物の中に入り、真っ暗な中、照明のパネルはないかと周囲を調べていたスペアがびっくりして答えた。ナットとパドにもボルトの声は届くので、驚いてスペアを振り返る。
曳航船のボルトは、モニターを見上げながら叫んだ。
「すぐシップに戻れ! この人工衛星はまだ『生きて』いる! 戦闘ロボットがいる。彼らが格納場所から出てくる音がする、聞こえるんだ。攻撃システムが動いている。すぐ船に戻れ、早く!」
「スペア、ナット! こっちだ、船に戻るぞ!」
パドがとっさに状況をつかめないでいるスペアたちに怒鳴った。あわてて、二人はパドを追って走った。しかし、建物から出ようとしたパドの鼻先を、レーザーがかすめた。
「止まれ、建物から出るな!」
パドが振り向いて叫ぶ。その瞬間、複数の攻撃の音が周囲から響き渡った。
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