宇宙工場サブファイロット 02章 データ人工衛星8
ボルトはナットにうなずいてみせ、ナットは当惑したまま、ちょっとパドを見てスペアの隣に戻った。壁際で、パドが続ける。
「データってのはたくさんあるんだろうな。そのサルロイ一人で運べる量なのかね。衛星まで、何かの船に乗っても行かなきゃいけないだろう。その操縦は? 船へのデータチップ搭載は? 誰がやるんだ。」
すると、ロボット制作進行を補助するための小型の黄色いロボット、そのリーダーのC9が前に出てきた。これらは作業ロボットに分類されているが、デザイン的には戦闘ロボットに近く、実際に小規模の戦闘もこなせなくはない。アームが妙に長く、複数の補助足がある。
「データは、過去分すべてを平均しますと、一回あたり3205ユールユの重量がありました。サルロイ様の可能運搬重量は16ユールユ。よって運べる量ではありません。人工衛星までの小型シップの操縦はB21が行っております。データブックの搭載に関しましては、CV81が六台、データブックの運搬と小型シップへの搭載に従事しております。」
「ちょっと待て、分かるように言えよ。つまり、その大統領府の人間ひとりの他は、みんなロボットがやってたって事か。」
「その通りです。」
パドは難しい顔で何か考え込んでいた。スペアが小声でナットたちに聞く。
「そんなこと、知ってたか?」
「いや、今知ったよ。だって人工衛星の事だって、僕、そこにデータを運んでいるなんて知らなかったもの。何かの通信衛星だろうって思ってた。」
ボルトもうなずく。
「なんで私たちには知らされてなかったんだろう。」
スペアは不審そうに眉をしかめた。
「Bシリーズは、確かに凡庸作業ロボットだが、運搬なんかをやるために造られたロボットじゃないのに。あれはもっと、高度な作業ができるんだ。運搬だったらPシリーズでもQあたりで十分なのに、そんな事に使っていたなんて。」
Bシリーズの設計にも携わってたスペアは、ショックを受けたように言った。パドは、そんな三人の様子を黙って見守っていたが、壁にもたれていた体を起こすと、
「データの内容は。」とだけ尋ねた。
「存じません。」
「普通のデータは、中央データルームとやらに集められるんだろう。そのデータだけじゃないんだろう? お前達の仲間が衛星に運んだっていうデータは。」
いっそう鋭く尋ねる彼に、ナットが再び駆け寄った。
「どうしてそう思うのさ、パド。」
「お前たちが知ってないってことは、お前たちに知られちゃ困るような内容だってのは、ちょっと考えりゃ分かるだろうが。さ、いったいどこから、何のデータを運んだんだ。それは答えられるだろう。」
「命令優先順位が足りないので、お答えできません。」
「なんだと?」
黄のロボットはパドに答えず、列に戻ってしまった。ボルトがため息をつきながら、
「C9、パドは私たちの仲間だ。優先順位は私たちに匹敵する。パドの質問に答えろ。」
「お言葉ですが、ボルト様。彼はロボット制作者ではありません。いまの命令の内容は、ロボット制作の内容に直接関係しています。」
「分かった。彼はさっき調整室に見習いで入った。現在調整室にいる唯一の人間で、チーフ代理である私がそれを認めた。」
面倒くさそうに言うと、ロボットは目のライトをまばたきするように点滅させ、内部データを更新した。パドが呆れてボルトを見る。
「おいおい、そんな事勝手に決められちゃ困るね・・・」
「あんたは黙ってろ。ロボットってのは杓子定規なんだ。後で、スペアの設計室がよかったらそこに移るし、ナットの製造室がよかったらそっちに移るさ。」
「そうじゃなくて、俺にお前の部下になれってことかい?」
おどけたように言うパドに、ボルトはぶっきらぼうに、
「後で好きな部署についてくれってば。」と言いかけたが、ふと気がついて、
「あんたがロボットを憎んでいる事を忘れてた。ロボット制作者と認識されるのは嫌だろうけど、制作者は命令順位が高いんだ。特に、ロボット制作に直接関係するような命令だったら、制作者以外、ロボットはまず受け付けない。」
「分かったよボルト。まあ、面倒なこった。」
肩をすくめるパドに、先ほどのロボットがまた一歩進み出ると、言った。
「登録完了しました。先ほどの質問にお答えいたします。」
次回更新は1/20(12:00)の予定です。




