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✦ 『魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした』  作者: maruhiro
【第4章 選ばされる側――学園という制度】
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── 第68話─塔の上の空白──



 昼休み前。

中庭は、いつも通りだった。

笑い声。 噴水の水音。 魔力の練習の光。

そのとき――

塔の上の影が、消えた。

崩れた音はない。 爆発もない。 煙も出ていない。

ただ、上部が“空になっている”。



「……え?」

誰かが呟く。

数秒遅れて、ざわめきが広がった。

「制御装置が消えてる!」 「結界の柱だぞ、あれ!」

教師たちが走る。

空が、ゆがんだ。

塔の上に、薄い亀裂のような揺らぎが広がる。

空気が重くなる。

レンは、ぞっとした。

壊されたんじゃない。

“消された”。

しかも、無理やりじゃない。

壊されたんじゃない。

“消された”。

無理やり削った跡がない。

ただ、 そこにあるはずの部分だけが、 成立しなくなっている。


セイルが低く言う。

「……お前と同じだ」

レンの喉が乾く。

自分の力は、 当たるはずの一撃を、 当たらない形に変える。

結果を変える。

けど、今起きているのは、それよりずっと大きい。

塔という“物そのもの”を、 成立しない形に変えた。

だから、 崩れもせず、 音もなく、 そこだけが空白になっている。

だから、上部が存在できなくなった。


レンは裂け目を見る。

そして、理解してしまう。

どこを押せば、 あれが起きるか。

それが、見えてしまう。

「……俺じゃない」

「分かってる」 セイルは即答する。

「でも、同じ種類だ」

裂け目が広がる。

このままいけば、 塔だけじゃない。

結界がゆるむ。 学園全体が不安定になる。



レンは目を閉じた。

止めるんじゃない。 消すんじゃない。

流れを見る。

塔を消している力は、 一点から広がっている。

そこだけ、 進み方が速すぎる。

「……あそこか」

レンは空を見上げる。

やるなら、ここだ。

消さない。

向きを変える。

裂け目の“広がる方向”に、 ほんの少しだけズレを与える。

次の瞬間。

空の歪みが、横に流れた。

上に広がらない。

止まる。

揺れが、収まる。

数秒の静寂。


「拡大止まった!」 教師の声。

白外套の男がレンを見る。

何も言わない。 でも分かっている目。

レンは膝が震えていることに気づいた。

塔の歪みは、それ以上広がらなかった。

教師たちが動き出し、ざわめきは次第に落ち着いていく。

生活は、何事もなかったみたいに戻ろうとしていた。


レンは空を見たまま、息を吐く。

今のは、反射じゃない。

ちゃんと、自分で選んだ。

広がる向きを、少し変えただけ。

それだけで止まった。

――逆に、押していたら?

そこまで考えて、やめた。

「……やめとこ」

小さく呟く。

セイルが横で言う。

「考えられるうちは、まだ平気だ」

レンは視線を下ろす。

怖い、というほどじゃない。

でも。

自分の手の中にあるものの大きさは、

少しだけ分かった。

今回も読んでいただきありがとうございます。

塔の上にぽっかり空いた空白。

レンが“選んで”動いた初めての瞬間でした。

ここから少しずつ、物語も動いていきます。

もし面白いと思っていただけたら、

ブックマークや感想で応援してもらえると嬉しいです。

いつも本当にありがとうございます。

仕事で更新遅くなってすみません。

※毎日19時頃更新

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