── 第66話─選べるようになった日──
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それから、何日かが過ぎた。
講義室。
中庭。
人の多い廊下。
場所を変えながら、レンは何度も“選ぶ”ことを繰り返した。
止める日もあった。
外す日もあった。
あえて通す日もあった。
失敗もした。
外すつもりで止めてしまい、空気が固まったこともある。
通したつもりで、余計な視線を集めたこともあった。
それでも――
「分からないまま起きる」ことは、減っていった。
案内役の女性は、だんだん口を出さなくなった。
白外套の男は、記録を取らなくなった。
初老の教師は、質問しかしなくなった。
「今のは、なぜ外した?」 「なぜ通した?」
答えられない日もあった。
でも、選んだという事実だけは残った。
セイルは、相変わらず何も言わない。
ただ、レンが間違えた日は、必ず近くにいた。
中庭で誰かが転びそうになったとき。
口論が一歩、先に進みそうになったとき。
小さな事故が、大事になりそうな瞬間。
レンは、もう反射で止めなかった。
――どこを削るか。
――どこまで通すか。
考える時間は、ほんの一瞬だ。
それでも、その一瞬があるだけで、世界は違って見えた。
ある日、初老の教師が言った。
「もう“訓練”とは呼びません」 「君は今、自分で使っています」
レンは頷いた。
完全じゃない。
失敗も多い。
でも、分かっている。
この力は、
壊さないために消す力じゃない。
生きたまま、次へ進ませるための力だ。
――そして、その日。
学園の外から、
“今までと違う種類の事態”が持ち込まれた。
レンは、初めてそれを見て、思った。
これは、外すだけじゃ足りない。
仕事で更新遅くなってすみません。
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