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✦ 『魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした』  作者: maruhiro
【第4章 選ばされる側――学園という制度】
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── 第60話─俺が、場だ──



 中庭を抜けて、レンは一度も振り返らなかった。

誰かに呼び止められることもない。

案内役の女性も、白外套の男も、何も言わない。


人の中にいても起きる。

距離を取っても起きる。

話題を選んでも、空気を和らげても、関係ない。


――俺が、そこにいるだけで。

居室に戻って、椅子に腰を下ろす。

机の上は、何も変わらない。

紙もない。

指示もない。

「……結局、どこでも同じか」

独り言は、壁に吸われて消えた。


今までレンは、

壊さないように距離を測ってきた。

近づきすぎない。

長く話さない。

踏み込ませない。

でも、それでも空白は生まれた。


なら――

距離の問題じゃない。

場所の問題でもない。

レンは、ゆっくり息を吐いた。

「俺が、“場”なんだ」


言葉にした瞬間、胸の奥が静かになった。

恐怖でも、諦めでもない。

ただ、整理された感覚。

向けられた意思が、行動になる前にほどける。

誰かが悪いわけじゃない。

俺が何かをしているわけでもない。

起きることを、前提にするしかない。


立ち上がる。

扉に手をかけて、少しだけ迷う。

逃げない、と決めたのは昨日だ。

でも今日は――違う。


レンは、廊下に出た。

人の気配がする方向へ、わざと歩く。

避けない。

端を選ばない。

真ん中を行く。

すれ違う学生の足が、ほんの少しだけずれる。

言葉が、途中で終わる。

視線が、理由もなく逸れる。

起きる。

分かっていた通りに。

レンは立ち止まらなかった。


「……それでいい」

誰に向けた言葉でもない。

自分に向けた確認だった。

制御しない。

止めない。

消そうともしない。

ただ、起きることを引き受けたまま、歩く。

影の中で、幼精霊が動いた。

合図はない。

警告もない。

ただ、レンの歩幅に合わせて、そこにいる。



――もう、選択は終わった。

逃げないと決めたんじゃない。

進まないと、ここに居られないと分かっただけだ。

廊下の先で、人の声が重なる。

生活は続いている。

その中に、レンは踏み込んでいった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

更新が仕事の都合で少し遅れてしまいました、すみません。

今回はレンの立ち位置が一つ、はっきりする回でした。

気に入ってもらえたら、

ブックマークや評価でそっと応援してもらえると嬉しいです 。

続きも、もう少し進みます。

※毎日19時頃更新

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