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✦ 『魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした』  作者: maruhiro
【第4章 選ばされる側――学園という制度】
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── 第57話─止まらなかった会話──



 午前の図書棟は、昼より静かだった。

人はいる。

でも、話し声がほとんどない。

紙をめくる音と、遠くの足音だけが残っている。


案内役の女性は、入口近くの椅子に座った。

本を開いているが、読んでいる様子はない。

こちらが見える位置。

会話に入らず、離れすぎない距離。

「ここ、落ち着くな」 カイが小さく言った。

「……静かだから」 俺はそれだけ答える。

「考え事する時、ここ来るんだ」

カイはそう言って、本棚に手を伸ばした。


幼精霊は揺れない。

警戒も、制止もない。

何も起きていない。

それが、昨日との一番の違いだった。

「なあ、レン」

カイが本を戻しながら言う。

「昨日のこと、覚えてる?」


俺は一瞬、足元を見る。

幼精霊は静かだ。

「……うん」

「昨日さ」 カイは少し考えるように間を置いた。 「話そうとすると、途中で止まっただろ」 「今日は、それがない」

胸の奥が、わずかに重くなる。

「普通に話せる」 カイは肩をすくめる。 「それだけなんだけどさ」

普通。

その言葉が、妙に引っかかる。

「昨日はな」 カイは続ける。 「途中で、線を引かれた感じがした、今は、それがない」

線。


俺は頷くだけにした。

「……今日は、大丈夫そうだ」

カイは一瞬だけ眉を上げて、周りを見回した。

椅子。机。離れた席。

それから、入口の方。

「……まあ」小さく笑う。

「そういう日もあるか」

深掘りしない。

でも、引き返さない。

その距離が、今はちょうどよかった。


俺は一冊、本を取って椅子に座る。

文字は半分しか読めない。

それでも、落ち着いてページをめくれる。

案内役の女性は、まだそこにいる。

視線は本に落ちている。

でも、空気は張っている。

――異常が起きないか、見ている。

守るためでも、止めるでもなく、

何も起きないのを、見届けていた。


幼精霊は、何も示さなかった。

それが、今の答えだった。

更新が少し遅くなってしまい、すみません!

仕事の都合でこの時間になりました。

読んでくださってありがとうございます。

ブックマークや反応、とても励みになります 。

また次話もよろしくお願いします。

※毎日19時頃更新

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