表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
✦ 『魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした』  作者: maruhiro
【第4章 選ばされる側――学園という制度】
54/68

── 第54話─意味が続かなくなる──


 昼の中庭は、昨日と同じだった。

噴水の音。

笑い声。

石畳の上で、影が動く。

違うのは――

俺の中だけだと、思っていた。


「なあ、レン」

カイが声をかけたのは、飲み物を半分ほど飲み終えた頃だった。

噴水の縁に腰を下ろしたまま、何気ない調子で。

「ここさ」

それだけ言って、言葉が止まった。

俺は顔を向ける。

続きを待つ。

カイは、眉をひそめた。

考えている、というより――探している。

「……いや、何でもない」

逃げた、という感じじゃない。

本当に、続きが見つからなかったみたいだった。


「今、何言おうとした?」

聞くと、カイは困ったように笑う。

「分かんねえ。

 “ここって――”までは出てきたんだけど」

噴水の水が跳ねる。

誰かの笑い声が被さる。

それで、話題は流れた。

普通なら、それで終わる。

でも、終わらなかった。

しばらくして、今度は別の話をしていた時だった。

「レンってさ」

また止まる。

今度は、さっきより短い。

言葉が、途中で折れたみたいに。

「……ごめん。今日、変だな俺」

カイは自分のこめかみを指で叩いた。

「朝から、何回かこうなる。

 言おうとして、止まる」

俺は何も言えなかった。

説明する言葉を、持っていない。

足元で、幼精霊が揺れた。

でも、それは警戒でも制止でもない。

ただ、静かだった。


「教師に当てられた時とかさ、

 急に頭が真っ白になるやつ、あるだろ?」

カイは、冗談めかして言う。

「……でも今の、あれと違うんだよな」

違う。

でも、違いを言葉にできない。

「レンはさ」

また、止まる。

今度は、カイ自身が気づいた。

「あ」

短い声。

「今のもだ」

自分の口を、押さえる。

「言おうとすると、

 “それ以上いらない”って感じになる」

俺の胸が、わずかに重くなる。

「嫌とか、怖いとかじゃない。

 ただ――続ける意味がなくなる」

意味がなくなる。

それは、俺が今まで何度も見てきた光景だった。

村で。

街道で。

管理区域で。

でも、それを人の側から聞いたのは、初めてだった。

「……ごめんな」

カイは、そう言って笑った。

「変なこと言ってるな。

 レンのせいじゃないのは分かってる」

分かってる。

理由もなく。

それが、いちばん重い。


「今日はさ、もう戻るわ」

立ち上がる。

「案内の話、また今度でいい」

“今度”がある前提で、言う。

俺は頷いた。

それしかできなかった。

カイが去ったあと、噴水の音だけが残る。

「……なあ」

小さく言うと、セイルが後ろで答えた。

「始まったな」

「何が」

「お前のせいだって、

 誰も言えない違和感が」

否定も肯定もしなかった。

足元で、幼精霊が揺れる。

前でも、横でもない。

“止まっている”揺れ。

俺は噴水を見つめたまま、息を吐く。

越えていない。

でも――

もう、俺だけの話じゃなくなっていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

今回は、レンではなく“周りの側”に起き始めた違和感の話でした。

ブックマークや感想、とても励みになります 。

続きも読んでもらえたら嬉しいです。

※毎日19時頃更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ