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✦ 『魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした』  作者: maruhiro
【第4章 選ばされる側――学園という制度】
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── 第47話─学ぶための場所──



 部屋を出ると、空気が少し変わった。

同じ学園の中のはずなのに、

さっきよりも、人の気配がある。

足音。

低い話し声。

遠くで、誰かが笑う声。

境目の街にはなかった音だ。

「ここから先は、居室区画です」

制服の女性が言う。

「学園に滞在する人が、休む場所です。

 特別な施設ではありません」

休む場所。

その言葉に、胸の奥が少し緩んだ。

廊下は明るく、窓が並んでいる。

外の光が入り、時間の流れが分かる。

「……俺のこと、知られてはいないんですよね」

確認するように言うと、女性は小さく頷いた。

「ええ。今は」

「誰にも?」

「必要がない限りは」

隠す、というより――

静かにしている、という言い方が近かった。

「学園は、まず学びます」

女性は歩きながら続ける。

「分からないことは、すぐに答えを出さなくていいんです」

「ここでは、そういうふうにしています」


それは、

保留ではなく、

放置でもなく。

向き合う、という態度だった。

「食事は三食出ます。

 無理に外に出る必要はありません」

「散歩もできます。

 気分転換は大切ですから」

言い方が、教師のそれだった。

境目の街より、

ずっと“居てもいい”場所に思えた。

「……外を選んだら」

俺が聞くと、女性は歩みを緩めた。

「境界までは案内します」

「引き止めは?」

「しません」

即答だった。

「学園は、選択を尊重します」

守らない、でもない。

追い出す、でもない。

学ばない、という選択も含めて尊重する。

それが、逆に重い。

扉の前で立ち止まる。

木製の、普通の扉。

鍵は見えない。

「ここが、あなたの部屋です」

女性は微笑んだ。

「閉めなくても構いません。

 ここは、あなたの場所ですから」

中には、寝台と机、椅子。

窓もある。

人が、生活する部屋だった。

影の中で、幼精霊が揺れる。

警戒ではない。

拒否でもない。

様子を見る揺れ。

「……悪くないな」

セイルが言った。

「学ぶには、悪くない環境だ」

廊下の奥から、人の気配が遠ざかる。

誰も見張らない。

誰も急かさない。

それでも――

ここに居れば、

何かが始まるのは分かる。

学園は、守るために在るわけじゃない。

裁くためでもない。

ただ、分かろうとしている。



足元で、幼精霊が小さく揺れた。

前でも、横でもない。

留まって、見てみろ。

そう言っているような揺れだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

学園編、少しずつ空気を感じてもらえたら嬉しいです。

続きが気になった方は、ブックマークや評価を入れてもらえると励みになります 。

また次話で。


※毎日19時頃更新

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