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✦ 『魂等級ゼロと嘲笑された俺は、異世界で規格外でした』  作者: maruhiro
【第4章 選ばされる側――学園という制度】
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── 第46話─選択の条件──



 扉が閉まる音は、静かだった。

重いはずなのに、音だけが軽い。

それが、この場所らしいと思った。

石の廊下は広く、天井が高い。

光はどこからか入っているのに、窓は見えない。


「……座って」

制服の女性に促され、椅子に腰を下ろす。

部屋は簡素だった。

机が一つ、椅子が三つ。

装飾はない。

落ち着く場所ではない。

判断を迫るための場所だ。

セイルは壁際に立ったまま動かない。

幼精霊は、影の中で静かだ。

白外套の男が、正面に立つ。



「まず、確認する」

声は淡々としていた。

「君は現在、王立魔術学園の保護下にある」

保護。

その言葉が、ここでは軽くない。

「だが――無条件ではない」

一拍。

「学園は、君に選択を求める」

俺は、顔を上げた。

境目の街では、

選択なんてなかった。

「二つある」

白外套の男は、指を一本立てた。

「一つ。学園に留まる」

「この場合、君は“例外対象”として登録される。行動には制限が付き、観察と記録が行われる」

登録。

記録。


街では、そんな言葉は出なかった。

「もう一つ」

指が、もう一本立つ。


「学園の保護を拒否する」

その瞬間、空気がわずかに張る。

「その場合、我々は君を守らない」

「境界の外に関与もしない」

それはつまり。

「……追ってきてる連中も?」

俺が聞くと、男は否定もしなかった。

「学園は、関知しない」

選択肢は、二つ。

どちらも、軽くない。

「今すぐ決めろ、とは言わない」

白外套の男は続ける。

「だが、長くは待てない」

「君の存在自体が、状況を動かしている」


世界が、俺を見ている。

その事実だけが、重くのしかかる。

足元で、幼精霊が揺れた。

今までみたいな、

「行け」でも

「ここでいい」でもない。

迷いの揺れ。

セイルが、初めて口を開いた。

「街とは違うな」

「ああ」

街では、

選ばなくても生きていけた。

ここでは、

選ばないこと自体が許されない。

「……考える時間は?」

俺がそう言うと、白外套の男は頷いた。

「与える」

「だが、君が“何もしない”という選択肢はない」

それだけ言って、踵を返す。

扉が開き、また閉まる。

部屋に残ったのは、俺とセイルと、影。

「どうする」

セイルは、答えを聞かなかった。

聞く必要がないからだ。



影の中で、幼精霊が小さく揺れる。

前でも、横でもない。

まだ、決めるな。

――決めた瞬間、戻れなくなる。

そう言っているような揺れだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

学園編、ようやく本題に入りました。

続きが気になった方は、ブックマークや評価を入れてもらえると嬉しいです 。

また次話で。


※毎日19時頃更新

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