── 第37話─扱える範囲の外──
円の光が弱くなった。
消えない。ただ止まった。
まるで「結論はあとだ」と言われたみたいに。
「保留だ」
向かいの人物が短く言う。
「再判定は受け付けられた。だが、ここで答えは出ない」
机の板に文字が浮かぶ。
『再判定:進行中』
『対象の所在を変更』
「……移されるってことですか」
「そうだ。ここは調べる場所だ。——“割り込み”が続くなら、ここに置けない」
置けない。
その言い方が、いちばん嫌だった。
俺が危険だからじゃない。**“面倒だから”**に聞こえる。
◆
扉の外で足音が止まった。
「終わったか」
セイルの声だ。
「終わってはいない」
向かいの人物が答える。
「だが、ここで扱える範囲を超えた」
板が閉じられる。
張りつめていた空気が、少しだけ現実に戻る。
「レン」
「君はこれから“移送対象”になる」
「守るわけでも、捕まえるわけでもない」
「じゃあ、どういう扱いなんですか」
一拍。
「結論が出るまで、動かす」
「止めておくより、影響が広がりにくい」
俺のためじゃない。世界の都合だ。
扉が開き、セイルが隣に立つ。
「行くぞ」
「ここにいると、余計な手が入る」
余計な手。
俺は、さっき板に出た名前を思い出してしまう。
——エルド。
廊下へ出る。
さっきまで“宿の廊下”だった場所が、もう宿に見えない。
静かで、遠くて、
自分の居場所じゃない場所に連れていかれている感じがする。
歩き出す。
足は普通に動く。
止まらない。拒否も、必要とされない。
(……勝手に進んでる)
俺は何も決めていない。
それでも、状況だけが先に行く。
背後で、白い部屋の扉が静かに閉まった。
——閉まったのに、まだ中の“気配”が残っている気がした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回から少しずつ、話が「動かされる側」から「動き出す側」へ入っていきます。
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