表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/58

── 第34話─確認はまだ終わっていない──

 


 白い部屋は、静かだった。

 静かすぎて、音の行き先が分からない。


 ただ、視線だけがはっきり残る。

 向かいの椅子に座った人物は、名を名乗らなかった。

 旅人の格好でも、官の服でもない。

 どちらにも見える、どちらでもない立ち方。


「楽にしていい」

 

 そう言われて、逆に体が固まった。

 

 机の上に、薄い板が置かれる。

 水晶盤じゃない。

 映らないのに、見られている気がする板だ。

「確認は済んでいる」

 淡々とした声。

 

「君が“何かをした”痕跡はない」

「だが、結果だけ出ている」

 俺は思わず口を開いた。

「それ、俺のせいなんですか」

 一瞬、沈黙が落ちた。

 ほんの一瞬だけ、相手の指が止まる。


「……因果の位置が合わない…………

初期の判定と、現在の状態が噛み合っていない」

 独り言のように、俺を見ていない。


(知らねーよ……)

 喉まで出かけて、飲み込む。

 言っても意味がないのは、もう分かってる。



「君は、自分をどう思っている」

 急に話題が変わった。

「え?」

「力があると思うか。危険だと思うか」

 俺は少し考えてから答えた。

「……何もできないと思ってます……

やろうとしても、だいたい途中で終わるし」


 相手は板に何かを書き込む。

 ペンの音がしないのに、書かれているのが分かる。

「自己認識と、外部評価が一致している」

 それが、どういう意味かは分からない。

 分かりたくもない。

「ただし」

 その一言で、空気が少し重くなる。

「一致しているのに、世界の反応だけが違う」

 板の表面に、かすかな揺れが走った。

「本来なら、ここで修正が入る」

「だが――入っていない」


 また、指が止まる。

「……いや。入れられていない」


 その言い直しが、妙に引っかかった。

「俺、どうなるんですか」

 今度は、ちゃんと俺を見た。

「まだ決まっていない」

 正直な答えだった。

「ただし」


「このまま“放置”はできない」



「君の意思とは関係なく、状況だけが進む」

俺は肩をすくめた。

「何もしてないのに、ここまで来てますからね」

 相手は否定しなかった。

「だから、ここにいる」

 幼精霊の気配が、足元で小さく揺れた。

 離れない。

 それだけが、俺の現実だった。

「最後に一つだけ聞く」

 相手が言う。

「君は――逃げたいか」

 少し前なら、即答してたと思う。

 でも今は、分からなかった。

「逃げようとしても、最後まで行かない気がするので……」

 自分で言って、苦笑する。

 

 相手は、ほんのわずかに目を細めた。

「その答えは、記録に残らない」

「だが、重要だ」

 板が閉じられる。

「今日はここまでだ」


「次は――君が“選ばれる側”になる」

 椅子から立たされる。

 拒否も、同意も求められない。

 扉が開く直前、背中越しに声が落ちてきた。

「安心しろ」

「これは、君の意思とは関係なく始まった」

 

――それが、いちばん安心できなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

レンは何もしていないのに、周囲だけが先に進んでいます。

この先は「力」では測れない話になります。

気になったら、ブクマで続きを追ってもらえると嬉しいです。

※毎日19時更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ