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── 第24話─異常が正常になる夜──

境目の街で続く、静かすぎる日常。

何も起きない――それ自体が、少しずつ形を持ち始めています。

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

引き続き、お付き合いください。

※毎日19時更新

 



 境目の街の夜は、静かだった。

 昼間の喧騒が嘘のように、人の声はまばらだ。

 それでも、完全に止まることはない。

 酒場の灯り、宿屋の出入り、巡回の足音。

 ――いつも通りの夜。

 少なくとも、街の側から見れば。

 

 

 街の外れにある小さな詰所で、観測官は水晶盤を睨んでいた。

「……おかしいな」

 何度確認しても、結果は変わらない。

 ・魔力反応あり

 ・感情反応あり

 ・敵意反応あり

 それなのに。

「行動が、発生していない」

 本来なら、境目の街では必ず揉め事が起きる。

 怒鳴り声、殴り合い、最悪の場合は流血。

 それが――

 全部、直前で止まっている。

「抑制結界……じゃないな」 「吸収でも、反射でもない」

 観測官は記録紙を見下ろした。

「……そもそも、止めている“痕跡”がない」

 力を使った形跡が、どこにも残っていない。

「つまり」

 ペンを置く。

「止めてるんじゃない。

 始まってすらいない」

 

 

 一方、宿の二階。

 セイルは、レンの部屋の前で立ち止まっていた。

 中は静かだ。

 眠っているのか、考え込んでいるのか。

 

(街が慣れ始めている)

 

 それが、一番まずい。

 異常が続けば、人は警戒する。

 だが、異常が「普通」になると、誰も止められなくなる。

 

(俺の想定より、早いな)

 

 境目の街に連れてきた理由は単純だった。

 偶然では済まされない場所で、偶然じゃないと証明するため。

 だが、証明されるより先に、

 監視する側が気づき始めている。

 

 

 再び、詰所。

 観測官は報告書に、はっきりと書き込んだ。

『対象不明』 『力の発動なし』 『行動阻害の原因、特定不可』

 そして、最後に一文。

『本現象は「能力」ではない可能性が高い』

 

 報告を封印する。

「……これは、俺の判断じゃないな」

 確実に、上へ回る内容だった。

 

 

 セイルは、静かに踵を返した。

 レンには、まだ話さない。

 だが、決めている。

 

 このまま隠すことはできない。

 守るだけでも足りない。

 次は、レン自身が“選ばされる”。

 

 境目の街は、今夜も平穏だ。

 喧嘩は起きない。

 争いも起きない。

 だが、それは安心の証じゃない。

 異常が、正常として扱われ始めた証拠だった。

 

 ――そして翌日。


境目の街に、

本来ここへ来ないはずの存在が足を踏み入れた。

静かなままの街に、

いつもとは違う視線が混じり始めています。

次は、

この場所に本来いないはずの存在が動きます。

続きも読んでもらえたら嬉しいです。

※毎日19時更新

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