── 第18話─境目の街にて──
境目の街に近づくにつれて、
レンのまわりで起きることが、少しずつ変わってきます。
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境目の街は、思っていたよりも広かった。
門は開かれ、人の流れが途切れない。
けれど、その雑踏の中に、妙な空白があった。
◆
門の前。
行商人が荷を降ろし、衛兵が検分をしている。
本来なら全員、順番に止められるはずだった。
――俺たちの番になったとき。
衛兵が、口を開いたまま言葉を失った。
視線が宙をさまよい、しばらくしてから小さく頷く。
「……通っていい」
理由を問う前に、セイルが歩き出した。
俺もそれに続く。
背後で、衛兵が呟くのが聞こえた。
「……止めたつもりだったのに」
◆
通りは賑やかだった。
露店の呼び声、客の値切り、鍛冶場の音。
それなのに、俺の進む先だけが不思議と空く。
人がぶつかることも、足を止めることもない。
まるで見えない線が引かれているようだった。
「……すげえな」
すれ違いざま、誰かの声が聞こえた。
驚きでも賞賛でもない。
ただ、違和感を口にしたような響き。
◆
ふと、視線を感じて足を止める。
露店の陰から、小さな子どもが覗いていた。
「……変な音しない」
母親に呼ばれて、すぐに走り去る。
その言葉だけが耳に残った。
◆
幼精霊は、街道ではいつも少し後ろにいた。
今は、俺の横に並んでいる。
気配が揺らぎながら、俺の歩幅に合わせていた。
セイルはそれを見て、短く言う。
「……街は、正直だな」
それだけ告げて、また前を向いた。
◆
街の音は確かにあった。
笑い声も、呼び声も、金属の音も。
けれど――
ぶつかるはずだった苛立ちだけが、最初から存在しなかった。
それが、ひどく不自然に思えた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
レンの力が、少しずつ「出来事」として形になり始めました。
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また次話でお会いできたら嬉しいです。




