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── 第13話─外の世界へ──

前話から少し視点が続きます。

村編の一区切りとして、静かに次へ進む回です。


※毎日19時更新

セイルが村に姿を現したのは、朝靄がまだ残る時間だった。


 前に来たときと同じ外套。  同じ歩き方。


 けれど、視線だけが違っていた。


 一直線に――レンを見る。


 



 


「来たんだね」


 リナが小さく言った。


 セイルはうなずくだけで、周囲を見回さない。  幼精霊の気配に、ほんの一瞬だけ視線を走らせる。


 ――やはり、いる。


 確信が深まっただけだった。


「少し、話せるか」


 問いではなく、確認に近い声。


 レンは答える前に、幼精霊の方を見た。  精霊は何も言わない。  ただ、そこに留まっている。


「……いいよ」


 



 


 村外れまで歩いたところで、セイルは足を止めた。


「時間は取らせない」


 前置きもなく、核心に入る。


「君は、この村に留まれる立場じゃなくなった」


 レンは黙って聞いた。


「理由は?」


「説明はできる。だが――理解できるとは限らない」


 セイルは一度、言葉を切る。


「連れて行く必要が出た」


 その一言で、空気が変わった。


「……強制?」


「拒否はできる」


 即答だった。


 だが、続く言葉が重い。


「ただし、拒否した場合、次に来るのは俺じゃない」


 脅しではない。  淡々とした事実だった。


 



 


 レンは、村の方を振り返った。


 畑。  家。  見慣れた道。


 どれも変わらない。


 変わったのは――自分だけだ。


「行き先は?」


「今は言えない」


「戻れる?」


「分からない」


 正直すぎる答えだった。


 



 


 少し離れた場所で、リナが拳を握っていた。


「……行くんだよね」


 レンはうなずく。


「たぶん」


「そっか」


 それだけ言って、リナは前を向いた。  泣かない。  引き止めない。


「じゃあさ」


 一瞬だけ、声が揺れる。


「ちゃんと、生きて戻ってきて」


「うん」


 



 


 家の前では、両親がすでに気づいていた。


 詳しい説明はなかった。  それでも、父は察している。


「……そうか」


 短く、それだけ。


 母はレンの背を抱きしめた。


「無理だけは、しないで」


「するかもしれない」


「それでも」


 強く、背中を叩かれる。


 



 


 準備はほとんど要らなかった。


 外套の下で、幼精霊がふわりと揺れる。


 逃げない。  離れない。


 ついてくる。  それが答えだった。


 



 


「行くぞ」


 セイルが歩き出す。


 レンは、最後に村を一度だけ見た。


 守るとも、戻るとも、誓わない。


 ただ――


 ここで終わらせないために。


 


 少年は、村を出た。




 それが、始まりだった。


ここから物語は、村の外へ動き始めます。

まだ全部は語られませんが、少しずつ世界の輪郭が見えてくる予定です。


※毎日19時更新

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