表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

── 第12話─風向きが変わった日──

村を離れた後の、セイル視点の続きです。

静かに状況が動き始めます。


※毎日19時更新予定です。

 


 村を離れて、三日が過ぎていた。


あのとき引き返した判断が、


もはや個人的なものではなくなったのだと、


セイルは理解していた。


本来なら、もう次の町に入っている距離だ。 それでもセイルは、街道の途中で足を止めていた。


――レン。


魂等級ゼロ。 本来なら、記録に残ることすらない存在。


それなのに、 魔力は壊れず、精霊が付き従っている。


(……見なかったことには、できない)


次の瞬間、空気がわずかに軋んだ。


思考の奥に、直接触れてくる感覚。 セイルは小さく舌打ちする。


「……来たか」


『まだ村に関わっているな』


低く、感情のない声。 叱責でも命令でもない。ただの事実確認だった。


「確認は終わった」


『不要だ』


即答。


『対象は、すでに分類済みだ』


魂等級ゼロ。 価値なし。 本来なら、そこで終わるはずの存在。


『だが、予測外の挙動が出た』


魔力が壊れない。 精霊が留まる。


どれも、本来起きてはならない現象だ。


『均衡を乱す可能性がある』


セイルは黙って聞いていた。


『一刻も早く連れて来い』


「連れて行って、どうする?」


わずかな間。


『確認する』


それ以上は語られない。


保護でも、教育でもない。 ただ、連れて行く。 それだけの話だった。


通信は切れ、風の音だけが戻る。


(……やはりな)


魂等級ゼロと判断された少年が、 世界の理屈を静かに狂わせている。


“上”が黙っているはずがない。


セイルは進路を変えた。 再び、村へ向かう。


命令を果たすため。 だが、それだけじゃない。


(せめて――)


何も知らされないまま連れ出される。 それだけは、避けたい。


選択肢が残るなら、 それを示す役くらいは、果たしてやる。


外套を翻し、セイルは歩き出した。



――ただ、風向きだけが変わった。



セイルは歩き続けた。

今回は、セイル側で状況が動いた回でした。

次は、いよいよ村の外へ話が進みます。


引き続き、毎日19時更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ