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── 第1話:その魂、測定不能──

短編版を読んでくださった皆さま、ありがとうございます。

ここからは 長編として、天野レンの物語をあらためて描いていきます。


「魂等級ゼロ」と嘲笑された少年が、

どうしてそんな判定を受けたのか。

そして彼の“規格外”がどこへ向かうのか。


長編では、その答えを少しずつ紐解いていきます。

 


 


気がつくと、白い空間に立っていた。


上下も境界も分からない。

空気なのか光なのかも曖昧で、足元に影すら落ちない。


(……夢、じゃないな)


立っている感覚だけがやけに鮮明だった。


目の前には透明の柱が並び、

奥では金髪で白い光沢のある服を着た男が魂らしき光を雑に扱っていた。


「次、天野蓮あまのれん


それが自分の名前だと分かった。

理由はなく、ただ胸の奥が反応した。


その胸の痛みと一緒に、断片のような記憶がよぎる。


──水音。

──誰かの息が止まる音。

──右腕に“重さ”。

──胸へ流れ込む、他人の痛み。

──「……これでいい」

──光が混ざって、境界が消える。


(……なんだ、この記憶)


何をしたのか、誰の声かも分からない。

しかし“胸が苦しい”という感覚だけははっきり残っていた。


そんな俺へ、金髪の白い光沢の服の男が面倒そうに顔を向けた。男は俺を一瞥すると、露骨に顔をしかめた。

魂処理官エルド――その名は、後に知ることになる。


「うわ……濁りひでぇな。最悪の魂じゃねぇか」


淡々と罵ってくる。


その声はなぜか、前世の誰かの言葉と重なった。


──お前がいると迷惑なんだよ

──お前のせいで

──もう関わるな


胸の奥がずきりと疼く。


(……また、こういうのか)


男は俺をざっと見て、鼻で笑った。


「魂等級は……ゼロ。価値なし。処理は終わりだ」


「ゼロ……?」


耳を疑った。


魂には序列があると直感した。

だが“ゼロ”という響きは異質だった。

存在として“数に入れない”宣告。


男は訂正もせず、嬉しそうに続けた。


「お前みたいな魂は初めてだぜ。濁りすぎて測れねぇんだよ。

 ゼロで十分だ、ゼロでな」


嘲笑とともに杖を振り下ろす。


柱が淡く光り──


バキィン!!


盛大な破裂音。

光柱が砕け、その破片が男の顔を照らす。


「なっ……なんだ、この逆流は……ッ!?」


男の身体が一瞬で光に呑まれ、悲鳴が途切れた。


理由は分からなかった。

ただ本能だけが告げていた。


(……俺じゃない。

 俺は、誰も傷つけていない)


なのに胸が痛む。

まるで“誰かの痛み”が流れ込むように。


視界が白で満たされ──意識が落ちた。


その最後の瞬間、

どこからか澄んだ声が微かに響く。


──測定不能。

──魂純度、規定外値。


意味は理解できなかった。


 



 


気がつくと、木の天井があった。


視界が低い。身体が重い。

声を出そうとしても、赤子の泣き声しか出ない。


(……生きてる? いや、生まれた?)


状況が飲み込めないまま、

父らしき男が火を灯そうとした。


ふっと火が消える。


「え……? 今つけたばかりなのに」


母が光魔法を灯すと、それも消えた。


「この子……魔力を吸ってるの?」


驚きが満ちる。


(吸う……? 俺が?)


赤子の俺には説明も理解もできない。

ただ胸に、吸い込まれるような熱だけが走った。


戸惑いながらも、父と母は俺を見つめた。

そのとき、父が少し照れたように言う。


「……なんとなく、この子には“レン”が合う気がするな」


母も不思議そうに頷いた。


「分かる……。初めて抱いたのに、しっくりくる名前ね。

 レン……優しい響き」


もちろん赤子の俺は何も言えない。

それでも胸の奥が、微かに温かくなる。


(……呼ばれていた気がする)


思い出せないのに、懐かしい。


こうして、俺は“レン”と名づけられた。


けれど、穏やかな時間は短かった。


日が経つにつれて、家の周りで妙な出来事が続く。

火が勝手に消え、灯りが弱まり──


いつしか誰かが言った。


「赤ん坊のそばで魔法が消えるんだってよ」

「生まれつき魔力を吸う子なのか……?」


そして噂は、ゆっくりだが確実に広がった。


「魔力を食う子だ」

「触れると吸われるぞ」

「……ああいう子は危ない」


俺はまだ何もしていないのに。


胸の奥──断片的な記憶だけが疼く。


──代わるよ

──これでいい


誰に向けた言葉かも分からない。

だが、その選択が“間違いだった”感覚だけが残っている。


(……俺はまた、誰かを困らせるのか)


前世の破片が重なり、息が詰まりそうだった。


自分の価値は分からない。

むしろ“悪い側”なのだと思えてしまう。




でも後になって知ることになる。



俺のこの異質な力の正体を、

本当の意味で理解する日は必ず来る。


そしてその日が、俺の運命を大きく変えることになる。


ここから始まる。


魂等級ゼロと嘲笑された俺の、

本当の物語が。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

短編では描き切れなかった部分を、長編では丁寧に追っていきます。


レンが「魂等級ゼロ」とされた理由、

彼の力の正体、

そして彼自身がどう変わっていくのか──。


少しずつ世界が広がっていきますので、

気に入っていただけたら次話もぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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