表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学院の七共鳴  作者: チョコレ
第一章 医務室の影
10/20

21:15 男子寮・広間

 ロウソクの火が、細く揺れていた。

 男子寮の広間。その片隅で──

 ユフィ・カデンツィアは、毛布の中で震える少女のそばに、静かに腰を下ろしていた。


「……セイルさんと、学友のトールさんが、医務室に向かわれたと聞きました」


 その声は、とても小さかった。

 吐息にまぎれるほどの音量。けれど、曇りはなかった。

 透き通った音の中に、“信じようとする意志”が、確かに宿っていた。


「……つらいとは思います。でも、呼吸を整えてください。深く、ゆっくり──マナの乱れを抑えるには、それがいちばんです」


 毛布の下で、小さなうなずきが返る。

 しばらくして、伏せた顔のまま、かすれた声が洩れた。


「……うん。大丈夫。だって──あの二人だもん」


 顔を上げた少女、シーナ。

 青白い額に滲む汗を拭う力すらないはずの彼女が、かすかに笑った。


「ウチの、最高に頼れる親友たちだから」


 その微笑みに、ユフィは目を細めた。

 表情は穏やかだが、どこか──懐かしむような陰が差していた。


「……セイルなんて、ほんっと真面目すぎてさ。

 “学院祭、絶対成功させるぞー!”って、気合入りすぎてみんな引いてたくらい」


 くす、と小さく笑う。

 けれど、そこには誇らしげな色も混じっていた。


「“実行委員長のユフィ先輩に、いいとこ見せるんだ”って、何回言ってたことか……」


 その名が出た瞬間、ユフィの動きがぴたりと止まった。

 一瞬、感情が遮られたように。

 それから、ゆっくりと──

 表情を緩めた。


「……そうですか。それは……なんだか、少し照れますね」


 「トールはトールで、“祭は戦場だー!”とか叫んで、

 勝手に出店手伝って、菓子の試食って言い訳して──

 気付いたら、賞品が空っぽになってたし」


 シーナは、息苦しそうにしながらも、くすっと笑った。

 その笑い声が、ほんの少しだけ、広間の空気を明るくした。


「マジメとバカ。方向性バラバラだけど、二人とも行動力だけは無駄にすごいんだから。だから、信じてる。ウチ、信じてるから」


 ユフィは、その言葉にゆっくりと目を伏せた。

 まぶたを閉じる。

 静かに、深く──

 何度も、うなずく。


 彼女はそっと手を伸ばし、シーナの手を包み込んだ。

 その手は冷たく、震えていた。

 けれど──

 弱くなかった。


 静けさが、再び広間を満たした。

 だが、それは孤独ではなかった。


 火を灯すように、誰かを信じる気持ちがそこにあった。

 命がけで闇に踏み出したふたりを──

 この場所で、静かに、真っすぐに見送る者たちがいた。

この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n8980jo/


「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、ぜひ【★★★★★】の評価やコメントをいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ