第三章:疑惑の焦点
### 3日目 朝
朝になると、警察の応援が到着した。さらに多くの警官が館内の捜索を始めた。
「特別室に隠し部屋が見つかりました」捜査員が報告した。「そこから血のついた服と、立花さんのタブレットが見つかりました」
「タブレットの中身は?」若い刑事が尋ねた。
「パスワードがかかっていますが、専門家が解析中です」
「深山の居場所はまだ見つからないのか?」
「申し訳ありません。まだです」
その時、別の捜査員が駆け込んできた。「重要な証拠が見つかりました!」
彼が持ってきたのは、黒いバッグだった。中には、城崎健太郎の写真と、深山が書いたと思われるメモが入っていた。
「『すべての罪を償わなければならない』…こう書かれています」
「復讐の計画か…」桜井教授が言った。
「さらに、これも」捜査員は小さな録音機を取り出した。「立花さんの声が録音されています」
再生すると、確かに立花の声で「資料の準備ができたわ」という言葉が聞こえた。
「これが自動応答システムの正体か!」椎名が言った。
「そして、これも」捜査員は写真を見せた。「特別室のクローゼットの奥から見つかりました」
それは15年前のものらしき写真で、若かりし日の深山と城崎、そして…西園寺の姿があった。
「西園寺さん?」全員の視線が料理人に向けられた。
西園寺は青ざめた。「これは…」
「あなたも城崎さんの友人だったんですね」椎名が言った。
「…ああ、そうだ」西園寺は諦めたように言った。「城崎は私の親友だった。彼が自殺した後、私は料理人になった。そして、偶然この山荘の料理人の職を得た。深山が所有者だとは知らなかった。知った時には…」
「復讐を誓ったんですね」若い刑事が鋭く言った。
「違う!」西園寺は声を荒げた。「確かに恨みはあった。だが、殺人を犯すつもりはなかった!」
「しかし、あなたには動機があります」若い刑事は言った。「そして、調理場には多くのナイフがある。立花さんと黒川さんの殺害時間には、アリバイもありません」
「それだけで決めつけるのか!」西園寺が反論した。
「さらに」捜査員が続けた。「西園寺さんの部屋から、これが見つかりました」
彼が見せたのは、血のついたシャツだった。
「これは私のものじゃない!」西園寺は叫んだ。「誰かが仕組んだんだ!」
「西園寺勇さん」若い刑事が公式な口調で言った。「あなたを深山一彦氏、立花聡子氏、黒川大輔氏、および警察官殺害の容疑で逮捕します」
西園寺は抵抗せずに連行された。
「本当に彼が犯人なのか…」椎名は美咲に小声で言った。
「証拠はそろっているけど…なんだか納得できないわ」美咲も心配そうに答えた。
### 3日目 午後
西園寺は警察に連れていかれた。残された人々は、事件が解決したという安堵と、まだ何か見落としがあるという不安の間で揺れていた。
「もう大丈夫です」若い刑事は言った。「犯人は捕まりました。皆さんも安心してください」
「それにしても、深山さんの死体はどうなったんでしょう?」水城が尋ねた。
「おそらく、西園寺が処分したのでしょう」若い刑事は答えた。「彼は料理人として、人体を…処理する知識があったかもしれません」
「でも…」美咲が疑問を口にした。「西園寺さんだけで、あの複雑なトリックをすべて実行できたのかしら?特に、自分の死を偽装するという深山さんのトリックを」
「確かに不可解な部分はあります」若い刑事は認めた。「しかし、証拠は彼を指しています」
その時、捜査員が報告に来た。「立花さんのタブレットのロックが解除できました。中に重要な情報がありました」
彼が見せた画面には、深山の会社の機密書類があった。そこには、深山が城崎の特許を盗んだ証拠だけでなく、会社の資金を横領していた証拠もあった。
「これが動機の証拠になりますね」若い刑事は言った。「立花さんがこれを公表しようとしていたので、西園寺は彼女を殺害した」
「しかし、なぜ深山を?彼は西園寺の復讐の標的だったはずでは?」桜井教授が尋ねた。
「深山の死体は見つかっていません」若い刑事は言った。「彼が本当に死んだのかどうかも確定していません」
「もしかして…深山と西園寺が共謀したのでは?」水城が言った。
「それも一つの可能性です」若い刑事は言った。「いずれにせよ、詳しい調査が必要です」
その夜、雪が止み、天候が回復した。
### 3日目 夜
夕食の席で、椎名は落ち着かない様子だった。
「どうしたの、零?」美咲が尋ねた。
「なんだか、まだ納得できないんだ」椎名は言った。「もし西園寺さんが犯人なら、なぜあんな場所に証拠を残すんだろう?そして、深山社長の死体はどこに?本当に西園寺さんが処分できたのか?」
「確かに…」美咲も考え込んだ。「でも、警察は証拠を見つけたって」
「でも、その証拠があまりにも…わかりやすすぎる」椎名は言った。「まるで、誰かが意図的に西園寺さんを犯人に仕立て上げたみたいだ」
その時、若い刑事が急いで入ってきた。
「大変です!西園寺が自白しました。しかし…」
「しかし?」
「彼は、自分は深山と立花を殺していないと主張しています。黒川さんだけは認めたのです」
「どういうことですか?」桜井教授が尋ねた。
「彼の話では、黒川が深山の隠し金庫の場所を知っていて、それを脅迫のネタにしていたそうです。西園寺は黒川を殺し、天井裏から黒川の部屋に移動させたと認めました。しかし、深山と立花については、自分は無実だと」
「つまり、まだ犯人がいる可能性があるということですか?」水城が恐怖の表情で言った。
「いいえ、彼は自分を守るために嘘をついているだけでしょう」若い刑事は言った。「証拠は彼が犯人であることを示しています」
しかし、椎名はますます不安になった。もし西園寺が本当に黒川だけを殺したのなら、残りの殺人の犯人は誰なのか?そして、深山は本当に死んだのか、それとも今も隠れているのか?わ
その夜も、椎名は眠れなかった。