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【完結】ちょっとズレた死神と幸せに暮らす人生設計もアリですよね?~死神に救われた何も持たない私が死神を救う方法~  作者: 竹間単
【最終章】

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第99話 シリウスの行動


 広場に戻ってきた俺は、聖女の演説を耳にした。

 まったくもって聖女の威厳などない演説を。


「……聖女なんかいなくても生きていける、か」


 聖女の威厳はなかったが、いい演説だったと思う。

 同じように思った者もいたらしく、広場には遠慮がちな拍手が響いていた。


 全員の心を掴むことは出来なかったが、誰かの心には響いたようだ。


「そこのお前、何をしている!?」

「聖女を騙っているのはあの女だ!」

「あの女を捕らえろ!」


 そのとき、王城から兵士が広場へとやってきた。

 やってきたのは兵士だけで、シャーロットの姿はない。


「シャーロットは出てこなかったが、ここらが潮時だろう」


 俺が素早く聖女に近寄ると、ちょうどアンドリューも聖女の元へと向かったところだった。


「聖女、アンドリュー、余に掴まれ」


「クレアは!?」


「……一旦、退くぞ」


 俺は聖女とアンドリューを抱えた状態で転送魔法を使った。




 転送魔法で向かった先は、惑いの森にある俺の城だ。

 ここが国内のどこよりも安全な場所だからだ。


「シリウスさん、クレアは無事なんですか!? もしかしてジャンが何かしたんですか!?」


 城に到着するなり聖女がクレアの心配をしてきた。


「ジャン……あいつは余が無力化したから問題ない」


「じゃあクレアはどこにいるんですか!?」


「分からない」


「分からないって……」


 俺の到着に気付くなり近寄ってきたマリーとアンに、聖女とアンドリューの世話を任せることにした。


「余がこれから探しに行く。二人は城で待機しているように」


「ああ、分かった」


「あたしも探しに……」


「今、聖女が町に出るのは悪手だ」


 いてもたってもいられない様子の聖女の肩を、アンドリューが支えた。


「イザベラ、シリウスさんの言う通りだ。今はシリウスさんに任せよう。俺たちがするべきことは、シリウスさんを信じて待つことだ」


「……お願いします。クレアを無事に連れ戻してください」


「当然だ」




 俺は再び転送魔法を使うと、広場の近くの路地へと降り立った。

 クレアはこの路地を逃げていたはずだ。


 しかしいくら探しても、クレアの姿は無かった。

 嫌な汗が背中を伝う。


 広場へ向かうと、広場内もくまなく確認した。

 それでもクレアは見つからない。


 次は空から探そうと思い、飛び上がろうとしたところで、俺の元に走ってくる人物がいた。

 クレアだ。


「どこにいたのだ」


「私のことよりも、みんなはどこにいるんですか!?」


「すでに惑いの森の城に避難させた」


「わあ、さすがはシリウス様。手際が良いですね!」


 俺の心配などどこ吹く風で、クレアが嬉しそうな声を上げた。

 安心でどっと力が抜ける。


「移動するぞ。捕まれ」


「はい!」


 俺はクレアを抱きかかえると、再び惑いの森の城へ向かって転送魔法を使った。




「クレア! 無事だったのね!?」


 クレアを城へ連れ帰ると、聖女が駆け寄ってきた。

 よほど心配だったのだろう。

 クレアが無事なことを確認すると、力いっぱい彼女を抱き締めた。


「はい。ピンピンしてます……今、押し潰されそうですが」


「あっ、ごめん。それより、さっきジャンに追われてたけど大丈夫だった?」


「よく分かりませんが、途中で追うのを諦めたみたいです」


 実際は諦めたのではなく、俺が成敗した。

 その際しっかりと恐怖を植え付けたから、もうクレアに手を出すことはないはずだ。


「ねえクレア。あたしの演説、聞いてくれた?」


「あー……ちょっとだけ」


「そうよね、ジャンに追われてたものね」


「でも良い演説でした」


「ちょっとしか聞いてないのに、調子いいんだから」


 聖女がクレアに軽いデコピンをすると、二人は顔を見合いながら笑った。


「それにしても。聖女は、これで良かったのか?」


 二人の会話が終わったところを見計らい、俺は気になっていた疑問を聖女にぶつけた。


「これで良かった、って何がですか?」


「聖女を頼るな、だなんて。せっかく聖女なのに、聖女の権利を放棄するようなものであろう」


「これでいいんです」


 聖女はまたクレアのことを見た。


「人間は自分の力で幸せになれる。聖女なんかいなくてもね」


「……? 私がどうかしましたか?」


「本当に演説を聞いてなかったのね……」


 クレアの反応に苦笑した後、聖女はまた俺のことを見た。


「それに。あたしは、承認欲求の化け物ではないので」





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