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神秘の子 ~数秘術からはじまる冒険奇譚~【書籍発売中!】  作者: 裏山おもて
第Ⅱ幕 【虚像の英雄】

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94/333

竜姫編・0『とある中二病の冒険』

前話で登場人物紹介も更新してます。

第Ⅱ幕もよろしくお願いします


 ニンゲンは好きだ。


「姫様。今夜の晩餐は姫様の大好物、ブラッディベアのステーキでございますぞ」


 ニンゲンは面白い。

 特に食事に関しては、本当に興味深い。


 ひとつの食材を調理して、何種類もの違う料理ができあがるのだ。さらに同じ料理の味付けを変えるだけで、まったく別のものになってしまう。


「ささ、こちらへどうぞ姫様。食事のあとは盤上遊戯などいかがでしょう。今宵の相手には、都でも腕利きの打ち師を呼んでおりますぞ」


 ニンゲンの遊びは楽しい。

 木を加工するだけで、数えきれないほどの種類の玩具を作ってくれる。

 遊び方も多岐に渡り、退屈しない。


 お気に入りは頭を使う盤上遊戯だ。それなりに強くなったと思ったら、ニンゲンたちはギリギリ格上の相手を呼んでくる。負けることもあるけど、その次は負けない。そうやって少しずつ強くなっていく実感が、本当に楽しい。


「そろそろ湯浴みの時間ですぞ姫様。ごゆるりとおくつろぎください」


 ニンゲンはあたたかい。

 お風呂は最高だ。ただでさえ極楽な空間なのに、ニンゲンはそのお風呂でお酒を飲むらしい。いつか大人になったら、仲の良い友人をつくって優雅な時間を過ごしてみたい。


 反面、故郷は本当につまらなかった。

 毎日毎日、変わり映えのない景色を眺めて同族たちと話しているだけだった。食料を求めて森に狩りにいくことはあっても、危険なんて一切ないただの作業だった。

 だから、抜け出した。


 何か面白いことがないか――そう好奇心の赴くままにやってきたニンゲンたちの街は、毎日がとても刺激的だった。


「おはようございます姫様。本日はどのように致しましょう」 


 だからわたしは……いや、我はこう答えるのだ。


「ふっふっふ。我は真祖なる竜の末裔、その腕が抱くべきは深淵なる闇……」

「……姫様。もう少し私共にも理解できるようにお願いします」

「ふっ、愚かなニンゲンめ……よかろう。この隠されし魔眼が見定めしは地底への導……」

「あ、眼帯がズレておりますよ姫様」

「えっあっ……コホン! そして我が封印されし腕がかの地の底へと赴けと疼いている……くっ、鎮まれ我が右手……永久(とこしえ)の囁きに抗うのだ……っ!」

「なるほど。姫様はダンジョンに行ってみたいのですか?」


 ニンゲンが笑みを浮かべる。

 ふっ。蒙昧なるニンゲンよ、ようやく我が意図を理解できたか。


「我が影が、下界の風を感じたのだ……下界では深淵を求める探索者たちが星々のように煌めいていると……」

「噂で聞いたんですね。たしかにダンジョンは冒険者たちがよく探索にでかけておりますが」

「我が封印されし右手は血に飢えている……しかし嘆いてもいる。煌めいては散りゆく星々の、なんと儚きことか……」

「そうですね。確かに我が竜都のダンジョンは広く、冒険者たちが犠牲になることもあります。姫様もダンジョンに興味がおありですか?」

「ふっ、闇は闇を呼ぶのが摂理……それは我が意志でなく悠久から紡がれし運命(さだめ)。この封印が解かれぬうちに、深淵と赴かねばならぬ……」

「わかりました。では準備ができ次第、ダンジョン探索をしてみましょうか」


 ニンゲンはうなずいて、近くに待機していた他のニンゲンに声をかけていく。

 ふふふ。蒙昧なるニンゲンどもよ、我が真祖なる竜の力をとくと見るがよい。いまだ未踏の深淵を、この絶大なる力で瞬く間にうち滅ぼしてやろうではないか。


「しかし姫様。ダンジョンの下層は大人の竜種でも苦戦する魔物がいるとの噂ですぞ」


 表情を曇らせるニンゲン。

 我は即答した。


「あ、じゃあ遊ぶのは上のほうだけでいいかも……」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 厨二病竜姫は予想外wいいキャラだなー
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