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神秘の子 ~数秘術からはじまる冒険奇譚~【書籍発売中!】  作者: 裏山おもて
第Ⅴ幕 【彼岸の郷土】

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334/366

閑話『好感度を確かめたい』

大変お待たせいたしました。

私生活で大変なことが色々とありましたが、多くの方から温かいお言葉をいただき本当にありがとうございました。無事に連載を再開できることを感謝いたします。


それと!

本日12/15はコミックス1巻の発売日です!

ネットや本屋各店で発売しております!

可愛いルルクやリリス(ついでにガウイも)の姿が見られますので、ぜひお手に取って楽しんでください!

挿絵(By みてみん)

「なんだこれ」


 インワンダー獣王国、その王城の宝物庫。

 その片隅で、俺は奇妙な魔術器を見つけた。


 国を救った報酬として、好きな宝を持って行っても良いと言われた俺たち【王の未来(ロズウィル)】のメンツは、宝物庫のなかをじっくりと見回っていた。

 仲間たちがキラキラ光る宝石や装飾品を眺めているなか、俺は書物を探して棚を漁っていたところだった。

 残念ながら文字文化が薄い獣人の国では、伝承はほとんど口伝なので、本として保存されていることは珍しかった。街には本屋すら見当たらないレベルだ。物語があっても、すでに人族の国で有名になっている『初代女王(アリスシェード)』や『三賢者』くらいだった。


 王城の宝物庫も似たようなものだったので肩を落としていると、棚のなかにふと不思議な材質の棒が転がっていることに気づいた。

 真ん中に消えかかった文字が彫られていて、そこにはこんなことが書かれていた。


『両端■二人で握っ■■さい。

 二人の■温や■■■から、お互■の好感■をチェック■るよ!

 棒が光ると測■完■☆

 赤く光■■ど■■は両想■!

 隠■■恋心も■■■でバレちゃ■■も☆』


「……なんだこれ」


 よくわからないので、とりあえず鑑定してみた。


【『好感度チェッカー』 : 体温と心拍数を感知し、心理的な距離を測る目的で作成された等級ナシの魔術器。信じすぎてもろくな目に遭わない。 】


 ……女子中学生が好きそうな遊び道具だな。

 誰が作ったのかわからないが、材質といい文字のかすれ具合といい、かなり古そうだ。

 隠された機能も無ければ効果もお遊び程度。正直、宝物庫にあるようなものではないはずだが……歴代女王の誰かの想い出の品だったりするんだろうか。


 まあ、俺にはいらないな。

 すぐに『好感度チェッカー』を棚に戻して置いた。

 ちょうどそこにやってきたのは、現女王のライクラライア。


「ルルク様、何か良いものがありましたでしょうか」


 ちなみに女王陛下は品の良い兎人族のマダム。

 もう少し歳が近ければ、うっかり口説いていたかもしれない。職務で忙しいはずなんだけど、様子を見に来てくれたらしい。


「お気に召すものがあるとよいですが……ちなみに、ルルク様はどのようなものをお望みですか?」

「一番は本ですね。あまり出回ってないものとかありますか?」

「本ですか。残念ながら、読み物の類はここには置いてありませんね」

「ですよね~」


 わかってたさ。


「ご期待に添えず申し訳ございません」

「いえいえ。面白いものがあるか探すだけでも楽しいので、気に入ったものがあれば確認させてもらいます」

「この部屋にあるものは私たちには不要なものなので、一言ご報告いただければお好きに持って行ってください」

「ありがとうございます」

「では、お仲間の皆様にもお伝えください」

「はい」


 ちなみに周りでは、黒い王冠のようなものを被ったセオリーが中二病ポーズを決めていて、サーヤがそれを見て微笑ましく拍手を送り、エルニが何の変哲もない指輪をじっと見つめ、ナギが自分の指輪を見せてエルニを煽ってバトルが始まりそうになり、リリスとミレニアがその二人をなんとか諫め、カルマーリキは何やらジャンプして棚の上の物を取ろうとしていた。

 ちなみにプニスケはお宝には興味がないらしく、ゲストルームで料理の研究をしている。


 ……うん、いつも通りだな。


「じゃあ決めたらまた報告しますね」

「よろしくお願いします」


 ペコリと耳を下げて去って行く女王。

 俺はしばらく宝物庫を探していたが、めぼしいものは見つからなかったのでプニスケが待つ部屋に戻ったのだった。

 仲間たちはまだまだ楽しんでいるようだったので、ひと足お先にね。

 


■ ■ ■ ■ ■



「ねえサーヤこれなぁに……コホン! ふっ、我が盟友よ、ここにある不可思議な物質はいかなる俗物か……?」


 サーヤは、みんなが次々にひっくり返していく宝物庫を黙々と整理していた。

 一国の宝物庫らしく宝石など金銭的価値が高いものが多いし、歴史的な価値のある装飾品も多々あった。正直昔だったら、アレもコレも欲しいと思っていたかもしれない。

 でも、いまはそれほど魅力的に感じなかった。むしろみんなが貴重なもの壊してしまわないかと心配するほうが勝っていた。

 せっせと周囲のフォローを続けていたら、またもやセオリーが香ばしいポーズをとりながら声をかけてきた。


「どれどれ~?」

「この歪んだ刻印が浮きでし円筒なり。これは……邪悪な気配……! 下がるのだサーヤよ! 邪神の眷属でなければこの気配に耐えられぬ……!」


 なんか筒みたいな棒みたいなものだった。

 怪しくはないが、あまり価値が高そうには見えない。


「遊び道具っぽいわね。ねえリリスさん、これ鑑定してくれる?」

「はい。『解析之瞳(よみとくもの)』……こちらは体温と心拍数を測るための二種の魔術が搭載されてますね」

「なるほど。あ、ここに商品名が書いてあるわ。『好感度チェッカー』だって」


 体温と心拍数を測って二人の好感度を測定する。

 普通の玩具かな。


「セオリー、邪神の影響は心配しなくていいわ」

「ふっ。さすが我が盟友。瞬く間に封印を解いたか」


 封印などなかったとは言わない。

 とはいえサーヤたちには必要なさそうだと思って棚に戻そうとしたとき、埃まみれの細長い木箱を抱えたカルマーリキが、ちょうど梯子から降りてきた。

 サーヤの手元を見て、ポロっと漏らす。


「それ使ったらルルク様の本音とかわかるかな?」


 その瞬間、


「!?」

「っ!」

「!!!」

「……ほう」

「ん。天才」


 一斉に『好感度チェッカー』を見つめる仲間たち。

 いや、これただの玩具だからね?

 サーヤがそう突っ込もうとすると、


「確かに、普段は色恋など考えてもなさそうなルルクも、一応は男じゃ……異性に興味がないわけではあるまい」

「うん。あるじけっこうムッツリ」

「べ、別にナギは興味ないですが……ルルクで遊ぶのもやぶさかではないです。まあナギはまったく、微塵も、興味ないですが」

「絵に描いたようなツンデレですね……。でも、リリもお兄様がどなたに一番ドキドキするのか気になります。好感度選手権ですね」

「ん。わたしがいちばん」


 なんか始まった。

 最近はお姉さん選手権もやってないし、イベントに飢えているのかもしれない。

 まあ日頃からルルクの煮え切らない態度にヤキモキしているみたいだし、とくに止めるようなものでもないか。

 サーヤは少しだけ呆れながらも、腕まくりをして会話に入る。


「いいわ、みんなで勝負しましょ。その代わり結果がどうなっても文句はなしよ。所詮、玩具なんだしね」

「ん、どうせかつ」

「序列一位が決まるです。ナギはまったく興味ないですが」

「第一夫人は我のもの……」

「こういう遊びは初めてじゃな。妾もドキドキしてきおった」

「ここにはメレスーロスもいないし、うちにもチャンスあるかな……!」

「リリはお義姉様推しですから応援してます。でも三番手くらいは……」


 視線がギラギラしてきた仲間たち。

 サーヤは小さくため息をつきながら、


「じゃあみんなでルルクのところに行きましょ。でもいい? あくまで遊びだから、あんまりムキにならないでよね?」


 獣王国の人たちに迷惑がかからないことだけを祈りながら、先導するのだった。



□ □ □ □ □



『ご主人さま~ボク新しいことができるようになったの~』


 俺がゲストルームに戻ると、プニスケが飛びついてきた。

 ほんと可愛いなぁ。


「なにができるようになったんだ?」

『これみて~』


 俺の腕からぴょんと飛び降りると、みるみる体を変形させていくプニスケ。

 不定形のスライムから人型になって、色も変わって……っておいおい!


「俺じゃねぇか!?」

『そうなの! ご主人さまになったなの~!』


『変形』『弾力操作』『色彩操作』『体温操作』で服装から何から俺を真似て、まるっきり瓜二つになったプニスケ。

 どこからどう見ても俺だ。いやむしろ俺よりちょっとイケメンじゃね!?

 器用さが天元突破してる……!


「す、すごいな……いやほんとすごい。どこからどう見ても俺だ」

『やったなの! 褒めてもらったなの~!』


 俺の姿で飛びついてくるプニスケ。ちょっと脳みそがバグりそう。

 まあどんな姿をしていてもプニスケはプニスケだ。しっかり抱き返してやる。

 ふむふむ、体温も人間のそれだし、肌の感触も同じだ。体と服が一体になっているから、密着してよく見れば少し肌と服の境目が違和感を覚えるが、普通の距離なら気づかないだろう。


『えへへ~ご主人さま~だいすきなの~』


 頬をスリスリしてくる俺型プニスケ。略して俺スケ。

 俺は若干俺よりサラサラヘアーな俺スケの頭を撫でながら、ふと考える。

 ……これプニスケに頼めば色々できそうだな。俺に化けてもらってアリバイ工作とか、仲間に化けてもらったりとか。真似るのも造形の理解が必要だろうから、俺以外となるとせいぜい仲間たちくらいにしか化けられないだろうけど……うん、これめちゃくちゃ悪用できそうじゃね?


 ガチャ。


「え。なにこれ?」


 仲間たちが部屋に戻ってきた。

 抱き合っている俺と俺スケを見て、先頭のサーヤとリリスが固まった。

 二人で頬をつねり合いながら、


「ルルクがルルクと抱き合ってる……これは、夢?」

「ここが噂の天国ですか……?」

「おいクソ重女二人、気配が違うです。片方はプニスケです」


 さすが一瞬で気づくナギ。


「ほう。相変わらず特異なスライムじゃのう」

「プニスケちゃんすごいね。ルルク様にもなれるんだ……うち、どっちが本物か全然わかんないよ」

「ふっ。プニスケよ、眷属たる我が慧眼を偽ろうなど言語同断!」


 ビシッと指さすセオリー。うん。


「セオリー、こっち本物の俺」

「わ、わざとだもんっ!」


 顔を赤くする自称最優の眷属。

 ポンコツめ。

 俺スケの悪用方法は今度考えるとして、


「もう宝物庫はいいのか? カルマーリキしか持って帰ってきてないみたいだけど」

「面白いもの見つけたからちょっと休憩するの」

「面白いもの?」

 

 問うと、サーヤが懐から棒型魔術器を取り出した。

 さっきの『好感度チェッカー』じゃねぇか。


「じゃあ誰からやるー?」

「ん」


 当然のように受け取るエルニ。

 そのまま俺のすぐ正面まで歩いてくる。プニスケは空気を呼んで元の姿に戻り、『みんなの紅茶を淹れてくるなの~』とお湯を沸かし始めた。できる子すぎるだろ。


「ん」

「もしかして俺で遊ぶ気だな?」


 らんらんと目を輝かせた仲間たちの視線が『好感度チェッカー』に注がれる。


「ん。はやく」

「……はいはい」


 まあ減るもんじゃないし、いいか。

 俺は素直に握る。


『好感度チェッカー』はエルニの魔力を吸収すると、ほのかに赤く輝いた。部屋が明るいから、よく見たら光っていることが気づく程度だ。

 これは……どうなんだろうな。

 もっと煌々と輝くと期待していたのか、エルニは仏頂面のままだ。


「ん……ふりょうひん」

「エルニネールさん、魔術回路は問題なく動いてますよ。ではお兄様、次はリリの番です」


 今度はリリスか。

 エルニと入れ替わりで棒を握るリリス。ちょっと期待するような視線を向けてくるマイエンジェル。


 ただ、『好感度チェッカー』の輝きはエルニと同程度だった。

 リリスは微妙な表情を浮かべて、自分に言い聞かせるようにつぶやいていた。


「まあ、エルニネールさんと同じくらいなのは良い結果です」

「つぎ! うちがやるね!」


 カルマーリキが見えない尻尾を振りながらリリスと代わる。

 同じように握ると、またもや同じ程度の光になる。


「わ~やった! ルルク様、うちのことも好きだったんだ!」


 素直なカルマーリキらしい喜び方だな。

 鼻歌まじりで戻っていくカルマーリキと入れ替わって、つぎに来たのはミレニア。


「え、おまえまでやるのか?」

「しょせん戯れじゃ。ここで仲間外れになる理由もあるまい」


 ふん、と目を逸らしながら棒を握る童女。

 やはり輝きは他のみんなと変わらず。

 だが納得顔だった。


「やはりの」

「これ壊れてるです? 好感度がまったく同じなんてあるです?」


 そう文句を垂れつつミレニアと代わったのはナギ。

 そして棒を握ると――何も光らなかった。

 一瞬ぽかんとしたナギは、すぐに俺を睨んできた。


「……ルルク?」

「おい刀抜こうとするな」


 殺意を向けるな殺意を。


「これ魔術器だろ。しかも切換型じゃなくて継続型の。俺とおまえじゃ動かないだろ」

「あ」

「壊れてるわけでも好感度ゼロでもないから安心しろ」

「べ、べつに何とも思ってないですっ!」


 顔を真っ赤にして帰っていくナギ。

 からかい甲斐のあるやつだなぁ。


「ふっ。我とあるじの絆はこのような俗物などで測れぬ……が、これも下界のならわし。我も参戦しよう」 


 つぎは香ばしいポーズでやってくるセオリー。

 棒を握ると、やはりぼんやりと輝いた。

 なぜか満足そうな顔で戻っていく。

 じゃあ最後は……と目を合せると、首を振ったサーヤ。


「私はいいわ。意味ないもの」

「なぜです? サーヤは魔力あるです」

「まあね。でもみんなと同じだけしか光らないわよ」


 サーヤも気づいていたか。


「これって体温と心拍数を測るんでしょ? でもルルクは『冷静沈着』があるから元々そうたいして変動しないもの」

「あ」

「なるほど」


 納得する一同。

 俺も最初から気づいていたから、文句も言わず付き合ったのだ。

 リリスも苦笑していた。


「では、あまり意味はありませんでしたね」

「そんなことないわ。少なくとも、ルルクがみんなことが好きだって知れたもん。興味がなかったら光らないでしょ? ナギみたいに」

「ナギは! 魔力が! ないだけです!」

「冗談よ」


 サーヤがナギをいじりつつうまくまとめたおかげか、みんな笑っていた。

 この玩具みたいな魔術器は宝物庫のなかで一番価値は低いのかもしれないが、一番仲間たちを楽しませてくれたようだ。

 俺と同じことをミレニアも考えたのか、


「金銭的価値があるものだけが宝じゃない……これを置いた誰かは、そう伝えたかったのかもしれぬの」


 うむうむ、と頷いていた。みんなも納得顔だ。

 そんな感じで良い話になりそうだったところに、プニスケが戻ってきて紅茶を配った。

 相変わらずプニスケが淹れるお茶は美味しいぜ。


『なんか楽しそうなの! ボクもやるの~!』


 そう言って『好感度チェッカー』を握る。

 その瞬間、まばゆい赤い光が部屋に満ちた。

 まぶしい。


『わ~! すっごく光ったなの!』


 ……確かに、めっちゃ光ってるな。

 それくらいプニスケへの好感度がはち切れているってことかな?

 よくわからないけど、プニスケへの愛は証明されたのではないでしょうか。やはりプニスケは最強ですね。

 俺がニマニマしていると、


「ちょっと待つです……まさか、『冷静沈着』のせいじゃないです……?」

「ルルク、私たちにはスキル使うまでもないってこと?」

「ちょっとどういうことか説明するのじゃ!」


 ギャーギャー騒ぎ出した女子たち。

 俺にも理由がわからないからそう言われても困るんだけど……と言っても聞いてくれなさそうなので。


「あ、ちょっと用事思い出した」


 俺はすぐに転移を使って、ほとぼりが冷めるまで獣王国の街を観光することに決めたのだった。


ヒント:紅茶

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― 新着の感想 ―
漫画の発売おめでとうございます。新章が始まったこともとても嬉しいです。
玩具ですし(笑) でも複製して販売したら結構売れるかも いつの時代も女性はこういうの好きですからね 再開待ってました!
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