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神秘の子 ~数秘術からはじまる冒険奇譚~【書籍発売中!】  作者: 裏山おもて
第Ⅲ幕 【幻影の忠誠】

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教師編・2『ストイックバカと生意気ケチンボ』

 

「大変お世話になりました」

「長い間泊まってくれてありがとねルルクちゃん。また遊びにおいで」

「はい。テッサさんもお元気で」


 屋敷への引っ越しはアイテムボックスのおかげですぐに終わった。

 しばらく世話になったので、宿屋の女将テッサには酒をいくつか見繕って渡しておいた。セオリーとナギが増えて大所帯になったのに、快く迎えてくれたいい女将さんだった。

 ちなみに他のメンバーたちは先に挨拶を済ませて、屋敷に向かってもらった。特にセオリーがいるとややこしいことになるからな。


「姫様に無茶させるんじゃないよ」

「はい、肝に銘じます」


 もうちょっと話したかったけど、あまり長話はできなかった。いまも受付には順番待ちの冒険者がいるからだ。

 なんでも竜姫が泊まっていた宿だからと、数か月前からしょっちゅう空き部屋の問い合わせがくるらしい。特に今回、俺たちの部屋が空くってことで「竜姫様が寝泊まりしていた部屋」への応募が押し寄せてるんだとか。

 いまから抽選して、誰が泊まるか決めるらしい。


 セオリーはこの国ではアイドルみたいなもんだからな。どんな世界にも熱心なオタクはいるもんだ。


 てなわけで、これで名実ともに現住所が屋敷になった俺たち。

 竜王にもらったものとはいえ、屋敷の名義は俺になっている。つまり俺個人の所有物だ。


「……出世したなぁ」

「とうとうおうち完成したんだね。これで寂しくなっちゃうね」

「メレスーロスさん!」


 宿の外でバッタリでくわしたのは、美人エルフの冒険者メレスーロス。

 二ヶ月ほど前から他国へクエストに出かけていたので、会うのは久々だった。


「おかえりなさい! クエストはうまくいきましたか?」

「うん、問題なかったよ。はいこれお土産」

「……なんですかこれ? 石?」

「黒いけど、岩塩だよ。お肉にかけたら美味しかったから買っちゃった」

「ありがとうございます。みんなも喜びます」


 少し硫黄臭さがあるけど、削って舐めてみたら確かに塩だった。

 この風味だと揚げ物に合いそうだな。こんどカツにかけて使ってみよう。


「でも、みんなと会う機会が減っちゃうね。それだけは残念かな」

「よければうちに住みますか? 部屋は有り余ってますよ」

「あはは。お誘いは嬉しいけどさすがに遠慮しておくよ。女の子たちに恨まれそうだし。あたし、なるべく敵はつくらない主義なんだ」


 いつものようにアッサリとした反応のメレスーロス。

 まあ分かってて言ったんだけどね。


「もちろんルルクくんが会いに来てくれるぶんには断らないから気軽に誘ってね。たまには食事とか情報交換もしたいしね。友達だし」

「ではさっそくデートの約束を……あ、そういえばメレスーロスさん。例の件(・・・)、いつにします? 俺はいつでもいいですし、すぐ里まで連れて行きますよ」

「そうだね。そろそろ言っておかないとまたグチグチ言われるし、さっそく明日にいいかな?」

「もちろんですよ。では明日の朝、迎えにきます」

「ありがと。よろしくね」


 そう言ってメレスーロスと別れて帰路につく。

 例の件とは、ずっと前から約束していたメレスーロスの頼みごとだ。


 少しだけウキウキしながら、俺は翌日の朝を迎えたのだったが――






「じゃあ私たちは水浴び場に行ってくるから。『虚構之瞳(みとおすもの)』は禁止だからね!」

「ん。のぞききんし」

「透視スキル持ってたなんて、とんだ変態クソ野郎です」


 エルフの里にメレスーロスを連れてきたのはいいものの、当然のようにパーティメンバーも同行していた。

 自分の体を抱きしめて、嫌悪感マックスで睨んでくるナギ。

 当然、俺は弁解する。


「むしろスキルあるのに普段風呂とか覗いてないの偉くない? 褒めてくれてもいいのに」

「覗かないのが普通です。その発想がもう犯罪者です。プニスケの爪の垢でも煎じて飲むです変態」

「はーんそうかそうか。そこまで言うならナギ、おまえの服だけ常に透視してや――」

「死ぬです!」

「うぎゃあああ! 目があああああ!」


 指が刺さった。マジで刺さった。

 地面を転がる俺を放置して、そのまま水浴び場まで歩いて行った仲間たち。

 心配くらいしてくれよ……まあ、一瞬で治ったけどさ。


「あはは。ナギちゃんも相変わらず厳しいね。賑やかなパーティになったね~」

「毎日子守みたいですよ。俺がしっかり者じゃなきゃいまごろパーティ崩壊してますよね」

「……そうだね」

「あれ? なんか一瞬間がありませんでした? 気のせい?」

「気のせいだよ。さ、すぐにうちに向かおう」


 そそくさと先導して歩いていくメレスーロスだった。


 俺たちはそのままメレスーロスの実家まで一直線に来た。中央殿からさほど離れてないふつうの家だった。恐怖のお姉さんシルクークルがいないことを祈ろう。


「ただいま~」

「あら? メレスーロスちゃんじゃないの」


 リビングにいたのは、まだ30代にしか見えないエルフ美女だった。

 目の形がメレスーロスにそっくりなので、間違いなくこの人がメレスーロスの母親だろう。お義母さんって呼んでも……あ、ダメだ。シルクークルのときのトラウマが。


「何しに帰ってきたの? 後ろにいるのは……あらまあ、恩人様じゃないの」

「どうも、ルルクです。メレスーロスさんにはいつもお世話になってます」

「こちらこそですよ。先日は里をお救い下さり、本当にありがとうございました」

「でさ、母さんにちょっと話があって帰って来たんだ。父さんは?」

「お父さんはお仕事よ。いつもどおりスカラマギ様のところ」

「じゃあちょうどいいや。ねえ母さん、前から言ってる結婚相手のことなんだけど――」


 と、さっそくメレスーロスが話を切り出そうとしたときだった。


「メレスーロス!」


 いきなり大声が響いて、家に飛び込んできた一人の影。

 そいつは超絶美男子のエルフだった。色白で線が細く、女と言われても納得できるほどの美しさ。ただし服の前をはだけさせ、前髪をたくしあげる仕草がいかにもナルシストっぽい。

 メレスーロスはそいつを見て、あからさまに顔をしかめていた。


「帰って来てたんだね、メレスーロス! そして結婚相手と聞こえたが、ようやく僕との結婚を受けてくれる気になったのかい? それは喜ばしいことだ。すぐに挙式をあげようではないか」

「す、スカラマギ様! いきなり持ち場を離れられては困り……ってメレスーロス! 戻って来たのか!」


 スカラマギと呼ばれた美男子エルフの後ろから、くたびれた中年エルフが入って来た。もの凄く人畜無害っぽい男だった。

 メレスーロスは疲れたようにため息をついて、


「父さんただいま……あとスカラマギ様、何度も言ってますけど、あたしはスカラマギ様と結婚する気はありませんって」

「ふふふ、相変わらず照れ隠しが下手だなメレスーロス」

「だから違うって」

「何言ってるのメレスーロス! スカラマギ様がこうおっしゃってくださってるのよ! 結婚なさい!」

「なんで母さんが決めるのさ! あたしは結婚相手は自分で選ぶっていつも言ってるじゃん!」

「スカラマギ様のどこが不満なのよ! ハイエルフの妻になるなんて、これほどの名誉はないのよ!」


 ああ、なるほど。

 この美男子がハイエルフだったのか。

 

 聖樹の使徒として生まれてくるハイエルフ。聖樹と意志疎通できる、エルフの象徴ともいえるべき存在らしい。

 さすがにハイエルフに求婚されていることは聞かされてなかったけど、今回、俺がメレスーロスに頼まれているのはこの件だ。

 ようは婚約相手として挨拶をする、というもの。もちろん演技だけどね。


 まったく結婚する素振りも見せないことに母親がガミガミ言ってくるから、俺と付き合ってるって嘘をついてしばらく誤魔化そうって算段のつもりだったらしい。

 ハイエルフまで絡んでくると、ちょっと面倒なことになりそうだ。


「つべこべ言わずに結婚なさい! このままじゃ行き遅れになるわよ!」

「だからあたしは自分で相手を選ぶってずっと言ってるでしょ!」

「か、母さんもメレスーロスも落ち着いて……父さんは前向きに考えた方がいいと思うなぁ」

「ふふふ、怒った顔も美麗だなメレスーロス」


 カオスだ。

 四人がそれぞれ言い分を言い合ってるけど、正直会話になってない。

 どうしたもんかと考えていると――


「うるさい! あたしはルルクくんと付き合ってるんだから、もう黙っててよ!」


 メレスーロスが叫んだ。

 その言葉どおり、ピタリと黙るご両親とハイエルフ。

 信じられないと目を見開きながら、視線をこっちに動かす。


「……恩人様、それは本当ですか?」

「えっと……まあ、はい」


 言いづらっ!

 もっと真正面から「娘さんとお付き合いしております!」というつもりだったのに、この嵐のような言い争いに巻き込まれるかたちで言うとは。

 とはいえ、一応これでメレスーロスの意図した展開に――


「……うそ」


 ゴトリ、と物が落ちる音が玄関から鳴った。

 そこに立っていたのはカルマーリキだった。


 メレスーロスの家に届け物だったのか、森で採った果物をカゴ一杯に持ってきていた小柄なエルフは、呆然としたまま徐々に目に涙を浮かべていき……


「――っ!」


 逃げるように、走り去っていった。

 去っていく直前、精一杯、嗚咽を漏らさないよう唇を噛んでいたのが見えた。


「……やっちゃったね……」

「そう、ですね……」


 俺とメレスーロスは苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる。

 そんな俺たちの心境など知らないお母さんは、キツイ表情で睨んでくる。


「メレスーロスちゃん。恩人様とお付き合いしてるって本気なの? 結婚はするつもりなの? 人族との寿命の違いはどうするの? ちゃんと将来のことは考えてるの? まさかもう里には帰ってこないつもりじゃないでしょうね?」

「それは……」


 メレスーロスはちらりと俺を見た。

 その視線の意味は、俺も理解している。


 正直、メレスーロスとの約束は最後まで守るつもりでいた。困っているメレスーロスを助けることになるからと考えていたし、役に立てることが嬉しかった。

 ……でも、これは違う。

 こんなのは違う。


「すみませんメレスーロスさん。俺、誰かを泣かせてまで嘘はつけません」

「ううん。こちらこそゴメンね」

「……どういうこと? あなたたち、ちゃんと説明しなさい」

「帰ったら説明する」


 そう言って、メレスーロスと俺は家から飛び出した。

 もちろん逃げたカルマーリキを追って。






 カルマーリキは森の切り株で、膝に顔をうずめていた。

 

 さすがに泣きながらじゃ気配を殺すことも、うまく走ることもできなかったらしい。透視スキルを使うまでもなく追いつくことができた。

 俺とメレスーロスがカルマーリキに近づくと、カルマーリキは涙を隠そうともせずに顔をあげて叫んだ。


「どうしてなの! いつもいつも、メレスーロスばっかり!」


 カルマーリキが切り株に置いてあった木の実を、がむしゃらに投げてきた。

 痛くもないはずなのに、少し胸が痛い。


「昔からそうだ! 才能も、美しさも、人気も、強さも、ぜんぶメレスーロスばっかり持ってる! どうしてなの!? うちじゃ、何も手に入れられなかったのに……ずるい……ずるいよ……」

「カルマーリキ、じつはね――」

「ちょうだいよ! 才能も強さも何もいらないから! 一番欲しいものくらいちょうだい! ルルク様だけでいいから! ルルク様だけいれば、もう何も望まないから……お願いメレスーロス……うちから、全部とっていかないでよ……」


 また膝を抱えて顔をうずめたカルマーリキ。

 まさか嘘だったとは言いだし辛いメレスーロスは、どう声をかけようか悩んでいた。


 さすがに俺もバカじゃない。

 いままでストレートすぎるくらいカルマーリキの好意を向けられていた。バカなラノベの主人公じゃあるまいし、その意味くらい理解できている。

 だからここはメレスーロスに任せるべきじゃないことくらい、

俺にだってわかる。


「カルマーリキ、少しいいか?」

「なにさ……ルルク様なんてキライよ、どっか行ってよ……」

「行かない。俺は俺のやりたいようにやるって決めてんだ」


 だからコレだけは言わせてもらおう。

 謝るつもりだけど……それは、後回しだ。


「俺はカルマーリキとは結婚するつもりはない」

「……わかってるよそんなの。なんで言うのさ。みじめになるから言わないでよ……」

「いや、言わせてもらうね。俺はカルマーリキとも、メレスーロスさんとも結婚するつもりはないからな。むしろ誰とも結婚するつもりはない。さっきのは嘘だ」

「……え?」

「たぶん、俺はまだ誰かを本気で好きになったことがないんだよ。メレスーロスさんは好みのタイプってだけだし、もちろんメレスーロスさんにもそのことは伝えてる。さっきのは、メレスーロスさんの両親を誤魔化すための方便だ。本当ならカルマーリキに伝える必要はなかったんだけど……ごめんな」

「……うそ……?」


 呆然とした顔をあげたカルマーリキ。

 涙でぐしゃぐしゃだったので、かなり罪悪感。

 だけど、ちゃんと言うべきことは言っておく。


「だからカルマーリキもいままでどおり好きにしてくれていいぞ。俺もいままでどおりにする」

「で、でも……うちのこと迷惑って思ってない? めんどくさいって思ってないの……?」

「そんなこと思ったことは一度もないぞ。賑やかなのは嫌いじゃないから……いや、すまん誤魔化した。ハッキリ言おう。俺さ、賑やかなの好きなんだよ」


 だから、正直言っていまの仲間たちといるのは楽しかった。

 あいつらを守るためにも、もっと強くなりたいと思えるくらいには。


「ほんと? ルルク様、うちのこと好きってこと?」

「調子乗るな」

「あいたっ」


 額にチョップ。首をすくめたカルマーリキ。

 ついでにそのまま、カルマーリキの頭を撫でておいた。


「だけどまあ、嫌いじゃないよ」

「……それも誤魔化し?」

「さあな」


 これ以上はもっと調子に乗りそうだったので、手も離しておく。

 寂しそうに尻尾を振る忠犬カルマーリキだったが、その表情はさっきより血色がよかった。


「カルマーリキ、あたしからも謝るよ。君を傷つけるつもりはなかったんだ」

「もういいよ、わかってるってば」

「それと、カルマーリキが何も持ってないみたいなこと言わないで。あたしからしたら、カルマーリキは羨ましいんだ」

「……なにそれ。嫌味?」

「本心だよ。カルマーリキは素直でいい子だってみんな知ってるし、みんなから気軽に話しかけられたりして好かれてるでしょ。あたしはみんなと距離があるから、そういうのが羨ましいんだよ。昔から里にいてもみんなとはハッキリ壁を感じててさ……だから狩人になって里を抜け出したんだ。実を言うとさ、居心地悪くてここから逃げたんだよ」


 苦笑いしながら、心中を吐露してメレスーロス。

 カルマーリキは意外そうな顔で驚いていた。


「いまでもそれは変わらない。あたしはエルフの里の一員だけど、みんなと本当の仲間って感じがしないんだよね。もう慣れたし文句があるわけじゃないけどさ、外の世界で冒険者してるほうが気が楽なんだ。だから里に戻る気はないし、スカラマギ様とも結婚する気なんてこれっぽっちもないんだ」

「……なによ、それ」

「ごめんね、こんな話して。誰にも言ったことなかったから、信じてもらえるかわからないけど――」

「バッカじゃないの!」


 カルマーリキは怒っていた。


「メレスーロスが人づきあい苦手なのは知ってるよ! でも、居心地悪くしてるのは自分じゃん!」


「なんでそんなこと言うの。あたし、これでも真剣に悩んでたんだけど! カルマーリキにはわかんないだろうけどね!」


「なによそれ、壁つくってんのはメレスーロス自身じゃん! うちがみんなと仲良するのに努力してないって、あんた本気で思ってんの!? 言葉には気を遣ってるし、話す時は笑顔にしようって気を付けてるし、みんなそうやってちょっとずつ歩み寄りながら壁を取り払ってんの! 時間も努力も必要なの!」


「で、でもそれはカルマーリキにそういう才能が……」


「ああはいはいそうかもね! じゃあ何? うちが小さい頃からイジメられてたのは、その才能のせいだったの? うち、イジメられるのがイヤだったから、誰とでも仲良くできるように努力したんだよ? その努力を才能だなんて言わないでよ! ふざけないで!」


「じゃあそっちだって、あたしの努力を才能だって言わないでよ! 友達なんていなかったから、遊ぶ時間を全部修行に費やしたんだよ! 誰にも負けたくないから、負けないように毎晩戦い方を考えてた! そのために夜遅くまで毎日勉強してた! あたしは天才じゃない!」


「なにさ! なんでもできるくせに努力までしてたんだ! そりゃあ誰にも負けないよね! そのぶんをちょっとでも人と仲良くすることに向けてたら、いまとは違ってたかもしれないね!」


「カルマーリキだって弓の練習誰よりしてたくせに! そのせいで夜更かしして身長伸びなかったんじゃないの!」


「うるさいバカ! このストイックバカ!」


「バカって言うほうがバカなんだ!」


 ……え~?

 なんか喧嘩始めたんだけど。


 メレスーロスとカルマーリキはお互いを罵倒しながら掴み合い、転がし合い、髪の毛を引っ張り合い始めた。泥仕合みたいな様相になり始めたので、俺はしかたなく止めた。


「そこまでです、ふたりとも」

「フシャーッ!」

「キーッ!」


 子犬と女狐みたいだった。

 エルフの美少女たちには悪いけど、意味のない罵倒合戦は看過できない。


「どうどう。ふたりとも落ち着いて」

「あっ」

「み、見苦しいところを見せたね」


 取り繕って咳ばらいをするふたり。

 兎に角、カルマーリキの誤解は解けたからそれでいいだろう。あとはご両親と、あのナルシストハイエルフにも説明しないと。


「そういうわけで、家に戻りましょうメレスーロスさん」

「そうだね。でもその前に服を綺麗にしないと。さすがに汚れすぎたね」

「うちもだ……『クリーン』」

「あっ、ずるいよカルマーリキ。あたしにも使ってくれないかな」

「ヤダよ。聖魔術はうちがメレスーロスに勝ってる唯一の才能なんだよ」

「いまそれは関係ないでしょ。カルマーリキが汚したんだから使ってよ」

「ヤダ! さっさと水浴びしてくればいいじゃん!」

「ケチ! 生意気ケチンボ!」

「うるさいボッチ!」


 また口喧嘩を始めたので、俺はため息をつきながら先に戻るのだった。


 喧嘩するほどなんとやら……に、なればいいんだけどな。

 ふたりのわだかまりが解けるのは、まだまだ先になりそうだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 常々思い続けてた結婚相手の話がようやくでてきた。
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